コロナ禍で起こった「渋谷ホームレス殺人事件」に着想を得て、
高橋伴明氏が監督した作品。
2022年キネマ旬報の日本映画第3位。
この事件は当時情報番組でも取り上げられ、
被害者がどうしてホームレスになったのか、
彼女の経歴等の取材をご覧になった方も多いと思います。
最初に書いておきますが、実際起こった事件と、
この作品では結末は全く違います。
2022年
昼間は自作のアクセサリーを売り、夜は焼き鳥屋で住み込みのパートとして働く北林三知子(板谷由夏)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で職と住まいを失う。新たな仕事もなくファミリーレストランや漫画喫茶も閉まっており、行き場のない彼女の目に留まったのはバス停だった。一方、三知子が働いていた焼き鳥屋の店長・寺島千晴(大西礼芳)もさまざまな問題に頭を悩ませていた。誰にも弱みを見せられないままホームレスとなった三知子は、公園で古参ホームレスのバクダン(柄本明)と出会う。シネマトゥデイより
映画の主人公三知子は50歳前だと思いますが、
実際の被害者は当時64歳の女性。
コロナ禍で失業し家賃も払えずホームレスになります。
ネットカフェも閉店していて泊まることが出来ず、
街の人の迷惑にならないよう、
終バスが行ってから彼女はバス停で眠ることに。
その辺りは事件と同じだと思いますが、
三知子が知り合う公園のホームレスたちとの交流は明らかに脚色。
特に「バクダン」と呼ばれる男性との出会いが、三知子の運命を変える。
柄本明が演じるこの老人。
若い頃は三里塚闘争に参加したり、歴代の総理を叩いたり、
明らかに左派の男。
でもこの作品の中に過去の左翼運動を取りいれた理由は何故なのか。
(高橋監督は早稲田大学闘争に参加して大学を除籍)
コロナ禍の政府の政策に不満で、
実際に起こった悲惨な事件と、昔の学生運動を結びつけたのかな~
それでも映画自体はとても興味のある作品でした。
ただ、実際は冒頭の部分が最後の事件と繋がるはずなのに、
映画では違う方向に持って行かれてます。
私はあのまま犯人が目的を達する終わり方が良かったと思います。
因みに、実際の事件の犯人である40代の男性は、
映画の公開前の保釈中に飛び降り自殺していて、
事件自体はあっけなく終わってしまいました。
何とも言えないモヤモヤが残り被害者が気の毒で仕方がない事件でした。