雑感(中東情勢を考えるにあたり) | ぶらっくまーさん

雑感(中東情勢を考えるにあたり)

今回の中東の事件について、私個人の意見は述べません。

 

ただ、私の家の書斎にはイスラム教に関する本は割と多くあり、それ以外にイスラエルの歴史についての本も多くあります。日本国内でどういう議論がなされているのかは知りませんが、レヴァント地方(東部地中海沿岸地方)の歴史については学んでおいた方が良いように思います。近代についても、もしかしたら教科書的に『英国の三枚舌外交』のような分かりやすい単語に飛びつくような浅い理解だと良くないと思います。ただ、こうした書籍は専門書の類が多く、価格が高額だったり、入手が困難なものもあります。その中では以下に挙げる本はイスラムの歴史を学ぶ上では要領よく纏められ、概要だけならイスラム教について掴むことができるでしょう。イスラエルの歴史についても良く分かります。もしかすると余計なことかもしれませんが、イスラエルが第二次世界大戦後に建国された時に、世界中からイスラエルの地にユダヤ人が集まってきただけだと思っている人はいませんよね。レヴァントには古代からずっとユダヤ人が大勢住んでいたのです。そして20世紀でもこの地域の3分の1の人はユダヤ人でした。そして第二次世界大戦が終結するまで、ここには現代的な意味で言うところの『国家』は存在していなかったのです。

 

 

 

 

 

2冊目の本はイスラムを知る時の入り口としては良い本です。ただ残念な点もあります。全体で5章ありますが、今回の戦争に直接影響する近代以降の中東の情勢については最後の5章で軽く触れられているだけで(基本的にはムハンマドが生まれた時代からの歴史を扱っているためです)、国際情勢や中東の地政学的なことについては深く考察されていません。

 

それでも読む価値はあるでしょう。

 

中央公論社から2017年に初版が発行されています。もとはアメリカで9.11のテロがあった時に、著者のアームストロング女史がイスラムの歴史を書いたものです。この著者の経歴も面白く、オックスフォード大学を卒業して、ローマ・カトリック教会の修道女として7年を過ごし、この本を書いた時はロンドンのユダヤ系教育機関で教えていたというものです。

 

私が読んだ印象としては、もちろん概要だけを200ページ程度に纏めているので内容は当然浅いのですが、それでも必要なことは全て書かれており、尚且つ偏見というものは感じられない内容だと感じました。

 

私は結構この地域のことに関心があり、古代と中世、そして近代の中近東の歴史書を多く読んでいます。そうなると尚更こういった事件においてどちらが正しいとか、どちらを非難するとか、そういう善悪についての見解を述べにくいものです。

 

どういう思想を持ち、どういう意見を持つのも個人の自由ですが、表層だけを見てそういう意見を持つのではなく、せめてこの地域について出来るだけ学んだうえで意見を持つべきだし、議論を深めていくべきだろうとは思います。