投資のにほへと(アイアンコンドル) | ぶらっくまーさん

投資のにほへと(アイアンコンドル)

なし崩し的に組成した所謂アイアンコンドルについて説明します。

 

これまでもオプションについて色々説明してきましたが、本日はクレジットスプレッドというオプションのポジションに就いて説明します。そしてこれを組み合わせてコールオプションとプットオプションで組成したものをアイアンコンドルと呼びます。

 

まず、このポジションを組成するのはどういう時なのかということを考えます。既に今月上旬に述べていますが、例えば市場が上にも下にも動く可能性が少ないだろう、今の水準のところで揉み合う可能性が高いであろう、と判断される場合現在の日経平均の価格近くのオプションを単純に売るという作戦が考えられます。

 

例えば現在日経平均先物は38800円です。オプションにおけるATMは38625円です。何らかの事情で日経平均は6月のMSQまでこの水準より下落する可能性がほとんどないらしいと判断するとします。もしその相場観が正しい自信があるのなら、38625円のプットを売るという選択肢があります。

 

本日朝の段階でこの38625円のプットは520円でした。するとここではミニオプションで考えますが、このプットオプションを売ると520円を得ることになります。

 

この時の損益チャートは以下のようになります。

 

 

曲線の方はこのオプションの期中における損益で、折れ線のグラフが満期での損益となります。さて、このオプションは満期となる6月のMSQまで持った時、仮に38625円以上で日経平均が推移していればこの本日のプレミアム分の520円が全て利益となります。そして運悪く予想が外れたとしても、現在の価格から520円下の値、すなわち38105円までは利益が出ます。38105円で日経平均がMSQを迎えた場合、損得無しとなる計算です。

 

一方、何らかの事情で日経平均が下落していくとします。すると理論上損失は無限大となります。現実には日経平均が20000円とかそういう値になることはありませんから上限はありますが、例えば36400円まで下落したなら、

 

(38625-36500)-520=1605

 

円の損失となります。上のグラフで一番左のところです。実際にはミニオプションはこの数字の100倍で1単位となるので、もしこのオプションを裸で売った場合、日経平均が36500円まで下がると160000円の損失となります。

 

もうひとつ注意が必要なのは、このポジションを裸で持つ場合、本日の時点で証拠金が15万円程度必要になり、資金をより多く証拠金として拘束されるという点にあります。それではこれらの問題を解消する方法を考えていきます。

 

まずひとつには日経平均が38625円から上にも下にもそれほど動かないと見た時に、ATMのコールとプットを同時に売るという方法があります。つまり38625円のコールと38625円のプットを同時に売るわけです。現在38625円のコールは580円です。そこでこのふたつのオプションを同時に売ると、1100円を得ることになります。そして今度の損益チャートは次の通りです。

 

 

今度の場合、1100円のプレミアムを受け取っていますから、満期までで考えた場合、現在の日経平均の数値より上下に1100円動いたところまでなら利益が出る計算になります。今度は37525円と39725円までで利益を出せることになります。その先では損失が上でも下でも理論上無限大となります。

 

この場合証拠金は先ほどより少し少なくて済むようになります。今回のをシミュレーターに入れて計算すると12円程度となりました。オプションを2つ売っているのに先程より証拠金が少なく済むのは何故でしょうか?

 

それは日経平均が上か下かのどちらかに動いた時、保有するプットかコールのいずれかは減価するからです。両方が一遍に上昇することはボラティリティが急上昇しない限り起こりません。従って証拠金は先程のものより少なくて済みます。

 

けれどもこれであってもまだリスクは大きいです。上下どちらでも大きく動けば損失は膨らんでいくからです。しかも期中で大きく動いた時にはボラティリティも上昇するため、現実には37525円や39725円に到達するより前に、上の曲線のグラフよりも更に急速に含み損が増加します。

 

そこでここから更にリスクを低減する方法を考えます。それはコール側もプット側も、やや外側のコールやプットを買ってあるところから先の損失を限定する方法です。どういうことか実際にやってみましょう。

 

日経平均のボラティリティと6月限のオプションの残存期間などを総合して、日経平均がここから上も下も1000円は動かないと確信を持てたとします。

 

そこでオプションの価格も勘案して37625円のプットを買うとします。このプットは現在205円です。これを組み合わせた時の損益チャートは以下の通りです。

 

 

