7月4日は東京都議選の投票が行われる。共同通信は1日、現有46議席の地域政党「都民ファーストの会」の巻き返しを各党が警戒している、と報じた。議席数の大幅減が予想される都民ファーストだが、五輪の無観客開催を主張していることや特別顧問である小池百合子都知事の入院を理由に支持率は上昇に転じており、自民党や立憲民主党が割を食うことが懸念されるという。

 

さらに、自民党にとっては安倍晋三前首相が月刊誌の対談で「反日的な人が五輪に反対しているようだ」と批判したことの影響も予想される。読売新聞の全国世論調査によると、東京五輪「中止」が5月上旬には59%だったものが6月上旬には48%になった。これは主要メディアがあくまでも開催という論調に転じたことも大きいと思われる。

しかし、開催の前提の一つである、国内のワクチン接種の推進をめぐっては、ここにきてワクチンの供給不足を理由に新規予約を停止する自治体が続出している。また、ウガンダから来日した選手団に陽性判定者が含まれた際の対応の不手際など、「安心、安全」という標語とは裏腹に、不安を招くような事態が相次いでいる。

 

新型コロナを巡っては、高齢者を中心にワクチン接種が進んだことは好材料だ。しかし、オリンピックの開催が近づくにつれて、感染力の強いインド型変異株(デルタ株)の拡大が警戒される。この点では、イギリスやイスラエルなど世界でもワクチン接種が進んだ国での感染拡大からも目が離せない。

五輪大会については、すでにサモアが不参加を表明している。五輪決行の方針をあくまでも貫くとしても、現実的には参加選手がどの程度東京に集まるかがいまだに見通せない状況だけに、無観客だけでなく、中止というオプションを自ら放棄することは避けた方が賢明だろう。米国のジョー・バイデン大統領はオリンピックに際して来日しない方針のようだが、このことについては、あえてコロナ禍でのオリンピック主催という難題に直面する友好国にとって、中止のオプションを限定するような対応を避けている、ととらえることはできないものだろうか?

 

昨年上半期には株価急落の局面もあったが、当局が株価対策を徹底する決意を示したことも手伝って、今年2月には日経平均が3万円台を回復する局面もあった。ただ、業種別にみるとパフォーマンスはまちまちとなっているほか、この間の雇用状況は、低収入の非正規女性への影響が大きいことを示した。

こうした状況に鑑みると、菅政権が財政の健全化目標を維持し、自民党の財政再建推進本部も同様の提言を示すことには疑問が生じる。先月には、2020年春からのコロナ関連予算73兆円のうち、約30兆円が使い残されている、と報じられた。このうち個人向けに充てられたのは1人当たり10万円の一時金分の10兆円で、残り30兆円の多くは企業向けに使われたという。

緊急事態宣言の影響もあって個人消費が落ち込んだことは、日米の実質GDP成長率の推移にも反映されている。米国はコロナ禍で個人に計3回の一時金を支給しており、これが個人消費に好影響をもたらしたものと考えられる。

主要国がパンデミック対策として財政出動に乗り出す中、具体的な経済政策を示さずに緊縮財政を維持する政権には、経済政策面でも運営能力に疑問を感じざるを得ない。

 

異常気象の悪化によって気候危機への対策が急務となっており、パラダイムシフトが世界で求められている。日本は2030年までに二酸化炭素排出量の45%削減を達成目標にあげたが、米国はこれを自国同様の50%に引き上げるよう求めた。その米国の目標でさえも不十分だとの批判も聞かれるのが現状だ。

対策には石油、ガス、石炭など、産業革命以来の成長をけん引してきた化石燃料の利用を段階的に低減し、風力、太陽光など再生可能エネルギーの利用促進が求められる。これはグリーン経済への投融資拡大とともに災害対策の拡充、システム変化を促すためのセーフティネットの強化などがセットになることが求められる。

 

こうした大きな変化が促される状況の下では、東京都においても国レベルの方針転換を促すことが望まれる。この点からも、都議選では積極財政や消費税減税などを政策に掲げる候補者に票を投じたいところだ。