
今年になって担当部門が変更になったのを機に、取引先の工場がある静岡へ何度か足を運ぶようになった。静岡は、小学校6年から高校卒業までの7年間を過ごした、自分にとっては第2の故郷である。日帰りで済む業務ではあるのだが、あえてお昼の時間に到着する新幹線を選び、毎回入りたくても行列を成している駅ビルの「丸子のとろろ汁」を、わがまま言って取引先の担当者に予約を入れてもらった。結果としてランチのおねだりになってしまったのは申し訳なかったが、念願のとろろ汁を、生しらすと合わせて麦飯のお替わりもつく「駿府」という定食で、堪能させてもらう事とする。東京のそれとは少し違う味噌のダシがきいたとろろ汁が、一口で優しく口の中に広がる。美味いなぁ~!イメージ通りの麦飯の食感も噛みしめながら、思い切り掻き込む。


一番の出張目的であった?とろろ汁に満足した後、所々に微かな記憶が残る街並みを、車窓から眺める。心無しか、車の行き来も東京に比べて穏やかかなと感じていると、取引先の社長が問わず語りに地元への想いを話し出した。「世界遺産に富士山が認定されて、対象地域が三保の松原まで拡げられたのに、海外からの観光客のほとんどは、静岡を素通りして初日から山梨に泊まるそうなんですよ。」「ヘェ~何故ですか?」「どうやら山梨の方が、観光ポイントを上手にまとめ上げてアピールしているようで、楽しそうに見えるんでしょうねぇ。赤字経営の続く4年前に出来た静岡空港しかり、どうも静岡県人は商売が下手なようで。」温暖な気候と豊沃な土地に恵まれた静岡県人は、特別の苦労なく、ある程度の生活水準が保たれているのが一般的で、競争意識が薄い事から?著名な政治家や演歌歌手に見られるような、所謂“成り上がり”が少ない。まあそれだからこその居心地の良さなのでは、あるのだけれど。それにしても、今日の富士山は美しい。
帰りの新幹線を新横浜で途中下車して、甥っ子の病院に向かう。この前のお伊勢参りの写真を御守り代りに渡したら、中の1枚に駅弁が写っているのを目ざとく見つけ、「おじさんはなぜ?駅弁の写真を撮ったのか?俺もこの美味そうな松坂牛弁当が食べたい!」と言っているという。失敗した。。時間を惜しんだ弾丸ツアーだったので、ようやく昼飯にありついたのが、夕方の近鉄特急の中。駅の売店で購入した松阪牛の「モー太郎弁当」は、器が牛の顔の形で蓋を開けるとなぜか“ふるさと”のメロディが流れるユニークなものだったので、記念にと思い写真に残した。そのまんまを弟経由で甥っ子に伝えると納得してくれたよう。退院したら松坂のみならず、神戸も近江も米沢も、牛牛詰で食わしてやるから早く良くなってくれ!と、改めて心に思う。
帰宅して何気なく家人と見ていたバラエティ番組で、サッカーの武田修宏が座右の銘としていい事を言っていた
『人生“思い通り”という道はない』
その通りだなと思うと同時に、だからこそ人は、草木をかき分け石ころ蹴飛ばしながら、自分自身で新たな道を切り開いてゆくべきなのだと心に誓う。「願い通り」「望み通り」の道を、自らの人生に通すかどうかは自分次第。道なき道を進むその先には、きっと。。。







