鬼門。避けるべき方位や方角とともに、その人にとって苦手な場所という意味がある。
半世紀以上前、高校生のときのことである。
本屋が私の鬼門だということがわかった。

棚に並んでいる本の背表紙を見るだけで、5分も経たないうちに○意を覚えるのである。
下っ腹がグリグリし、オ○ラが出そうになり、本を選んでいる場合ではなくなる。

そして店内をそわそわ、キョロキョロ歩き回りトイレを探すのだが、挙動不審な若造と書店員に映ったに違いない。
当時客が入れるトイレを設置している本屋は、多くなかったのである。
やがて、すぐ駆け込めるトイレのある○光堂という本屋を見つけ、本を探すときは迷わずそこに行った。

その後、私の鬼門に図書館が加わった。
学習コーナーで突っ伏して寝る分にはいいのだが、たいがい学習コーナーは窓際にあり、そこに行くためにはずらっと並んだ書架を抜けなければならない。
つまり、学習コーナーへ辿り着く前か辿り着いてすぐ、○意にさいなまれるのである。

本屋から図書館に及んだ私の鬼門は、さらにレコード(CD)店、レンタルビデオ店にまで拡大していった。
現在、レコード店が姿を消し、レンタルビデオ店も近所で見かけたことはない。
時代の流れは私に味方しているものの、本屋と図書館を利用しなければ楽しみは半減してしまう。
だから、様々な方法で調べて読みたい本を絞り込み、本屋や図書館に行っても他の本には目もくれず、そそくさと帰るようにしている。
私が余裕のない人間と言われるのは、これが原因かもしれない。