「メモを取ることが習慣になってくると取らないことの方が気持ち悪くなるから」

ケンイチは必死にメモを取っている」

カウンセリングルームに静かな時が流れる。

「えらいね。ちゃんとメモを取っている」

「言われたことだから」

恥ずかしそうに頭をかく。

 

 ケンイチは24歳。

大学卒業した社会人2年目。

精神科クリニックにADHDの診断をうけている。

ADHDに効くと言われているコンサータ―を服薬してるが

 変わらないからカウンセリングルームにやってきた。

 

「その素直さがケンイチさんのよいところだよ」

「そうですか」

戸惑いがちに答える。

無言で深くうなずく

「メモが習慣になっても忘れたり、スケジュールがうまく管理できないかもしれない」

「はい」

「その場合にはもう一つ別のメモを持とう」

ケンイチはびっくりしているようだ。

机の上にシステム手帳、バインダー、スマホを並べる。

「この3つで自分のスケジュールの管理をしているよ」

じっと3種の神器を見ている。

この3つの使い方を丁寧に説明する。

「1つでは忘れるし優先順位がわからなくなったから」

「それで3つに」

「最初はバインダーで。それにシステム手帳を追加して2年前からスマホも」

「そこまでしないと」

ため息まじりにつぶやく。

「僕の場合には忘れ物はひどいから…。それに」

一息ついて言葉をつづける。

「忘れた時に3つ使って忘れるなら仕方ないと思って自分を責めることが少なくなった」

「きっとそうだと思います」

 じっと見てくる。

「あとは大丈夫?」

「ものをなくすことも多くて」

「僕も多い。それは次回に話しましょう」

 笑顔で話す。

「お互いに忘れやすいから一度にたくさんやるとね」

バインダに『ケンイチさん、次回忘れ物対策』と書き込む。