皆さま、こんにちは


本日は実話を基にした

新作映画を二本、ご紹介します


一本目は『福田村事件』



1923年9月1日に起きた

関東大震災


戒厳令が敷かれ、

人々が混乱に陥る中、

当時日本に住んでいた朝鮮人が放火した

井戸に毒を入れ廻っている、等と言った

流言流布が飛び交い



恐怖を覚えた日本人による

『朝鮮人狩り』が関東各地で横行します


折もおり、四国からやってた

薬売りの行商団が千葉県福田村に入村。


彼らの訛り言葉を朝鮮語だと疑った村人は

否定する彼らに、日本人ならそう証明をせよ

と、武器を片手に彼らを取り囲みます


早まるな!とする穏健派を尻目に

強硬派の村人約100名は、村を、家族を

守るためその大義名分の下、行商団15名

の内、女子供を含む9名の殺害


事件の関係者は

加害者は言うに及ばず

被害者の遺族や生存者も押し並べて皆、

口を噤みました


彼らは何故このような

事態を引き起こしてしまったのか?


そして被害側も何故

沈黙を守り通したのか?


についてを

当時の社会情勢を交え、考察した作品です



二作目は

『キラーズ•オブ•ザ•フラワームーン』



舞台は1920年台の

オクラホマ州オセージ


この地に石油が湧き出で

利権を得たオセージ族は

世界で最も裕福な民となります


当然のことながら

そこに目をつけた白人たちが

大挙して押し寄せてきたわけで、、、


彼らは金持ちのオセージ族から

オイルマネーを強奪するため

男たちを殺し、或いは

オセージの女性と婚姻を結び

財産の横取りを謀り、そうやって

殺されたオセージ族は60名以上。


剛を煮やしたオセージは

政府に陳情を繰り返しますが、

まともな捜査などしてはもらえず


やがてヒロインリリーの身にも魔の手が、、


1920年台前半、

日本とアメリカで実際に起きた事件では

ありますけれども、学校で習った記憶はなく

映画の公開を受けてはじめて知った次第です


『福田村事件』での加害者は

妄想が肥大化した自己防衛のため


『キラーズ•オブ•ザ•フラワームーン』

での加害者は、己が強欲を満たすため

他人を見境なく殺めるに至ったわけですが


どちらも自分のための行為であり

どちらの犠牲者も彼らから差別を受ける側の

人々でした


『福田村事件』では

日本人と朝鮮人の違いを見る手段として

がぎぐげごや、ばびぶベぼの発音が苦手な

朝鮮の人に『15円50銭』と唱えさせる

シーンが出てくるんです


そこには潜伏キリシタンに対する

踏み絵同様、追い詰める側の執拗さを感じ

ましたし


『キラーズ〜』の方では

オセージ族は糖尿病患者が多く

そこをついたディカプリオ演じる白人夫が

妻のインスリンを危険な薬物に取り替えたり

と、搾取する側の嫌らしいエゴを見ましたわ


しかし加害側の彼らとて

一から十まで悪人というわけではなく

良心も持っていたはずなのです、きっと。


なのに何故?って


大地震に生じて

朝鮮人や社会主義者といった

不逞の輩が日本をどうにかしようとしている


そういったデマゴギーに惑わされて、、

ということも、あるにはあったのでしょう

けれど


わたしは行商団の親分に扮した

永山瑛太さんの最期の台詞、、、


この親分さんの台詞こそが

核心を突いていた気がします


複合的な差別の存在の、

そのおかしさに親分以外の誰も

気が付いていなかったってことが、、、

なのですけれど


『キラーズ〜』でも

若いインディアンの捜査官が

ボソッと吐いた台詞が、彼らの厭世観を

表しておりましたね


差別を受けるインディアンの中にも

二重差別があり決して平等ではないという


両作ともに出自による

差別を描いておりますから、

その不条理さが後を引く作品です


そしてもしも自分が

当事者だったとしたら

どうしただろうか?についてを

突きつけられた作品でもありました


『福田村事件』の監督は

今作が長編劇映画デビューの森達也さん。


監督はドキュメンタリー畑の方なので

脚本家を招いての、そしてこの内容ですから

正直観ることを躊躇いました


観たら絶対トラウマになるだろうなって


けれどクラウドファンディングで

製作費を募り、難儀をしてでもこの事件を

広く世に知らししめたいとする熱意


それが作品に反映されていて

もう一度観たくなるくらい物語としても

優れておりました


『キラーズ•オブ•ザ•フラワームーン』の

監督は御年80歳のマーティン•スコセッシ


言わずもがなの御大お得意の

クライムムービーでありつつ、

インディアンレディたちの矜持を

併せて描き、人間ドラマとして成立させた

辣腕はさすがでした


そしてこの事件が発端となって

かのFBIが創設されたとのことで

またひとつ映画からものを教わりましたわ


どちらも只今公開中ですんで

詳細は伏せております


犯人たちが罪を認めたのかどうか

につきましても、また然り


けれど皆さまもご想像はつくかと、、、