僕が鳥山明先生にお会いしたのは、2002年の冬のニューヨークでした。

 

当時、「少年ジャンプ」の英語版「Shonen JUMP」がアメリカで創刊されることになり、記念すべき第一号で「鳥山明 × 安床ブラザーズ」という特集が組まれました。そこで紹介される対談の取材と、創刊に向けた記者発表など、3日間ほど行動を共にさせていただきました。

 

僕は、「Dr.スランプ アラレちゃん」「ドラゴンボール」世代ですから、それはもう奇跡のような時間でした。皆さんと同じように鳥山明さんの描く魂のあるキャラクターや、絶妙なバランスの乗り物など、漫画だけでなく"イラスト"にも本当に刺激を受けておりました。

 

行動を共にする間、とても気さくに話をしてくれる鳥山明先生に僕は感動しっぱなしでした。会話はとうとう僕の趣味であるイラストにまで広がり…。「見ましょうか?」と、僕が持参したスケッチブックを見てくれました。車を描いたイラストで手を止めて「実は僕は人の絵を見るのが苦手なんだけど(笑)栄人くんの絵は線が綺麗ですね」と褒めてくれたのです。

 

記者会見でも、女性記者が「ドラゴンボール」に関する質問をあれこれ投げかけるものの、「もう年々も前に描き終えた作品なので、あまり覚えていません…(笑)」と、本当にお答えにならず、そんな姿勢がとてもユニークで偉大に見えました。

 

僕がサインをいただいた際にも、「栄人くん、気に入っているキャラクターは?」と聞いていただいたので、「子供の頃の悟空と、その頃のブルマです」とリクエストすると、サインの隣に"悟空"をサラサラと描いていただき感激したのですが、一方、"ブルマ"は「描き方を忘れちゃったな…」ということで、ご自身の単行本を見ながら描いてくれたことが思い出深いです。

 

別れる際には、「これからは絵本を描きたい」とおっしゃっており、まだまだ作品作りを続けていくのだというそのパワーからたくさんの刺激をいただきました。

 

漫画、アニメ、ゲーム…

作品を通して、文字通り日本から世界を繋いでこられた鳥山明先生。

世界の平和にまで大きな影響を与えてこられたのではないでしょうか…。
本当にありがとうございました。

 

ご冥福をお祈りします。