ドラン監督の話題作だったと思いますが、世間の評価がイマイチ。
でも俳優陣に釣られて鑑賞
2016年
劇作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)は、家族に自分の死が近いことを伝えるために12年ぶりに里帰りする。母マルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好物をテーブルに並べ、幼少期に会ったきりの兄の顔が浮かばない妹シュザンヌ(レア・セドゥ)もソワソワして待っていた。さらに兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)とその妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)も同席していて……。シネマトゥデイより
ルイが12年ぶりに帰郷した理由は家族たちにはっきり語られてはいません。
彼が家族に永遠の別れを告げに来たのです。
ところが、この家族は彼が帰省してもずっと不穏な空気。
特に皮肉屋の兄アントワーヌは怒ってばかりいるのです。
アントワーヌはセリフの中で、「仕事でも扱いにくい人間とされている」とは言っていますが、
おそらく封鎖的な田舎で、ルイのことで周りから責められたりしたのでは
それが弟に対する怒りの塊になって残っているのだと思いました。
ルイは皆の前で、「言いたいことがある」と話しだしますが、
それを打ち消すかのように、皆が当てもないことで騒ぎ出す。
彼は中々本当のことが言えない。
でも全員では無いにしろ、気づいていたのだと思います。
ルイの表情は決して明るく無いのですから。
彼は家族に愛されているのに、
死の前でも家族に労わって貰えない。悲しんでもらえない。
オープンングとエンドの音楽が、この作品の内容を物語っています。
本来は世の中で一番大事なはずの家族。
でもルイには「家は救いの港では無い」のです。
兄嫁役のマリオン嬢、しっかり者の役しか観て来ませんでしたが、
今回の大人しい妻は私は初めてでした。
劇中、兄の罵り声ばかり聞かされうんざりしますが、
食事の場面で妹に「笑っている顔が素敵よ」と言われるカッセル氏。
彼の笑っている顔、本当に可愛かったです。
もちろん、ウリエル氏の美しさにもうっとりでした。
ルイがこの家族を思う気持ちがじんわり伝わってくる作品でした。
でも彼の本当の気持ちを口に出して聞けなくて終わってしまい残念。
でもそうすることで切ない余韻が残るのでしょうね…