さつきから単行本を借りた。
「面白いから絶対に読んでね」」
さつきは笑顔で言った。
今日は機嫌がよさそうだ。
前回の面接に言われた本だ。
さつきとは出会って1年が経とうとしている。
ショートカットの似合うかわいらしい18歳。
学校に行けなくなってカウンセリングルームにやってきた。
家にいることが多くからかイラストを描いたり本を読むのが好きだ。
「面白いというより重い内容だよね」
本を受け取りながら。つぶやく。
「うーん。重いけどつらいのは自分だけじゃないって思える」
前髪を引っ張りながら話す。
この本の作家は虐待、いじめ、貧困などのテーマを中心に扱っている。
この作家のデビュー作を読んだことがある。
とても暗くて重かった。
一人のところでは読めなくて電車の中で読み続けた。
とてもリアルで救いのない内容だった。
救いどころがより現実に近い。
ドラマだと最後にまとまって終わるが…。
現実には解決という事はほとんどない。
とても嫌な気持ちになりそれ以来、その作家の小説は読んでいなかった。