Come and pick me up.「いま」の旅人① | I wanna be your light.

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🌙 「いま」の旅人

 〜PARALLEL REALITY ①


むかしむかし、


星と星のあいだに、
「いま」という名前の小さな国がありました。


その国には、あるひとりの名前の

ない旅人がいました。

ある晩、旅人は、丘の上で空を見あげて言いました。


「わたしの人生って、たったひとつの物語なのかな」


すると、風がさらさらと草をならし、
どこからともなく小さな声が

聞こえました。

「いいえ、あなたの物語は、

ひとつなんかじゃありませんよ」


声の主は、光の服を着た

小さな案内人でした。
案内人は旅人の手をとり、

夜空にぽっかり穴をあけると、

向こうには、手が届かないほど

天井が高い図書館がありました。


どこまでも、本、本、本。

「ここはね、あなたのため

だけの星の図書館です。
あなたのすべての人生が、

本になって並んでいる場所です」


案内人は、一冊の本を

抜きとって見せました。
そこには、静かに暮らす

あなたの物語が書かれていました。


つぎの本には、

遠い国へ旅立つあなた。


また別の本には、

大切な誰かと出会い、

たくさん笑ったり、

泣いたりしているあなた。


どの背表紙にも、ぼんやり

「あなたの名前」が光っています。


案内人は微笑んで、

小さな栞を取り出しました。

透明で、ほんのりあたたかく

光るしおりでした。


「これがあなたのいま

気持ちです。
このしおりがはさまれたページが、
あなたが『現実』と呼んでいる

ところです」


その瞬間、図書館の灯りがふっと消えました。

かわりに、目の前に一枚の「絵」があらわれます。
旅人が丘の上で空を見あげている絵でした。


ぱちん。
小さな音とともに別の絵が

現れます。

少しだけ顔を上げる旅人の絵。


また、ぱちん。
今度は笑っている旅人の絵。


ぱちん、ぱちん、ぱちん……

ものすごい速さで、無数の

「旅人の一瞬」が入れかわります。


どの絵も、ほんのすこしずつ

違っています。


案内人がささやきました。

「あなたはね、じつは毎瞬毎瞬、
こうしてたくさんの

あいだをとても速いスピードで

移動しているのです」


「あなたのしおり(いまの気持ち)

が、『次はどの絵を見たいか』

を決めているんですよ」


旅人は自分の胸に手をあててみました。


そこには、透明なしおりと

同じあたたかい光が

ぽうっと灯っていました。


その光が少しだけ不安で曇ると、
不安そうな顔の旅人の絵に、

ぱちんと切り替わります。


その光が、

「それでも一歩進んでみようかな」

と小さくふるえると、
すこしだけ足を前に出した

旅人の絵につながります。


「ね?」と、案内人は言いました。


「外の世界を無理やりねじまげ

たのではなく、あなたの中の光が 『どの絵を続きとして見るか』

を選んでいるだけなんです。」


「だから、あなたの気持ちが

やさしく変わると、
あなたの見る世界も、

すこしずつやさしく

変わっていきます」


旅人はゆっくりとうなずきました。
自分の胸の光を、ぎゅっと握りしめます。


つづく…