雑感(円安継続) | ぶらっくまーさん

雑感(円安継続)

日本人の個人が介入を見越した円ロングをしていたようです。

 

それが152円をひとつの水準としていたようです。典型的な逆張りです。ここで以前書いたような気がしますが例え日本政府が何と言おうと水準で介入するとなればアメリカから為替操作国と認定される可能性すらあるので、それはできないのです。

 

ただ、非常に多くの日本人個人投資家が円ロングをしていたようで、それが昨晩動かなかったことで結構な大打撃を受けたようです。あたりまえでしょうけど。

 

ちょっと興味もあって為替をやっている人たちが集まっていそうなポータルサイトを覗いて見ましたが、自分たちの強欲な部分には触れずにあれが悪いこれが悪いと責任を押し付けていて、そんなことを言っても口座の中身は大損した傷跡がぱっくり開いて見えているので、例えそこで悪態をついても口座を見て更に怒りをため込むような悪循環に陥っているんじゃないかと邪推しました。

 

本日この後PPIが発表されます。こちらの数字が悪い意味でのサプライズだと上流部分での物価上昇が収まらないということで、かなりの失望売りが出るかもしれません。とにかく水準で介入するという考え方を捨てた方が良いでしょう。

 

あちこち見ていると152円を超えたら介入があると思って為替を扱っていた投資家(投機家?)が多いようですが、大失敗でした。そしておそらく市場から退場するほどの大打撃はまだ受けていないような気がします。ただ最近の株式市場の上昇で得られた利益の大半を吹き飛ばしたんじゃないのかな、という気がします。

 

そうしたポータルサイトを見ていて思ったことですが、きちんと分かって書いているのかどうかは知りませんけれど、『ファンダメンタルズ』という言葉をよく使っています。大体のケースでは現状の為替水準が日米の経済状態のファンダメンタルズから乖離している、という意味で使っているようです。そういう人たちの真意っていうのはほとんど意味不明なことが多いので真面目な考察をすることが野暮かもしれませんが。

 

それで、例えば日米の貿易収支で言えば日本が圧倒的な黒字なので、それだけ見れば円高になるはずです。けれども例えば日米貿易よりも結構大きな対中貿易を見ると、圧倒的な赤字です。そして中国元はアメリカドルにペッグしているので、円高に動いた時には中国元に対しても円が強含みます。

 

そんなことをしたら外需依存度の高い日本の大企業、特に上場企業の大きなところの業績は割と短期間に悪化します。当然賃金上昇の原資も無くなるし、業績の上昇を織り込んだ株価も崩壊に近い動きをするでしょう。

 

そうなると一時的な円高を実現できても最終的には日本の国内経済が後退し始めることから更に急速に円安が進行して取り返しがつかなくなります。分かりやすい例え話をすれば、少し前の英国のトラス政権の時のようなことが起こるでしょう。

 

少し最近の日米の金利を見てもらって、その金利差とその差が同じ時の為替水準を見てもらうと分かるのですが金利差が例えば22年と同じであっても為替は少しずつ円安になっています。このブログではこれまでも何度も繰り返し述べていることなのですが、日米の生産性の推移を見ていると、その他の条件を全て固定したとしても年に2~3%は円安に動かないと日本の産業の世界における競争力は失われていくように思います。製造業だと中国企業に負けるようなケースが出てきているように思えます。従ってもう国内での物価がどうかとかそういうことを勘案したとしても為替をある程度の割合で毎年円安に持っていかないと日本という国はソフトランディングすら不可能な状況になっていると思います。

 

このあたり、これまで何度も繰り返している話なので古くからの読者の方にとっては耳にタコかもしれませんけれど。

 

ただね、例えばこれが多くの日本人が大反対してデモや何かが頻発した中で政治家が強行して決めたとかそういうことなら歴史的なエポックとなる出来事があったかもしれませんが、実際には主権者のほとんど全員が、実に9割が大賛成して安倍&黒田ペアの登場を歓迎したので、私の視点だと自分たちの選択の結果を今その選択をした人たちが享受しているわけですから、これはあくまで私個人の見方ですが、現状を憂いたり同情したりすることは微塵もなく、誰かに自分たちの選択の結果を押し付けるようなことが無くてとても良かったな、と考えています。

 

この状況はあと数十年続くのは確実、というかこれから1920年以降のアルゼンチンと同じ道を辿ることになるので、その間に殆ど学ぶことの無い、例えばこの数日で為替相場で大損を出したような人たちでも、これも私の好きな言葉ですが、事実をもって教わるという一番骨身に沁みる方法でいろいろ学んでいけるので良い機会なのではないかと思います。