「おねーちゃーーん 来たでーーーー!!」
今日は部活もバイトもかったので 早々に姉の病院に
駆け付けた
抗がん剤治療がはじまって 2週間が経った
「おーーケイ いらっしゃい 今日はバイトないんやな」
本を片手に姉が迎えてくれた
「うわぁっ!!!」
姉を見るや否や 私は大声をあげて 後ずさりをした
「すごいやろーー 思いきって剃ったんやーー」
姉が後頭部に手をやって 照れた様子で話してくれた
「坊さんやん!! どないしたんそれ!!!!」
仰天した次は 吹き出してしまうわたし
「朝起きたらな 枕もとに髪の毛がいっぱい落ちててん
髪の毛といても大量に抜けるし 毎日こんなん切ないおもて
婦長さんに頼んで バリカンで一気に剃ってもらってん」
「剃ってもらった…って 思い切りすぎやろ
あははははは おかしい!!」
私は腹を抱えながら笑ってしまった
姉の変わり果てた頭にもっと 事態は深刻になるのかと
思ったが 予想と反して普段と変わらぬ姉に
私も自然に受け止めることができた
むしろこんなに大笑いするとは自分でも考えていなかった
「美人薄命っていうけど ほんまそうやわー」
手鏡をもって 自分の顔をみつめながら
冗談交じりに姉が言う
「自分で言うなよ笑」
素早く私はツッコむ
「平成の夏目雅子やな」
と頷きながら姉は続けた
「誰それ~?」
と私はケラケラ笑いながら答えた
私は夏目雅子をその当時本当に知らなかった
だから姉の発言に笑って 対応できたのだ
もし知っていたら とてもじゃないけど笑うどころか
言葉に詰まって洒落にならなかっただろう
しかし坊主にした姉は まことに美人であった
私は初めて姉が美人であることを自覚した
両親が 長女を美形だと褒め称えていたのは
ただの親ばかでなかったことが ようやくわかった出来事だった
「先生がな 抗がん剤の副作用で髪の毛抜けちゃうけど
また生えてくるっていうてた しかも今度はきれいな髪の毛が
生えてくるっていうてたから 楽しみやわ」
と姉が嬉しそうに話していた
「お姉ちゃん針がね並みに剛毛やったもんな」
と姉妹楽しく会話をしていた
帰宅すると 母が帽子を数枚手にしていた
「あーーこれ愛姉ちゃんに買ってきたん?」
私は駆け寄って 母が手にしているニット帽を眺めた
「そうそう 若葉が買ってきてくれてんよ
お姉ちゃん 頭寒いやろうし あれじゃかわいそうやからって」
「あはははお姉ちゃんパゲッパゲやったな!!」
と私がちゃかして答えると 母は涙ぐんでいた
「お母さん お姉ちゃん髪の毛剃る時 よこでみてたけど
剃ってくれたの婦長さんで…泣きながら剃ってたんよ」
と震えた声で話してくれた
婦長が泣いていた という言葉の意味を理解するのは
私はまだまだ先のことだった…
続く