皆さま


土曜日の夜にこんばんは



わたし小説は

タイトルで選ぶことが多くて

惹かれるタイトルですと、

本編もほぼ間違いなしが持論です


原題は『SHORT STORIES』と

そのまんまだけれども

邦題が意味深な『あなたに似た人』も

その体で購入しましたし、、、



コチラの短編集は

『笑ゥせぇるすまん』の世界観に近い

申せば、雰囲気伝わります?


原作者はパトリシア・ニールの夫

ロアルド・ダールなのですけれどもね


作者本人も作品同様に食えない御仁で

彼には他人を不快にする言動がままあった

で、対するパトリシアの第一印象も最悪


にも関わらず二人が結婚に至ったワケは、、、



ダールからの

猛アプローチがあったことと

とにかく彼女は子供が欲しかったらしく


愛してもいない男の子供を産めるか?

に、ついての議論はここではやめときますね


ダールは変わり者だったかもですが

彼の柄ではなかったかもですが、

それでもパトリシア『I love you』

伝えておりました


彼女を愛していたから

長女を亡くした時も、長男が事故で障がいを

負った時も、パトリシアが脳卒中で闘病中も

彼女に寄り添ってくれたのだと思いますが、


そんな彼に 

『I love you too』と返せなかった

パトリシアは、けれど不倫相手だった

ゲーリー・クーパー亡くなった際、

インタビューを求められて


『He is my love』(彼は私の愛)

と答えます


、、、過去形ではなくです


さらに彼女は

婚後出演した映画『ハッド』で

アカデミー主演女優賞を獲得した際、

記者会見の席に、クーパーから贈られた

毛皮のコートを着て現れてもいます


この一連の出来事を

ダールが知らない筈なかったでしょうし

こんなことを公言、行動されてしまったら

夫の面目は丸潰れですよねぇ


妻への愛が勝っていたならば

これらをやり過ごすことも可能ではありま

しょう


ただシコリとして

残ってしまう出来事であったとは思うのです


そんなダールの目前に

若く美しい同郷の女性が現れました


彼女、フェリシティーは、

仕事で不在の妻に代わり子供の面倒も

見てくれて、さらには子供たちも彼女に

懐いている


二人は道ならぬ関係に陥り

周囲が皆、二人の仲を周知している事実を

当のパトリシアだけが知らなかった、、、


それが彼女を打ちのめしました


パトリシアにバレたフェリシティー

『奥様を傷つけ誰も幸せにならないことを

 してしまいました』と手紙を認め、

ダール家を訪れることはなくなって

夫妻はやり直すことにするのですが、


しかし仕事でアメリカとイギリスを、

行ったり来たりパトリシアは、留守中

我が家にフェリシティーが来てはいや

しまいか?


それを疑い、

我が子たちを執拗に問い詰めます


昔、クーパーの妻が娘に

『パパはパトリシア・ニールと浮気してる

のよ』と暴露したことに、子供になんてこと

をと眉を顰めたパトリシ


自身がいざその立場に立たされれば

それ以上のことをしでかしてしまったという


彼女は脳卒中を患いましたから

感情失禁を抑えられなかった側面は

あったでしょう


後遺症の残る身体でダールに見捨てられる

恐怖心もあったことでしょう


そしてもちろん悪いのは夫です


けれどもそれを

年端のいかない子供に与せよなど、

無体なこと


尋常でない母を目の当たりにした四女は

ダールが近所のお姉さんフェリシティー

別れていないことを認めてしまい


さらにダール

フェリシティーとの水面下を

悪びれる様子もなく認めてしまって


『君が騒がなければそのうちに彼女とは

終わっていたものを、、』と、冷酷な態度

だったんですね


愛が潰えてしまったかのような

態度はまるで自身の作品『あなたに似た人』

の一編「おとなしい凶器」に登場する不倫夫

ように。


『アメリカにいるママの友達の所へでも

行って、、、』


そう懇願して

別居を進めたのはこの四女です


父が悪いと知りながら、それでも

母の方を自分たちから遠ざけた、、、


パトリシアからすれば残酷だけれど、

オフィーリアという名の四女は、母親を

選べなかったのだと思わされました


後に、当時の自身の振る舞いを

『狂女』だったと称したパトリシア


しかし家族に愛想を尽かされた

彼女を救ったのが偶然邂逅した

ゲーリー・クーパーの娘マリアだったとは、

なんという縁でしょうか


『貴女が父との間に出来た子供を中絶した

と知り、残念に思いました。だってわたし

ひとりっ子だから兄弟が欲しかったの』と

告げて。


報道でパトリシアの苦難を知っていた

マリアは、とある修道院を彼女に教えます


その場所で凖修道女となり

一時神に仕えたパトリシア


夫の不倫相手フェリシティー憎しの念

脳卒中で自由が効かない、もう若くもない

家族にも見捨てられた嘆きのパトリシア

シスターは、とにかく書くことを勧めます


そこから日記を書き始め

自身を見つめ直したパトリシア


それが、執筆に五年にもかかった

この自伝のベースとなっております


書くという行為によりパトリシアは 

自分の人生のやり直しを決意し、そうして

ダールへの執着を捨てた彼女別居から

七年後に、30年の結婚生活にピリオドを

打ちます


離婚後ダールフェリシティーと再婚し

ダールパトリシアとの間の子供たちも

そちらの家庭で過ごすことを選んだそうです


この件については

致し方なかったと思う反面

パトリシアが気の毒とも思え、

ちょっと複雑でしたけれども、、、


考えが纏まらないうちに

500頁の長きに渡った彼女の自伝も

残り数頁となりました


が、実は最後にまだ

ドラマが待っておりまして、、、


ゲーリー・クーパーの妻だった

ロッキーとの再会です


ロッキーと彼女の娘マリアと三人で

ディナーを共にした、パトリシア


ロッキーしなくてもよい苦労を

強いてしまったパトリシア彼女謝りたく

ロッキーもそれを受け入れてくれたのですね


クーパーと死別後

再婚した相手とも死に別れたロッキー


苦労人の彼女はパトリシアの苦難の全て、

ダールとの離婚もフェリシティーのことも

病気のことも知っていて何も言わず、

パトリシアを抱きしめました


許す、という行為は

生半に出来ることではないでしょう


しかし

全てを恩讐の彼方へと見送ったロッキー


クーパーが妻を選んだ理由を

パトリシアが悟った瞬間でした


愛した二人の女性の和解に

彼岸にてクーパー何思う、、、




人は誰しも

自身の人生において

功と罪を繰り広げるものです


けれど、功と罪の振り幅が

これほどまでに大きい人が世の中にいたとは

驚きでした


ゲーリー・クーパーとの不倫では

彼女が有責側で、夫とフェリシティー

不倫では彼女が被害側で


しかしどちらの子供達にとっても

当事者である大人たちに全面的な非があって


原因があって、すべからく結果がある


俳優パトリシア・ニール



彼女はあまりに正直すぎたがゆえに

このような結果を招いてしまったのだとも

思えるわけですが、その一方で彼女は

脳卒中患者の希望たり得た人だったことも

また事実です


そうやって自身の人生を生き抜いた彼女は

2010年、84歳でこの世を去りました



果てしなくも、せわしなく


密度の濃い人生だったのでは


ないでしょうか