- 「Tale of the Star of Light, Essassani」
- 〜1. 光の星
オリオン座の彼方、光の星・エササニの
人々は言葉ではなく、心と心で直接会話をしていました。
誰かがうれしいと、離れた仲間の胸の奥まで
同じあたたかさがふわっと広がります。
誰かが悲しいと、仲間の
「大丈夫だよ」
の想いが悲しみを静かな波のように
溶かしてしまいます。
その星に彼は暮らしていました。
彼はとても好奇心が強く、
空を流れる光の船を眺めては、
「この光のむこうにはどんな世界があるのかな?」
と、胸を高鳴らせていました。
ある日、彼は心の中でつぶやきました。
「僕の一番のワクワクが、
どこへ導いてくれるのか知りたい」
その瞬間星全体が瞬きひとつの光の道が現れました。
淡いブルーと金色の粒子が細い川のように
空を流れはじめました。
「それが、君の道だよ」
彼が光の道にそっと足を踏み出すと、
足元に水面のような光が広がり、
心の中の「好き」や「ときめき」が
鮮やかな色となって道の両側に咲いていきます。
道すがら彼の心は何度も迷いました。
「このワクワクの道を歩いていて
本当に皆の役に立てるの?」
迷うたびに道が揺らぎ、足元の光が弱まります。
彼が胸に手を当てて、
「本当のところ僕はどう感じている?」
とたずねると胸の奥に温かさが戻り、
足元の光がまた少し強くなりました。
やがて光の道の先に青く丸い星が浮かび上がります。
初めて見るその星に懐かしい感覚を覚えました。
「ここは?」
「地球だよ」
星全体の声が響きます。
「地球には自分の光を忘れた人たちがいる。
心の奥にエササニと同じ光があるのに、
思い出すのが彼らには少しむずかしいんだ」
彼は地球の映像を見ています。
笑いあう人。
泣いている人。
その中の誰かがふと夜空を見上げて、
心の中で静かにつぶやきます。
「本当は私の中にもきれいな光があるの?」
問いかけた瞬間、彼の中のワクワクが
強く明るくなりました。
「僕、この人に光を届けたい!」
その時、形のない光のたまごのような
小さな船が現れました。
船には彼の「うれしい」「楽しい」「大丈夫」
のワクワクがぎゅっとつまっています。
彼は船に乗り地球へ向かうことにしました。
自ら光の粒子となり、そっとその人の心の奥に
届けるのです。
「どうやって僕だと伝えるの?」
星全体の声が答えました。
「伝えなくていいんだ。
君のワクワクが彼の中の光を揺らすんだ」
「彼は夢の中やふとしたひらめきの中で
自分の光を思い出す。
その時感じるあたたかさが君そのものなんだよ」
彼は少し考え、静かにうなずきました。
「それならできるかも!」
彼はいちばんのワクワクを思い浮かべました。
誰かの物語に小さな光を灯すこと。
ひとりきりだと思っている誰かに、
「あなたの中の光は消えていないよ」
とそっとささやくこと。
その想いが満ちたとき、
光のたまごはひと筋の流れ星になって、
地球の夜空をすべり落ちていきました。
地球のどこかの窓辺で空を見上げていた人が
流れ星を見つけます。
胸の奥がほんの少しあたたかくなりました。
「なんだかだいじょうぶな気がする」
その人は小さなノートをひらいて、
ずっと胸の中であたためてきた物語の、
最初の一行を書きはじめました。
その瞬間、エササニの空で何千もの光の粒が瞬きました。
彼だけでなく、たくさんのエササニの仲間たちの
それぞれのワクワクが、地球上のたくさんの
心とつながっていたのです。
「あなたがいちばんワクワクすることは、
自分だけのものではない。
まだ自分の光を忘れている誰かへの、
遠い星からの合図でもある」
そして今もまた、
地球で誰かが星を見上げ、
胸の中でつぶやいています。
「この世界は本当はもっとやさしいのかも」
その問いかけが生まれた瞬間、
またひとつエササニの空に新しい
光の道がふわりと現れたのです。
つづく…
