我が家の子供たちは3年生と年長だが、まだサンタの存在を信じているようだ。

夢のない子供だったわたしからすると、サンタという顔も見たこともない存在からその時最も欲しいおもちゃがもらえるだなんて、素敵なことだと思っている。

ママ友のひとりに「サンタなんて信じさせて何の意味があると思っているの?」と考える人がいた。

みんながクリスマスに子供たちに何をプレゼントするのか話しているなかで、「なぜクリスマスに、子供にプレゼントをあげなければいけないのか」「テレビや幼稚園でクリスマスにサンタの演出をし、プレゼントを渡す映像や経験をさせるのは困る」と言う。


みなぽかーんとしてしまったがママ友は止まらなかった。


「あんなふうに子供を洗脳してどうするのか」

「企業がモノや食べ物を売りたい戦略に騙されている」

「それに何も考えずに子供にウソをついてサンタなんて存在しないモノを信じ込ませる親が信じられない」

「サンタの存在を信じさせている親はただのウソツキ」


あれよあれよとたくさんの言葉が出てきた。

ママ友たちは、「家庭それぞれいろんな考え方があるからねー💦」などと各家庭それぞれの考え方があるんだから、お互いそんな気にせずにいましょうよ、と宥める。

「じゃあ、みんなはサンタとかプレゼントだとかご馳走だとかは、やらないんだよね?」とママさんは言った。

「そうやって普通の人たちがクリスマスだって騒ぐから、サンタなんていう悪い習慣がなくならないんだよ」と。


「別にテレビや幼稚園でクリスマス演出があっても、よそはよそ、うちはうち、ってことで自分の子供には自分の家のあり方を見せていけばいいんじゃない?」とあるママ友が言った。

「それだとうちの子供だけがプレゼントやご馳走がなくて可哀想」だという。

「周りがクリスマスに浮かれてサンタやらプレゼントやらで盛り上がっているなか、ウチだけそうじゃない。ウチの子が正しいのに、親の自己満足でサンタというウソを信じ込まされている子供が楽しんでいる。」「みんなで一斉にサンタなんていう悪習慣をやめるべき」とママ友は言った。


なぜそんなにサンタを毛嫌いするのかわか、なかったが、幼稚園のクリスマス会のお知らせに「宗教的な意味合いなど、特別な意味は含まれていません」と大きく書かれている理由が少し理解したような気がする。


そのあとも、「サンタなんていないって子供に言った?」「プレゼントなんて用意していないよね?」など、会うたびにママ友たちに聞くので、だんだんと他愛のない、当たり障りのない会話や挨拶をするだけになってしまった。


信念があるのは素晴らしいことだと思うが、他人に個人の信念を強要してはいけないと思う。

しかも、同じ幼稚園に通っているご近所のママさん、というだけの存在には強要することはとても危険だと思った。



わたしはしたのきょうだいたちにはクリスマスプレゼントを用意してきた。

もちろんサンタも信じさせていた。

寝てる間に用意して枕元におく。

朝目が覚めると高揚した顔でこれをもらった!あれをもらった!!と大喜びする姿が忘れられない。

サンタがいないと気づいたその日は必ず訪れる。

でも、それでも、「サンタを信じさせてくれてありがとう」とお礼を言われた。

「あのとき、あの瞬間のワクワクとドキドキは何事にも変えがたい経験だったから」と言った。

子供の時にしか感じられない感動と興奮があった、といまだに話す。

サンタという魔法が解けたあとも、わたしはしたのきょうだいたちにプレゼントを渡し続けた。

今度は、起きている時に。

わたしから、と手渡した。

それでもとても嬉しかったと言った。

そして大きくなり、自立し、お金を稼ぐようになった時、学校に通いながらアルバイトをし、生活費を稼ぎながらプレゼントを用意するわたしを想像したと言う。

笑顔で、何でも欲しいものを言っていいよ、とプレゼントを用意してくれたわたしの顔が思い浮かぶのだと。

親は絶対に買ってくれないゲーム機や複数のゲームソフト、カードゲーム箱買い…。

数万単位でかかるプレゼントを欲しいというままに用意した。

バイトして家賃と生活費を賄いつつ、節約生活をしていた。

自分の毎月の食費が1万円ほどだった。

年に一度のクリスマスや誕生日はしたのきょうだいたちには喜んで欲しかった。


子供の時にしか感じられないドキドキとワクワクは、その時を通り過ぎたらそんなに感動できないかもしれない。



いま、わたしの子供たちはクリスマスや誕生日を待ち遠しく感じてくれている。

親はその気持ちを作ってあげる手伝いをしているに過ぎない。

もちろん、サンタなんてものはない。と現実的な考えで育てるのが悪いわけではない。

そこは本当に『ひとそれぞれ』。

わたしは、自分の子供たちが楽しそうに笑って楽しめるなにかをひとつでも多く演出してあげたいだけ。


さぁ、今夜はクリスマスイブ。

子供たちのリクエストのメニューとケーキを用意して、全力でサンタさんを待つ子供たちを落ち着かせて眠らせるという大仕事を達成させる日である。


我が家のサンタは親だけど、大きくなった時、親が子供を想う気持ちがサンタクロースだったと感じてくれたらいいなと想う。