最近、映画業界ではあの人気映画"マトリックス"シリーズの待望の新作「マトリックス4」(Matrix: Resurrections)が話題となっております(早ければ全米公開は年内のようです)。
監督・脚本は前作に続きラナ・ウォシャウスキーです。
僕は以前、ラナさんと妹のリリーさんと共にドイツでお仕事をしたことがあります。もう7年以上も前の話になりますが、あの時の仕事は今でも鮮明に覚えています。
ある日、僕のパソコンに怪しいメールが1通届きました。
その内容には「ウォシャウスキー監督の代理の者だが、是非インラインスケートとワイヤーアクションの新しい可能性を作りましょう!」というものでした。
マトリックスシリーズの大ファンな僕にとっては冗談のようなお話でしたが、メールだけでは信用もできず、一先ずスケジュールと共に「興味はある」と返事をしました。
すると、「Top Secret」と書かれたプロジェクトの詳細と契約書と共にエアチケットが送られてきたので、好奇心に任せて1週間という約束で契約を交わし、僕はドイツのベルリンへと飛びました。
ベルリンの空港でスタッフが待っていたことでようやく信用し、ホテルに到着後、さっそくマトリックスシリーズを手掛けたワイヤーアクションチームを紹介されました。さらに、ホテルから車で40分ほど離れた場所にある倉庫の中には既に完成した巨大なセットがありました。(もしも僕が断っていたらあのセットはどうなってたのだろうか…)
ウォシャウスキー監督とも合流し、初日からとてもスリリングでエキサイティングな生活がスタートしました…!
まず、ワイヤーアクションが初めてだった僕は、ワイヤーを付けて止まった状態から大ジャンプする練習を開始。僕の腰に付いたワイヤーには最大7名が付き、僕のジャンプする動作に合わせてワイヤーを引っ張る仕組みです。空中でのバランスが難しく、その場でのジャンプからバク宙をマスターするのに1日使いました。(数時間でアザになるくらいお股も痛いからね…笑)
本来、ワイヤーアクションというのは演者は動き回りません。室内のスタジオなどで1アクションずつ撮影されることが多く、演者が動き回る…ましてや滑りながら連続したアクションに対応できるワイヤーシステムも技術もあの時はなかったのです。
つまり、あのプロジェクトのゴールは、その用意された巨大なセットを滑りながらワイヤーアクションが繰り返しできるようにする、というもの。
そんな挑戦が1週間で終わるわけもなく…。1週間追加され、2週間追加されて…。日本では赤ちゃんだった長男がどんどん大きくなり。。
パパはベルリンで何週間もマイナス20度の極寒生活を送りながら、ひたすらワイヤーアクションとお股の痛みと向き合いながら生活していました。
セットの中に設置した車に見立てた箱(合成で車になる)に直撃して、左腕の怪我で一時中断したりするうちに6週目…!行きつけのカフェとパン屋ができ、すっかり友達までできたころ、僕は「ワイヤーアクション×スケート」のマスターになっていた。
一番困難だったのは、ラナさんにもリリーさんにも共通した「完成図」が頭の中にあって、実際の動きをその理想像に照らし合わせることに時間を掛けたし、実際に苦労しました。だから、最後の撮影が無事に終わった瞬間、ラナさんにもリリーさんとワイヤーチームメイト達と大喜びしたことは一生忘れない景色のひとつになりました。
そして結局、8週間滞在したベルリンと友達に別れを告げて無事に日本に帰国しました。
帰国してしばらくはワイヤー無しで滑るのが怖くって…アスリートに戻るまでにリハビリが必要だったのは、あの期間は本当に没頭していた証拠だったと思う。
とにかく、毎日ピリピリしながらも広がる可能性にワクワクしながら一所懸命になれた時間でした。どんなプロジェクトも大なり小なり毎回色々と巻き込まれるのがプロスケーターという職業の面白いところでございます。(笑)
そんなプロジェクトの公開が許されたサンプル部分のムービーを公開しています!よかったらどうぞ👇
毎度映画界を驚かせてくれるマトリックスシリーズの最新作「マトリックス4」も非常に楽しみですね!