私の妹・フナちゃんもまた、私と姉妹ということもあって(?)変な人を寄せやすい体質である。


今回は、約10年前のフナちゃんと当時飼っていた犬に巻き起こったお話。




まだうちの両親が経営していた画材屋があったときのこと。近所でも有名な看板犬として実家で飼っていたイタリアングレーハウンドがいた。



今でこそよく見かけるようになったけど、当時はまだまだ珍しく、犬嫌いの客からはあからさまに「何この犬こっわ!」というネガティブな感想をいただくこともあった。



血統書のついたイタグレではあったけれど、通常のイタグレよりも3倍近くデカいイタグレに成長した。

イタリア人の客が来店した時、「ソノ犬コワイ!チカヅケナイデ!」と言われたらしい。

(お前んとこの犬やろ)



イタグレは犬見知り(他の犬種との社交性があまりない)の子も多いので、妹がイタグレばかりが集まるイタグレの会に参加させてもらったこともあるが、他のイタグレの飼い主さんから「そんなに大きなイタグレは見たことがない。イタグレじゃなくてウィペットでは?」と言われ、イタグレにも属させてもらえない稀有な存在で、やみつきになる独特な可愛らしさを持っている犬だった。









さて、そんなイタグレのようでイタグレでない、〝イタグレ会預かり〟のうちのイタグレは、フナちゃんが仕事の合間に連れて行ってくれるお散歩を、毎日マイペースに楽しんでいた。



彼(オス)には大好きな人、大嫌いな人、大好きなもの、大嫌いなものがはっきり分かれていて、かなり情緒が不安定な犬だった。

和犬は好きだけど洋犬は敵とか、

(オスではあったがゲイだったので)和犬のオスや人間の男性が大好きで、しっぽを振りながらよくチムチムを剥き出しにしていた。

そして車はOKだけどバイクや自転車など二輪車が大嫌いで、自分の側を通ろうものなら鋭い牙で噛み殺す勢いで向かっていく。



お散歩コースは街中なので、二輪車もたくさん走っているし、大嫌いな洋犬もすれ違う。毎日散歩を担当するフナちゃんは、さぞ制するのが大変だっただろうと思う。



ある日、フナちゃんとうちの犬がお散歩に出かけた時、男性に話しかけられた。

犬種を聞かれ、犬好きなのであろうその男性と雑談を交わした後「ではそろそろ失礼します」とフナちゃんが立ち去ろうとした時、



「ちょっと待ってください」



と男性に呼び止められた。

男性は今いる場所から少し離れたところにある駐車場の喫煙所(愛煙家に人気のスポットで常に人がたくさんいる)の方を見ながら、




「あそこに、1人でブツブツなにか独り言を言っている男性が見えますか?」




「実はですね、あの人には悪魔が取り憑いています。僕が直接祓ってもいいんだけど、周囲に人が多すぎて悪魔祓いをするにはちょっとアレなんで、代わりにおたくのワンチャンにお願いしてもいいですか?




チーン「(何言ってんのこの人)はあ。。。」




と答えたフナちゃん。



普通は関わりたくないのですぐ立ち去りそうなものだが、フナちゃんは職業柄、少し変わった人にも免疫があるので真面目に対応してしまう。



その男性はフナちゃんにお礼を言った後、うちのイタグレに話しかけ始めた。



「ワンちゃん、よく聞いて、あそこにいる悪魔が憑いている男性を祓いたまえ。。。なんとかかんとか。。。ブツブツ。。ゴニョゴニョ。。」



と、意味不明な言葉をうちのイタグレに浴びせた後、フナちゃんたちの進行方向である喫煙所の方をチラリと見ながら、




「はい、ではあの男性に対してワンちゃんが吠えると思います。が、それは悪魔祓いなのでお気になさらず。ではお散歩お気をつけて行ってらっしゃい」




と言って立ち去っていった。



うちのイタグレは、うちの犬自体にこだわりがある特定の人間・例えばよく遊んでくれる佐川急便のお兄さんとか以外に、道端で出会う見知らぬ歩行者に吠えたりすることはまず無い。



まして自分に近寄ってくるわけでも、苦手な二輪車に乗っているわけでも無い人間に吠えるわけがない。



フナちゃんはそう思いながら散歩を続行した。



喫煙所に近づき、その男性の横まで差し掛かった時、おもむろに独り言を言っている男性に向かってうちのイタグレが吠えた。



執拗に、何度も何度も。



フナちゃんは驚愕し、

「怖い怖い怖い!もう悪魔とかそんなのどうでもいいから早く行こう!おいで!」

と言って無理やり犬を散歩コースに戻して連れて行った。



私はその話を聞いて、その悪魔祓いの男性の名刺を真剣に欲しがっている。



おしまい。