皆さま


金曜の夜にこんばんは


今宵は久しぶりにがっつりと
新作映画をご紹介させて頂きます


あ、でも
これから本作をご覧になる方
または、全く興味のない方は
遠慮なく回れ右してくださいましな

、、、

よろしいでしょうか?


では
本編へと
参らせて頂きます


*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


1940年 神戸

主人公 福原聡子(蒼井優)は


貿易商を営む夫優作(高橋一生)と
六甲の豪邸で、不自由一つない生活を
送っておりました

若い頃に渡航し、
海外を見聞してきた優作は
自称『コスモポリタン』

取引に来ていた英国人が
スパイ容疑で連行された際には
自腹を切って釈放させたほど、

当時の情勢も
空気さえも一向だにせず
そういった優作を誇りとし、
妻となった今も夫を愛してやまない聡子

優作もまた、聡子を被写体に
趣味の自主映画作りに興じたりと


戦争前夜の不穏など、どこ吹く風な二人


しかしこの二人の有り様に
眉をひそめる男が一人おりました

聡子の幼馴染みにして
今や憲兵隊隊長に出世した泰治(東出昌大)は


西洋かぶれの聡子夫妻に

『貴女の当たり前は
 このご時世では、批判の対象です
 暮らしぶりを変えないと貴女たちご夫婦は
 官憲に狙われますよ』

と警告するのですが、

その警告は

出張先の満洲で、優作が目にした
ある事によって、聡子の身の上に
現実として、降りかかってくるのです、、、



*・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・


これより先、
チョロっとネタバラシしておりますゆえ
もうこれ以上知りたくないわって皆さま、

ここまでお読み頂き、ありがとうございました

また次回お会い出来れば幸いです╰(*´︶`*)╯♡


ーーーーー


満洲の地で
自国軍の許されざる愚行を
目撃してしまった高橋一生さん扮する優作

それを国際社会へ
告発しようとする彼の態度は
それまで甘々に扱ってきた聡子へ向けても
変わっていきます


そう言った読めない、
食えない人物を演じたら
今ピカイチの高橋一生さん

文句なしにお上手です

そして憲兵隊長を演じたでっくん、、

あ、でっくんつうのは
東出昌大さんの愛称なんですけれども

でっくん演じる泰治は
幼馴染みの聡子が初恋だったと思うんですよ

ゆえに、
聡子の夫に収まったばかりか、
真逆のイデオロギーの持ち主である優作は
ライバルなわけで、だから優作が満洲から
女を連れてきたことを、聡子にチクるんです

さらには優作がアメリカへ、
聡子ではなくてその女と渡航するつもりで
あることも表情一つ変えずに、言いのけます

この女性は優作の協力者らしいんですが
優作君が、思わせぶりだから曖昧模糊としていて
そこを責めるでっくんたらいけずぅーー


しかしこのようにですな
爽やかイケメンよりかは
病み(闇)イケメンの方が
でっくんには似合うと思うので

目指せ!
和製アンソニー・パーキンス(古いか?)


さぁそして

お待たせしました

映画のタイトルロールである
『スパイの妻』に扮した蒼井優嬢についてです


立ち位置は違えど、
優作も泰治もそれぞれが抱く『大義』のため
世界と対峙しながら、あの時代にいたわけですが


しかし蒼井さん演じる聡子は
そんな大層なことなど考えちゃおらず
今まで通り、自分と優作のことだけ。

国を売る事になろうとも
祖国を捨てる事となろうとも

それはただ優作と
一緒にいるために必要な行為であり
そこに如何なる論理も矜持も存在せず

ただただ非現実的な状況に
『酔いしれている』だけのこと

そういった
『おんなのこ、あるある』を
童女のような爛漫さと、
相反する女の情念の二刀流で
巧みに演じ分けた蒼井嬢、

まさに『お見事!』でした



女優としての彼女の個性を
遺憾なく発揮させ、今作にて
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を
獲得されたのは、黒沢清さん

舞台のようなセットに、作為的な照明
劇中で優作が撮る、自主制作映画の意味と、
チェスの並び、、

『スパイの妻』と
銘打っただけのことはある作品であり
最初から最後まで観入ってしまいました

ただ一点だけですね

どうしてここで
エンディングとしなかったのか?
といったシーンがあって

さすればもっと
『上手い!』と膝を打てたかなと
そのように思ったんですが

でも黒沢監督は聡子に、
自分の行いの結果を見せるために
あそこまで引っ張ったのかなって、、、

そして何故今
この時代設定の映画を
撮ったのか?についても

まさしく今だから
だったんじゃないかなって思いました

かの大国の大将を決める
戦を見てて思うのだけど
昨今は自分とこさえ良ければばかりが、増え
まともな話し合いにもなりゃしませんね


そういった
我を押し通すばかりの風潮が
世界中に蔓延していくと
どうなるのか?

時代はまたぞろ

逆行してしまうのではないかってね


映画のラストで

聡子はこう言うんです


『わたしは普通なんです

 でも周りが狂っているから

 だからわたしが狂っているように

 見えるだけなのです』


と、、、


混沌としか
言いようがない台詞にも関わらず
怖いくらい納得のいく台詞でもあり


じゃあ我々
名もなき市井人は
どうしたらいいのかって言えば


同じ間違いを

二度と犯さないために

大きな声に引っ張られず

浮き足立たず

冷静でいることなのかなって、、、


そんな風に


思います





※ 画像はこちらよりお借りしました