幻の三島由紀夫 映画「MISHIMA」 | 三島由紀夫と森田必勝のブログ

三島由紀夫と森田必勝のブログ

ブログの説明を入力します。

いわゆる「三島事件」から13年後の1983年6月16日、帝国ホテルで

あのフランシス・F・コッポラとポール・シュレイダーが日米合作映画

三島事件をテーマにした「MISHIMA 11月25日 快晴」の制作発表が

された。


三島が自決した、11月25日の起床時から死までを軸にして、少年時代

青春時代の回想シーン、金閣寺などの小説の一部を描き、三島の人生

と芸術を浮き彫りにしていく、という内容だ。自決事件だけを描くのなら

ともかく、その大胆な構想に出席者は圧倒された。


キャスティングはすべてオーディションで決められたが、主役の三島役

は難航した。坂本龍一、永島敏行、小林薫、やまもと寛斎 等多くの俳優

が候補にあげられたが、緒形拳に決定した。

小説の部の主役、「金閣寺」 溝口 役 坂東八十助 ・ 「奔馬」 飯沼勲 役

永島敏行 ・ 「鏡子の家」 収 役 沢田研二 などのキャスティングが発表

された。


その発表された同じ日に報知新聞の「未亡人が <待った> ホモや切腹に

触れない約束」 という大きな見出しに誰もがビックリした。


脚本に不満の三島未亡人が、脚本が契約にそっていないので書き直しを

求めている、という内容である。

「映画の契約はありますが、その後、様々ないきさつがあり、経過において

同性愛と暴力(切腹)を主題にしないとの明確な合意をいたしました。

しかし、できた脚本はその合意に反し、同性愛と切腹に重点をおいたもの

になっています。他の権威者(村松剛・佐伯彰一 氏)も同意見でした。

不満なので書き直すよう要請しています。」 と掲載されていた。


不安の種を残したまま、何とか製作費14億円、撮影期間 4ケ月かけた

日米合作映画 「MISHMA」が完成した。



   撮影現場の様子、主役の役づくりのプロセス 等のレポートは

   垣井道弘 著 「MISHIMA」 飛鳥新社に詳細に記されている。




第38回カンヌ国際映画祭 (1985年5月) にアメリカより出品され、グランプリ

の最有力候補としてフランスの新聞、雑誌がこぞって特集を組んでいた。

マスコミのインタビューの中でシュナイダー監督は答えた。

「この映画は最初に日本で公開される予定だった。だが、日本の右翼団体の

一部が反対し、トラブルを避けるために試写会も行われていない。カンヌで

世界最初の上映にこぎつけるまでの道のりは、遠かった。」


注目のグランプリは予想外の「パパは、出張中」が選ばれ、「MISHIMA」は

最優秀芸術貢献賞を受賞した。


カンヌ国際映画祭の後日、第1回東京国際映画祭で特別上映されるはず

だったが、反対する右翼団体の一部による妨害を恐れた映画祭側が上映

を拒否し、日本では未だ公開上映されていない。



      垣井道弘 著 「MISHIMA」 飛鳥新社   より




後日談として「一水会」顧問の鈴木邦男 氏は次のように語っている。


「右翼の妨害といっても、一部の右翼が銀座でポスターを5~6枚張った

 だけですよ。三島夫人の発言を週刊誌で読んだだけで、動いた。

 誰も夫人の発言を直接聞いたわけでもなく、映画を観て抗議に行くとか

 じゃないんですよ。アメリカの映画会社だから過剰反応したんだろうと

 僕は思います。日本の映画会社だったらもっとうまくやったと思います。


 ただ、三島由紀夫の自決によって、三島は右翼にとって「神」になりま

 したから、「神」の存在を少しでも汚す要素は我慢ならないという気持ち

 もわからんでもない。」  と。




この本に掲載されているカット・シーンの「緒形 三島」の写真や緒形拳

の役者魂のエピソードを知ると、ぜひともこの映画を観てみたいと思う。

ユーチューブでほんの少しだけ見ることはできるが・・・・

緒形と比べるのは、「11.25 自決の日」で演じた井浦新に申し訳けないが

多分全然ちがうだろうと思う。

「井浦 三島」の あの色白とプヨプヨの腹はちょっと残念だった。


外国人が三島を描くのは私も少し違和感を感じるが、あくまで

映画として鑑賞してみたい。