楽に1歩踏み出せるのは骨盤後傾
この写真のように、骨盤を前後に傾けてステップ動作をしてみてください。
同じ距離足を踏み出すとき、どちらがより楽に1歩踏み出せるでしょうか?
後傾の方が、よりストレスなく楽に出せた方が多いのではないでしょうか?
なぜ、楽に1歩踏み出せるのか?
股関節の可動域や腰椎の構造から考えてみます。
前提として歩行における重心の軌跡を見ておきます。
足を接地し、衝撃を吸収する際は重心の位置が最も低くなります。そこから、片脚で支える立脚中期になると重心の位置は最も高くなります。
この軌跡は、歩行周期で一連の流れで見ると波打つような形になります。
ペリー歩行分析 正常歩行と異常歩行:jacquelin Perry(著).医歯薬出版.2007,p26
歩行において、この波打つ軌跡が最小経路で移動することが理想的です。
つまり、楽に長く歩くためには重心移動の幅が少ない方が良いということになります。
例えば、普通に歩くのと上下に弾みながら歩くのでは、弾みながら歩く方が身体への負担も大きくなると思います。
この軌跡を股関節の可動域と腰椎の構造から考えます。
股関節の角度は骨盤の回旋によって変化する屈伸角度は変化します。
骨盤の回旋が有る時、股関節の屈伸角度は減少します。
また、回旋が無い時に比べてわずかですが重心の位置が高くなるとされています。
つまり、重心の軌跡がなだらかになります。(最小経路)
逆に、回旋が無いと、股関節の屈伸量が増加し、重心位置が低下します。
結果として、重心の軌跡は大きくなります。(最大経路)
この骨盤が回旋するためには、骨盤が後傾していることが条件になります。
そのため、最初にやって頂いたステップ動作では、骨盤後傾でのステップ動作の方が、楽に1歩が踏み出せるということになります。
効率の良い歩行
骨盤が後傾し、回旋することで、股関節が動く角度が減少し重心の移動が最小経路になるような歩行がエネルギー消費の少ない効率的な歩行だと私は考えています。
なぜ骨盤を後傾すると回旋しやすくなるのか?
ポイントとなるのが椎間関節の締りの肢位(closed pack position:CPP)と緩みの肢位(Loosed pack position:LPP)です。
腰椎が前弯することでCPPに、後弯することでLPPになります。
腰椎の動きは、そのまま骨盤の動きになりますので・・・
骨盤が前傾することでCPPに、後傾することでLPPになります。
CPPになると、椎間関節がロックされるため可動性が低下します。
LPPになると、椎間関節が緩むため可動性が向上します。
ただし、骨盤が後傾していれば良いというものではありません。
結論、どっちも大事です!
どっちも大事ということは、骨盤の前傾と後傾の切り替えこそが重要となります。
これを見てください。
エラスティックゾーンとニュートラルゾーンというグラフです。
このニュートラルゾーン内での前傾と後傾が理想的です。
過度に後傾すると、ニュートラルゾーンから外れた位置に来てしまいます。
そうすると、椎間板への負担が増加しヘルニアにつながります。
逆に、過度に前傾すると、椎間関節性の腰痛を引き起こします。
足と腰の関係
後傾でのステップでは、椎間関節がLPPとなり、脚を振り出す時に骨盤の回旋が出やすくなります。
結果として、支えている脚も回旋しアーチが挙上していきます。
アーチがある状態は蹴り出しに必須条件となります。
前傾でのステップも同じように考えられます。
骨盤が回旋しにくいことを考えると、アーチが低下したままになります。
アーチが低下したままでは蹴り出しが行えず、重心の移動が上下に大きくなるため、身体への負担が増加します。
足から考える腰痛予防
体を前屈と後屈をしてどちらに痛みや違和感がありますか?
伸展して痛い場合、骨盤が前傾で固定しやすく、アーチは挙上しにくい可能性があります。
同じことを足から考えると・・・
アーチが低下している場合は、椎間関節性の腰痛発生リスクがあるということが考えられます。
私は、普段の臨床からも、このようなことを考えて足を見ています。
あくまで予想なので、一致する所見があれば整形外科的テストと言われるものでしっかりと評価を行っています。
参考文献
1)jacquelin Perry(著),武田功(訳),ペリー歩行分析 正常歩行と異常歩行.医歯薬出版株式会社,2007
2)Tomas C.Michaud(著),加倉井周一(訳),臨床足装具学,医歯薬出版株式会社,2005
3)金岡恒治,成田崇矢(著),腰痛のプライマリ・ケア 腰痛と向き合う時の必携書,文光堂,2018