少し前のことだった
ラジオから流れてきた
スザンヌ・ヴェガの歌声を
聴いたのは。
懐かしさと
そして、
少しの感傷が蘇ってきた
彼女を知ったのは三十数年前の
こちらのCMなのだけれどもね
訥々と
しかし歯切れ良く
紡ぎ出されるリリックに無伴奏
この『トムズダイナー』を聴くたびに
わたしはパブロフのワンコさんが如く
すぐさまコーヒーを飲みたくなるのだが、
実はここ、実在したレストランなのだ
ヒロインは自分より
後から入店してきた女性客を
優先するウェイターが面白くないくせして
ま、良いけどね、、、となんでもないフリをする
それはまるで
アーウィン・ショーの
短編のような一コマであり
わたし自身が体験しているかのようなシーンでもあり
不思議な空間へと、誘われている感覚に陥ってしまった
内向的に見えるスザンヌ
だから友だちなんかも少なさそうで
それを表す曲が『マレーネの肖像』って曲で
こちらは彼女の部屋の壁に飾られてあった
女優、マレーネ・ディートリッヒに想いを馳せ
source imdb
創作したのだという
映画が好きなのだろうか?
これ以外にも彼女は
エンターティナーフランク・シナトラと
女優エヴァ・ガードナーとの道ならぬ恋についても
歌にしている
例えばリズ・テイラーであるとかね
有名人の派手な恋は他にもあったにも関わらず
すったもんだした挙句
発砲沙汰まで起こし、一緒になったはいいが
結局最後は別れてしまったこの二人を
source wall.kabegami.com
セレクトしたスザンヌの
見た目と違う下世話さに惹かれて 笑笑
デビューアルバム『街角の詩』と
二枚目の『ソリチュード・スタンディング』を
合わせ買いしたのだが、、、
儚気なイメージの彼女が
まさか『児童虐待』を題材とした曲を
収録しているとは思いもしなかった
僕の名はルカ
二階の住人なんだ
君の上の階だからさ
僕を見かけたこと、あるんじゃないかな
もしも夜中に何か聞こえたとしても
それがトラブルっぽかったり喧嘩みたいだとしても
何が起きていたかなんて聞かないで
何が起きていたかなんて聞かないで
何が起きていたかなんて聞かないで、、、
僕がブキッチョなのがいけないんだ
もっと静かにしてなきゃ
きっと僕は悪い子なんだ
だからお利口にしてなきゃいけないんだ
どうしてそんな事をするのかなんて尋ねたら
君も泣くまであの人たちに叩かれるからさ
逆らったらダメなんだ
逆らったらダメなんだ
逆らったらダメなんだ
僕なら大丈夫だよ、多分
またドアにぶつかっただけだから
君に尋ねられたってそう言うしかないんだ
つーか、君には関係ないし
一人になりたいよ
何も壊れたり、投げられたりしないところがいいな
『どうしたの?』って聞かないで
『大丈夫?』って聞かないで
『どうしたの?』って聞かないでよっっ!
僕の名はルカ
二階の住人なんだ
君の上の階だから
僕を見かけたこと、あるんじゃないかな、、、
もしも夜中に何か聞こえたとしても
それがトラブルっぽかったり喧嘩だったとしても
何が起きていたかなんて聞かないで
何が起きていたかなんて聞かないで
何が起きていたかなんて聞かないで
fin
聴いている側からしてみると
このルカという名の少年の下の階の住民は
スザンヌ・ヴェガ、その人に重なってしまうが
彼女の優しい声と穏やかなリズム運び
そこに、強いメッセージはない
あるのはただ
実親か里親かは不明だが
彼らから虐待を受けながらも
それを黙っていて欲しいと願う
ルカの諦めを代弁しているだけな気がして
釈然としない思いがあった
つまり彼女は
ルカをそのままにしたのか?
それとも当局に通報したのか?
そこが不明だったからだ
隣人としてはしのごの言ってないで
通報すべきであることは明々白々ではある
しかしそう出来ない
関わり合いになりたくない
それもまたありうる話なわけで
そういったリアリズムを
彼女は敢えて歌にしたのだろうか?と
だからこれほどまでに
斟酌した曲というのは『ルカ』をおいて
他にはなかったのである
ただし今は彼女によって
ルカは保護されたとそう思っている
何も声高にシャウトするだけが
正義ではないのだと、
そこに漸く気づいたというね、、、
スザンヌ・ヴェガ、60歳
source musiclifeclub.com
現在外見はちょい
LiLiCoさんぽくおなりだけれど
歌声はあの頃のまま、透明なまま
今も社会派アーティストとして活躍中
彼女のスタンスはこれからも
きっとずっと変わらないんだろう