雑感(BEVの隆盛) | ぶらっくまーさん

雑感(BEVの隆盛)

TESLAも含めてBEVメーカーが元気です。

 

TESLAとBYDとVinFastは株主でもあり、この時代を牽引するメーカーとなるような気もしており、TESLAの株を2010年に買っていてこの潮流に乗れたのは人生において最大の成功だったのかな、と思っています。BYDとVinFastもそれに続くことを願っています。まぁ、BYDも6倍程度にはなっていますけれど。

 

ところでTESLAは自動運転(TESLAの言葉だとFull Self DrivingからFSD)システムの開発をずっと継続しています。今から数年前に日本では殆ど報じられることも無かったかもしれませんが、それまでマスク氏はTESLAのFSDをカメラ+LIDERで周囲の状況を取り込む方式からカメラのみのシステムに変更しました。この時、それまで画像解析を行うTESLAの部門には既に数百億ドルが投じられていたのですが、それを全部白紙に戻して、Googleから30代のエンジニアを引き抜いてFSDの責任者に据えます。その時のマスク氏の話では、LIDERだと道路上にある鉄の板のようなものについて感知することが出来ないのだ、という程度のことを述べていました。

 

しかし今になって考えるとマスク氏の真意が分かってきました。見事に騙されました。もちろん嬉しいことです。マスク氏が人工知能をTESLAの自動車に搭載してFSDの性能を向上させる方法ですが、この変更により人間が運転する時に周囲を見ていることと、人工知能が運転する時に周囲を見ていることが同じになるようにしたのです。もちろんTESLAにはカメラが人間の目の数より多く搭載されているので、その意味では人工知能の方がより周囲を良く見えているわけですけれどね。

 

問題はこの変更の真意です。もちろんTESLAの株を持っている人や、ここの車が好きだったりマスク氏の言動をつぶさに追跡している人は皆知っています。

 

TESLAはDOJOというスーパーコンピューターを保有しており、このスーパーコンピューターが、ユーザーがそれに同意をした場合に限りますが、全世界のTESLAの自動車の運転状況をモニターしています。そしてここから先が本日のエントリーの一番面白いところですが、このスーパーコンピューターはFSDが機能している時の挙動をモニターしているだけではなく、人間が運転している時のことをモニターしています。そして、特に重要なのは、この人間が運転している時の情報を収集しているところです。これはどういうことでしょうか。

 

DOJOと人間ではTESLAの車を運転している時、その大半では同じように判断を下します。それらの情報はDOJOにとってみればあたりまえの多くの出来事に過ぎず、これは機械学習の機会となり得ません。

 

ところが人間の挙動と、DOJOが周囲から同じインプットで判断する挙動が異なる時があります。DOJOはこの状況を選択的に取り上げて、なぜ人間がその状況でその挙動を行ったのかを検証していきます。そしてそこで人間の挙動とDOJO自身の挙動について比較してどちらがより安全でリスクの少ない判断をしたのかを検証しています。これがTESLAの行っている自動運転の技術開発です。

 

これを行う時人間と異なるインプットがDOJOだけになされると、人間とDOJOの判断の差がインプットによるものとなる可能性が出てきます。従って現在のようにDOJOが勝手に機械学習を行うのには少し問題があります。LIDERで得られた情報ゆえにDOJOが賢明な判断を出来た、となると人間の挙動の動機にDOJOが迫りにくくなるからです。これを見越してマスク氏はそれまで日本円で数兆円を投入してきたFSDを白紙に戻し、現在のカメラのみのシステムに変更しています。

 

マスク氏は時に大口をたたくことがあったり、自社の技術を過信しすぎてフライング気味に市場に出したものを取り繕うために違法すれすれのことをしたりもします。けれどもこの全体のシステムは既にBEVメーカーであれ既存のICEメーカーのものであれ、そこの自動運転技術を現時点で圧倒的に凌駕しているのみならず、TESLAの自動車が公道を走る数が増えれば増えるほど学習の機会が増大し、その能力が指数関数的に向上していくために、その圧倒的に凌駕している能力を日に日に引き離しているのです。従ってごく近い将来において、ちょうどNACSが北米でBEVのチャージ方式のデファクトスタンダードになったのと同じように、FSDが自動運転技術においてグローバルにおけるデファクトスタンダードになる可能性が高い、というよりこれが完成した時には、それと同じ水準の自動運転技術を持てる企業は存在しないため、TESLAはいかなる価格であれ、これを他の自動車メーカーに売ることができるようになるでしょう。古くからマスク氏の企業の株を保有している人たちは、このマスク氏の千里眼の確かさについては、他の多くのマスク氏の短所を鑑みてもこの時代で抜きんでていることを認めているので、中々TESLAの株を売ったりしないのだと思います。2010年から比べると200倍近い株価になっていますが、それですらまだ高い山の五合目程度だという認識です。