こんばんは
そしてこれ以後としこばあちゃんが
今年最初にご紹介する映画は『大誘拐』
1978年に
天藤真氏が発表した同名推理小説を
1991年当時
老いて尚、衰えを見せなかった
岡本喜八監督が映画化しております
では早速お話をば……
大阪の地に、三人の小チンピラ
健次(風間トオルさん)
正義(内田勝康さん)
平太(西川弘志さん)がおりました
三人は三様の理由でお金に困っており
ムショを出所した兄貴分の健次が
弟分の二人に身代金目的の誘拐を
持ちかけるところから、映画は幕を開けます
ターゲットは和歌山県にお住まいで
『最後の山林王』と呼ばれる
柳川とし子刀自(北林谷栄さん)
何と40,000haの山林をお持ちでございます
(ちなみに40,000ha=
大阪府がスッポリ入る面積だ、そうです)
とし子ばあちゃんは
御年82歳におなりですので
今では外出することはほとんどなく
多くの使用人たちと一緒に
大邸宅に隠遁しておりました
三人は、ばあちゃんが外出する機会を
待ち続け数ヶ月……
健康のためと称し『お山歩き』を始めた
ばあちゃんの拉致に成功するのですが
誘拐されても少しも慌て騒がず
アジトはどこにしなさるおつもりや?
アジトは和歌山市内や
『アジトを和歌山市内なんぞにしたら
県警の井狩(緒形拳)はんがすぐに突き止めまっせ』
などとね、計画の杜撰さを指摘
会話に出てくる県警の井狩はんは、
柳川家から出された奨学金で
大学を卒業しておりまして
このように、とし子ばあちゃんは
資産家であるだけでなく、篤志家としても
地元では人望のあるお人なわけです
そしてこれ以後としこばあちゃんが
自身の身代金誘拐の陣頭指揮を取っていくのです
まずばあちゃんがアジトに選んだのが
昔柳川家の家政婦だった、くら(樹木希林さん)宅
拝める特典付きです
とにかくこのとし子ばあちゃん
ずば抜けて、頭が切れます
さらに人心掌握に長けておりまして
出会ってすぐから、チンピラ達も
ばあちゃんの言いなりとなり……
唯一、健次だけは
リーダーのポジションを奪われ
ばあちゃんに抗うのだけれど、後に敢え無く陥落。
とりあえずくらさん宅に落ち着いた後
ばあちゃんが
『わたしの身代金は幾らにするおつもりかな』
と、三人に尋ねてきました
健次が片手の掌を広げ『五千万や』と言った途端
それまでの穏やかな顔つきが変わるばあちゃん
やはり五千万は無謀やったか?
キョどる三人に
『わたしを誰やと思とりなさる!
わたしの身代金は百億や!ビタ一文まけまへんで』
イキナリ百億の提示にビビる三人ですが
しかしとし子ばあちゃんには
この誘拐に便乗する形で、ある思惑があったのです
*・゜゚・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゚・*
久しぶりに観たのですが
今作は何と言っても北林谷栄さんにつきますね
おばあちゃん女優と呼ばれる
個性的豊かな方は沢山おります。いや、おりました。
しかしその多くが、
お約束の役柄を演じておられたのに対し
北林谷栄さんは
強と弱、優と力、野暮と粋といった真逆の
立場を演じ分けられた稀有な存在であったと
ヤスミンは思っております
今作で演じた
とし子ばあちゃんもそうです
存在そのものが可愛くもある反面
考えの読めない、不可思議さもありまして
先に逝ってしまった子らに対する苦渋の眼差しと
そしてこの虹の童子と呼ばれる
誘拐団のリーダー役の風間トオルさん
ぎこちない台詞回しが、悪になりきれない
健次を表現しており間違いなく代表作でしょう
緒形拳さんはもう、
出ていらっしゃるだけで何も要りませんね
狂言回しがお得意の天本英世さんもご健在なり
もうね、原作からして優れています
そして撮ったお人が岡本喜八監督です
スピード感があり
伏線の張り方も真っ向勝負で来てます 笑
紙面から立体へ、舞台が移行しても
エンターテインメント性は
失われておりませんが
実はその痛快さの奥に
深淵なテーマが隠されていて
まぁ、とし子ばあちゃんたら……
そんなことを考えていたのねと
合点がいった次の瞬間
もしかしてそれは
あなたやわたしの祖母の思いでも
あったのではとはたと気づき
ヤスミンはしんみりとしていまいました
こういった出来栄えの良い邦画を観ると
なんだか嬉しくなりますが
でも
北林谷栄さんも
緒形拳さんも
天本英世さんも
それから岡本喜八監督も
もう此処にはいらっしゃらなくて……
何だか寂しいですね
* 画像はDVDより拝借しております


















