フランスで先週行われた国民議会選挙(下院、定数577)の決選投票では、左派連合が182議席で首位につけ、マクロン大統領率いる中道与党連合は168議席で2位、第1回投票で得票率首位だった右派「国民連合(RN)」は143議席で3位に終わった。

 

 第1回投票を終えてRNが決選投票で過半数議席を獲得することへの危機感を抱き連合体制を築いた左派諸党とマクロン大統領率いる与党連合にとっては、フランス独自の選挙制度にかんがみ、決選投票において三つ巴が予想される各選挙区での候補者辞退を通じて協調したことが寄与した。この結果、三大勢力はいずれも多数議席を獲得できなかったため、今後は連立体制づくりを巡って様々な駆け引きが行われるとみられる。左派・中道陣営の結束力に疑問があることや、政策において左派・右派が協調する可能性もあり、当面は宙吊り議会が続く懸念もある。

 

 

 一方、半年交代制である欧州連合(EU)議長国を7月から務めるハンガリーのオルバン首相は、ここにきてウクライナ、ロシアを訪問し、それぞれ首脳会談に臨んだ。北大西洋条約機構(NATO)が米国に足並みを揃えて反ロシア体制を維持する中、ウクライナ・ロシアの紛争解決への糸口を探るべく両国首脳との和平協議に臨む国家首脳は、2022年春のトルコのエルドアン大統領以来はいなかった。

 

 その後オルバン氏は北京で習近平国家主席と会い、会談後の共同会見では、習氏が世界の大国にロシアとウクライナの直接対話を支持するよう呼びかけた、と中国中央テレビ(CCTV)は伝えた。オルバン氏は、習氏によるブタペスト訪問からわずか2カ月後に再び会談を設けた理由について、「中国がロシア・ウクライナ戦争で平和への条件を定める上でカギを握る大国」であるためだとSNSのXへの投稿で記した。

 

 

 オルバン氏の動きはウクライナ支援を巡る欧州の結束を脅かす、とする批判の声がEUでは多い。しかも米国で今週NATO首脳会議が開かれるタイミングでは、バイデン米大統領がウクライナへのさらなる支援を表明することで戦闘激化の様相を呈している。こうした中で同会議に参加するオルバン氏による平和を訴える唯一の声は払しょくされているようだ。

 

 それでもオルバン氏にとって米国には味方もいる。11月の選挙で大統領の座に返り咲く可能性のあるトランプ氏だ。トランプ氏は、再び政権を握った際にはウクライナ戦争をただちに収拾させると述べている。前政権時にはNATOにおける米国の負担の大きさやその存在自体に疑問を示していたトランプ氏だけに、EUでは米大統領選の行方次第で状況が一変する可能性への警戒感がある。一方、ロシアのプーチン大統領は、トランプ氏の発言について、具体的なことはわからないものの注目に値すると明らかにしている。

 

 

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来の状況を巡り、退役米陸軍大佐(トランプ政権時の国防省顧問)のダグラス・マグレガー氏や元国連武器査察官のスコット・リッター氏などは、兵力や対応力に勝るロシアが前線では一貫して優勢であり、戦闘が長引くほどウクライナへのダメージは大きくなる、と伝えている。

 

 先週、上海協力機構(SCO)がカザフスタンのアスタナで開催された。最終宣言では「SCOは新たな民主的かつ公正な政治的、経済的国際秩序の創生における役割拡大」に取り組むほか、「SCO内の交流がユーラシアの新しい安全保障の構造を形成する基盤となる」ことに合意していることが示された、とスプートニクは伝えた。

 

 

 SCOにとって今後のロードマップには社会的、経済的統合や国際輸送ルートの開発が含まれる。さらに肝心なのは軍事、金融面で、ユーラシアにおける「外部勢力による軍事的プレゼンスの段階的縮小」と「西側主導の経済的メカニズム(の替わりとしての)決済における国家通貨の利用拡大、独立した決済システムの確立」を掲げている。

 

 現在のSCOはユーラシア大陸の面積の80%、世界の人口の40%、GDPの25%を占める組織であり、そのシェアは上昇している。中国政府の統計によると、2022年の貿易は8兆ドルを超えたという。

 

 

 ロシアのアリハノフ産業貿易相は、2023年のロシアとSCO加盟諸国との貿易額は前年比25%増の3330億ドル(約53兆2800億円)だったと述べた、とタス通信は伝えた。またRTによると、ロシアによるSCO加盟国への直接投資は102億ドルに達したほか、ロシアにも同程度の金額が流入したとアリハノフ氏は明らかにした。

 

 SCOには今回ベラルーシが加盟し、中国、インド、イラン、カザフスタン、ロシア、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタンとの10カ国体制になった。中国、インド、イラン、ロシアが加盟するBRICSとともに、SCOは多極化における様々なノードの一環を担っている。

 

 

 ウクライナ侵攻後に欧米や日本などから経済制裁措置を課されているロシアだが、世界銀行グループが集計し、毎年7月に発表する人口1人当たりの国民総所得(GNI)を用いた国別の所得水準分類において、同国は「高中所得国」から「高所得国」へと格上げされた。

 

参照:

New Popular Front shocks world with French election win (youtube.com)

Scott Ritter: Russia is DEMOLISHING Ukraine's Military and NATO's Disaster is About to Get Worse - YouTube

MEETING WITH VLADIMIR PUTIN: Hungarian PM Viktor Orban on Peace Negotiations and Ukraine War (youtube.com)

Xi Jinping calls on world powers to help Russia, Ukraine resume direct dialogue | AP News

Pepe Escobar: Why the SCO Summit in Kazakhstan Was a Game-Changer (sputnikglobe.com)

Why the chaotic French election is our problem too | Responsible Statecraft

Russia and SCO trade hits record level – media — RT Business News

世界銀行グループ加盟国の所得水準別分類-2024年~2025年 (worldbank.org)