難聴には、いくつかの種類がありますが、
概して、「音を拾って識別する力」が健常者より乏しく、
リスニングができるようになるにはかなり苦労します。
学習初期には、
多聴と精聴の2要素に関して、精聴にウェイトを置いたほうが
一般的にはTOEICのスコアは伸びやすい、と言いますが、
これが本当に難聴者にも当てはまるのか、私はずっと懐疑的でした。
精聴が大事であることは言うまでもないのですが、
精聴に重きを置く、というのは難聴者に限っては(特に中等度以上の難聴者にとっては)
微妙かもしれない、と感じています。
普通の聴力が備わっている方であっても、
リスニングにはある程度の慣れと経験が必要になると思います。
(トレーニングなしで、いきなりクリアに聴き取れるようになる人は、
私の知る限り周りにもいません)
しかし、難聴者の場合、精聴しようと思っても、結構難しい、というか、
「そもそも聴き取れない音が多い」ので、精聴に重きを置いた勉強は、
限界があるのではないか、と感じます。(いくらやっても、成長した実感を持ちにくく
モチベーションも保ちにくい)
いろいろな勉強方法があると思いますが、
TOEIC初受験で下位2%であるL200点未満のスコアを取った私がかろうじて400超まで
引き上げて、最近英会話やリスニングを重点的に行ってみての印象は、
慣れるまでは、できるだけたくさんの話者の、いろいろな英語を聴いたほうが良い、
ということです。
とはいえ雑食は効率が悪く、
現実世界ではTOEICのようにクリアでスピードが安定したナレーターばかりではないので、
TOEICに焦点を合わせて、まずはスコアを上げたい、というだけなら、
聴く題材は絞っても良いと思います。
お手本のような(訛りや速度、聞き取りやすさの振れ幅があまり大きくない)、
テキストの音声をたくさん聴くのがいいと思います。
慣れないうちに、海外のニュースやポッドキャスト、インタビューの音声や首脳のスピーチを
字幕無しで聴いても、ちょっと遠回りすぎるというか、あまり効率が良くないのではと思います。
(経験上)
無駄になることはないでしょうが、ネット上にあふれている(Youtubeしかり)生の英語より、
よほどTOEICの実際の試験や対策本で使われている英語のほうが聞き取りやすく、
話題や語彙の範囲も狭いので、スコアアップ、
効率という観点からは、個人的には、
・ある程度量を聴くこと
・TOEIC対策本や公式など、聴き取りやすく実際の試験に活かしやすい素材にたくさん触れる
この2点を難聴の方にはおすすめします。
まずは、リンキングや英語独特のリズムに耳を慣らすこと、
前に戻らず、聴きながら状況を理解すること、ができるようになる必要があります。
TOEICに関しては、Part.3、4は問題文も読みながら耳をフル活用して正答を探していくことになるので
リスニングのスキルだけでなく読解スピードと瞬時に内容を把握する力、あとは言うまでもありませんが
集中力も必要です。(もっというと解けなかった問題は潔く捨てて、次に進む切り替え力も必要です)
つまり、TOEICリスニングは、リスニングスキルは当然必要ですが、それだけでは高得点を取れません。
不得意な部分は、得意な部分、あるいは「得意にできる」ことでカバーするのも戦略の一つです。
私は、リーディングスキルを徹底的に伸ばして、試験中はリスニングにできるだけリソースを振り向ける
ようにしています。(問題文をさらっと見て、音声を落ち着いて待ち構える時間を確保する)
あと、
振れ幅が少ない、とは言っても、
たとえば女性なのか男性なのか、あるいはシチュエーションによって、
Yes, I do.
や
Not that I know of.