このグラフを見ると分かりますが、日経平均が下落した場合でもその損益は-11円を超えないことが分かります。これはどれほど日経平均が下落したとしてもコールのプレミアム分を丸々得られ、そして38625円のプットの損失が増大するのですが、同時に37625円のプットから得られる利益も増大するため、損失が限定されるということです。しかしこれでもまだ日経平均が上昇し続けた場合に損失を限定できません。それが理由で証拠金の額も先程と変わりません。

 

そこで同じようにコール側も外のコールを買っていきます。例えば39625円のコールを195円で買うとします。すると損益チャートは以下のようになります。

 

 

この場合、最大の利益は遠くのコールとプットを買った分の400円だけ減って700円となります。一方で最大の損失はどれほど日経平均が動いたとしても300円となります。これにより例えばこのポジションをミニオプションで組成すると最大の損失を30000円に限定できたことになります。

 

そしてこのポジションを組成するのに必要な証拠金の額は先ほどより10分の1に減少します。14000円でこのポジションを組成できます。もちろん実際には取引の瞬間にはもう少し証拠金が必要ですから本当に14000円だけで良いわけではありませんが、このポジションを組成した後には概ねその程度の証拠金でこのポジションを維持できるということです。

 

しかしこのポジションでは満期まで持って利益を出せる日経平均のレンジが38000円から39300円あたりまでとかなり狭いです。例えば今週日経平均はかなり揉み合うような動きでしたが、それでも上下の変動幅は週初のところから上下におおよそ500円はありました。つまりこのようなポジションだとすぐに損失の発生するレンジに日経平均が動く可能性が低くありません。

 

そこでもう少しATMから遠いところでこのようなポジションを組成してみようと思います。それが実際に私が5月上旬に組成したアイアンコンドルです。

 

例えば日経平均は揉み合うが、それでも今の価格から上下に1000円程度は動き得ると考えて、37625円のプットと39625のコールをまず売ります。このふたつのオプションは上でも紹介しています。これでまず400円を得ます。

 

次にこのふたつのオプションから更に遠くのプットとコールを買います。そのあたりの水準になる可能性が高くないと考えて、ここから625円先のものを買うとします。つまり37000円のプットを80円で買って、40250円のコールを98円で買います。

 

 

こちらがその時の損益チャートです。このポジションだと利益の最大値は220円、損失の最大値は400円となります。得られる利益と損失だけを考えると先程のポジションより旨味が無いように思えます。しかしこちらのポジションは利益を出せるレンジが37400円から39845円までと2400円の幅で利益を取ることができます。先程よりもほぼ倍のレンジで利益を得ることができます。

 

このような形で株価が動かないことで利益を得る方法がクレジットスプレッド、そしてそのプットとコールを組み合わせたアイアンコンドルと呼ばれるポジションです。

 

現状ですと、MSQまでの期間が短くなっているためオプションのプレミアムが剥落していて利益を得にくい状況となっています。5月上旬に私がこのポジションを組成した時には37500円のプットが425円、40000円のコールが365円といった形でかなりプレミアムがのっていました。それの時間による減価によって現状そこそこの含み益が出ているということです。

 

このポジションはオプションを現物株のヘッジとして使うという目的から一歩進んでオプションで積極的に利益を出していくという目的の中ではリスクを限定し、勝率も悪くないものです。それだけに毎回毎回このポジションをとって利益を出そうと思いそうになりますが、そうした貪欲さが無く、揉み合う局面を発見した段階でアイアンコンドルを組成するように慎重に行動するのなら、確かに地味に利益を出していけるものだと思っています。このポジションで順調に利益を出せるような局面というのは現物株は毎日値動きも少なく、売買を重ねるとそれだけ損失が嵩むような局面のことが多いので、そういう時にオプションで自分の相場観が正しいと思う時にそこから利益を取っていくという作戦です。

 

ちなみに現在の私のオプションのポジションは案の定この週末を前にしたナイトセッションでかなりプレミアムが剥落してきました。

 

6月限C40000円売り@365円×1枚

6月限C40500円買い@250円×1枚         +5200円

 

6月限P37500円売り@425円×1枚

6月限P37000円買い@310円×1枚         +6000円

 

6月限P36500円売り@320円×1枚

6月限P35500円買い@165円×1枚        +13500円

 

6月限C41000円売り@79円×1枚

6月限C42000円買い@27円×1枚           +3500円

 

小計                               +28200円

 

遠くのオプションのプレミアムが急速に減価しているのが分かります。