「何している時が好き?」

 定番の質問だ。

「寝ている時」

 しのぶが遠い目をしてつぶやく。

「同じだね」

 思わず言葉がもれる。

 しのぶは黒目勝ちの大きな目をした14歳。

 有名私立中学2年生だ。

 半年前に学校の教室から飛び降りで足を骨折をした。

 それを機にカウンセリングルームに来た。

 

「寝ていると時間が経つのが早いから」

「そうだね」

 ちいさくうなずく。

「布団の中にいると何も考えなくてもいいから」

 しのぶの目から何も伝わってこない。

 

 これまでも寝るのが好きな子はいた。

 寝ていると「死」に確実に近づいていくから…。

 

「寝ていて目覚めるのか嫌?」

「うん、ずっと起きないでいられればいいのに」

 小さな声が耳に届く。

 このふあふあとした感じはこれまでも何度か出会ってきた。

 みな、希死念慮を抱えていた。

 初回でこれ以上は深めたくない。

 その後は当たり障りのないことを聞い時間が経つのをも待った。

 

「そろそろ終わりだけどまた来てくれる」

 語尾が震えたのが自分でもわかる。

「はい」

 静かに答えた。

 嬉しさ半分、これからどうやっていこうかと不安な気持ち半分で終わりに告げた。