ヘアードネーションの話題は時々耳にするが、
使用しなくなったウィッグ寄付の話題は聞かない。
家内は、がんの治療開始直後、
髪はいつかは伸びるから、
と価格と手入れのしやすさを優先し、
ファッション性を後回しにしてウィッグを選んだ。
でも、とてもよく似合っていた。
毎日家内を包み、彼女は毎晩大事にスプレーして
ブラッシングしていたウィッグ。
時々強風に煽られて少しずれ、カクマニが直したウィッグ。
納棺の折に身につけさせようと思ったが
斎場の都合で叶わなかった。
鏡台のすぐ脇の押し入れ、家内が毎朝取出し、
毎晩仕舞っていたその押し入れの中で10年を超えた。
カクマニは家内がどこかで生きていく気がして、
できれば寄付を、と受け入れ先を探した。
ガンに関係した受け入れ先は1か所だけしか見つからなかった。
彼女を活かすつもりで寄付先を探したくせに、
いざとなると、これまでの家内の衣類、手紙、本の処分と異なって
心が大きくザワザワ音を立てながら揺れている。
わずか10か 月足らずしか身につけられなかったウイッグなのに。