など、
よく出てくる応答でも、抑揚、上げ下げが違ったりすることも多々あるので、
同じセンテンスにしても、パターンをたくさん脳内に蓄積するのがいいと思います。
私は、丸暗記、まではいっていませんが、
内容と、英文をほぼそのまま頭の中にストックしています。
もちろん、この方法だと、聞いたことのあるセリフであっても、ストックした音声と
一致した話し方でないと取りこぼす可能性があるのですが、
一見遠回りに見えてこの方法が一番、難聴者の場合は経験値を上げやすいように思います。
本来、学習初期から勧められるディクテーションも、
難聴者の場合は、このくらいの状態になってから、やるといいと思います。
初期にやっても何十回聴いても多分書き取れず嫌気が差すと思うので。
ただ、Part.2のように短いものでいいので、
何が聴き取れないのか、違う音に聞こえてしまうのか、は傾向としては掴んでおいた
ほうが良いので、Part.2ベースでディクテーションを短時間試してみるのは
有効だと思います。
おそらく、冠詞とか、Check it outがチェケラと全然違う音に聞こえるとか、himやherのhは聴き取り
にくいとか、傾向が見えてくるはずです。で、これは難聴者でなくても最初のつまずき
ポイントはみんな同じなのであまり気にする必要はないと思います。
Whenって言ったの?Whereって言ったの?とかも難聴者じゃなくても聞き分けにくいようです。
Did youはディドユーではなくディジュッって感じですし、
As well asなんてギュギュッと短くなって一瞬で発音されますし。
アズ・ウェル・アズなんて切って言いません。
これ、日本人だったら発音悪いとかもっとはっきり喋れとか滑舌悪いとか言われそうなレベルだよね、
というのが英語では普通です。
そして、ある程度蓄積ができて慣れてきたら、
オンライン英会話などで(特に難聴者はヘッドホンだとハンデが帳消しにまでならなくても
結構楽になる)経験を積み、スピーキングに慣れるのが有効なのではないか、と
体感している昨今です。
スピーキングができるようになるには、自然な応答、そしてフルセンテンスでの正しい答え方、
を押さえていくことになるので、結果的に文法、リスニングスキルの向上にもつながるように思います。
返し方を理解している=Part.2やPart.3での、想定できる反応のバリエーション、こういう表現が出てくるかも、と返答が予想できるということなので、
英会話は一石二鳥以上の効果が得られそうな気がします。
難聴者は、子音の聴き取りが苦手な方が多いと思います。(自分もそうです)
英語のように子音のバリエーションが多かったり、その違いもとても微妙なので
(アなのかェアみたいなアなのかとか)
聞き分けが難しく、日本語のように必ずしも母音が残らない音があることや
無声音があることなど、難聴者が習得する&聞き分けるには厳しい要素が多いです。
難聴でリスニング満点を狙うのは正直厳しいと思いますが、
それでも、ある程度までは、伸ばせる可能性は十分あると思います。
プライオリティサポートでの受験もできますし、
英検にせよ、国連英検にせよIELTSにせよ、受験に際し支援が得られる場合があります。
自分の最も苦手な領域、かつ、人が当たり前にできて自分ができない、
努力でカバーできない分野で苦労をしなければならない、苦しまなければならない、というのは
正直しんどいです。
私自身も、イヤホンで聴き取れるようになったり、英会話が、オンラインではできるようになった
ところで、実際に海外旅行とか、ビジネスで、会話がスムーズにできるようになるわけではないのに
一体何のために勉強してるんだろう?と思うことも多々ありますが、
それを言っても仕方ないというか始まりませんし、
希望的観測ですがいつか難聴が治せる世の中になったとして、
それから英語や他の語学を習得しようとしても、歳を取るほど難しいと思うのですよね。
あと、たしかにリアルな会話は難しいかもしれませんが、
それでも英語がわかるようになったら、すごく嬉しいものです。
あ、映画で今こう言った、とか。
そういうご褒美のような経験を楽しみにできる人は、きっと伸びると思います。
もし何かのきっかけでこのブログに辿り着いてくださった難聴の方がいらっしゃったら
お互い、頑張りましょう。
lとrが最初から聞き分けられなくてもなんとかなります。
私も、まだまだ頑張ります。