R元司法試験再現経済法・公法系 | ついたてのブログ

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弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

5振復権後1振受験生の再現答案です。

諸賢にお見せするレベルではないかもしれませんが、

せっかくなので公開することにしました。

 

経済法第1問

 

B及びJの行為は不当な取引制限(2条6項)に当たり、3条後段に違反しないか。B及びJは穀物貯蔵施設の建設を請け負う事業者であり、競争関係にあり、「事業者」に当たる。

第1 Bについて

1 行為要件

(1) 「共同して」とは、意思の連絡をいう。

7社は平成28年1月30日の会合で本件合意をしており、本件合意どおりの内容の意思連絡が認められる。よって、「共同して」に当たる。

(2) 7社は、本件合意に従って、特定農業施設工事の入札を行うことになり、事実上事業活動を相互に拘束する。よって、「相互にその事業活動を拘束し」に当たる。

2 「一定の取引分野」とは市場をいう。

本件合意は特定農業施設工事の入札取引を対象とし、特段の事情がない。よって、市場は同入札市場に画定される。

3 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形成維持強化することをいう。

7社は、上記市場に存在する10社の中で多数を占める。もっとも、3社は、工事の規模や技術力の点から受注できると考えた特定農業施設工事の入札に指名された場合には、積極的に落札を目指して低価格で入札を行おうと考えていた。よって、3社は一定の牽制力を有する。しかし、3社の主たる事業分野は農業施設以外の建設工事であり、穀物貯蔵施設の建設能力は相対的に低かった。また、3社は、自社が受注を希望しない場合には7社に協力するつもりであった。よって、3社は有力な牽制力足りえない。したがって、7社は市場支配力を形成維持強化するといえ、「競争を実質的に制限する」に当たる。

4 以上より、Bの行為は3条後段に違反する。

5 平成30年6月15日の会合でCが受注予定者と決したところ、B社の担当者は、「今度は本気で勝負する。値下げ競争になっても必ず仕事を取る。」、「二度とこの会合には戻らない。」と発言しており、本件合意から離脱する意思を表明した。実際に、Bは第5回入札において落札した。そして、6社は、同年8月1日、本件合意のメンバーからBを除名することを決定し、Bの離脱を了承した。予定価格に対する入札価格の割合も、第1回から第4回入札までは9割以上と高いのに対し、第5回入札では7割と明らかに低い。よって、違反する行為は同日になくなったといえる。

第2 Jについて

1 3社は、Aから特定農業施設工事の入札について競合事業者が集まって話合いを行うので出席するよう持ちかけられたが、言葉を濁して出席することを見合わせた。よって、7社と3社間に明示の意思連絡はない。

しかし、Aは、特定農業施設工事の発注が行われるたび3社に指名の有無と受注の意思を確認し、協力が得られる場合には、3社に入札価格を連絡することとし、その方針を平成28年1月30日の会合でA以外の6社に伝えた。3社の側も、自社が受注を希望しない場合は協力するつもりであった。よって、7社と3社間に、特定農業施設工事の入札において、協力できる場合には協力する旨の意思連絡が認められ、「共同して」に当たる。

2 3社が協力するつもりであったのは、特定農業施設工事以外の分野の入札において競合事業者から協力を得たいと考えていたためである。しかし、7社の側は、そのような協力をすると拘束されていない。よって、3社が一方的に事業活動を拘束されているといえ、「相互にその事業活動を拘束し」に当たらない。

3 したがって、Jの行為は3条後段に違反しない。

(1392字)

 

経済法第2問

 

第1 設問1

本件計画は15条1項1号に違反しないか。

1 「一定の取引分野」とは市場をいう。その範囲の画定は、当該行為により影響を受ける取引について、商品の範囲及び地理的範囲の観点から、主として需要の代替性、必要に応じて供給の代替性を考慮して行う。

本件計画により、当事会社2社は日本における甲の製造販売市場において55%のシェアを占める可能性がある。よって、本件計画により、日本における甲の製造販売取引が影響を受ける。

甲は、一時的かつ短時間の点滴に用いられるところ、甲以外に持続的に点滴を行う目的で使用される点滴針である乙が存在するが、甲とは形状も異なり、乙を用いて一時的かつ短時間の点滴を行うことはできない。よって、乙は需要の代替性を欠き、商品市場は甲に画定される。

国外の製造販売業者が国内で甲を販売するためには販売承認を受けなければならない。外国の事業者にとって、日本の行政手続きは分かりにくく、日本での販売は困難である。よって、世界市場は需要の代替性を欠き、地理的市場は日本に画定される。

したがって、市場は日本における甲の製造販売市場に画定される。

2 「競争を実質的に制限することとなる」とは、市場支配力を形成維持強化する蓋然性があることをいう。

同市場において、当事会社2社は55%という過半数のシェアを占める可能性がある。もっとも、同市場には45%のシェアを有するA社が存在し、シェア格差は小さい。しかし、A社の国内向けの供給余力は十分ではない。また、A社が甲の生産を第三者に委託することで国内向け供給量を増やすことは可能であるが、かかる第三者は現時点では見当たらない。よって、A社は45%のシェアを有するにもかかわらず、甲の供給量を増やせないので、低価格競争による顧客奪取の誘因に乏しい。したがって、A社は有力な牽制力を有しない。

現在、国外において当事会社2社及びA社以外に甲を製造販売している事業者は少数である。当該事業者が製造する甲については、これまで国内で販売実績はない。一般に、国内の医療機関は、国内で販売実績のない医療製品を購入することはまれである。よって、A社以外の輸入圧力は低い。

新規参入事業者が甲を開発して国内で販売しようとする場合、当事会社2社及びA社の既存製品と同等の機能では、実績のない新規参入事業者から甲を調達する医療機関は少ないため、新規参入には既存製品にはない機能を付加して参入する必要があると考えられている。しかしながら、そのような新製品の開発には一定の期間や投資を必要とする。よって、新規参入圧力も低い。

一定規模以上の病院では、医療製品の購入に際して、競争的な購入方法により低価格での購入を試みている。反面、医療機関としての規模の大小にかかわらず、実際の製品選択は使用者である看護師等の意見を聞きながら医師が行っている場合が多く、医師は製品の品質及び使い慣れを重視して製品を選択する傾向がある。甲についても、異なる製造販売業者の製品の間で使用方法に若干の違いがあることから、医師は頻繁には他の製造販売業者の製品に変更しない傾向がある。よって、購入者からの圧力も低い。

したがって、当事会社2社は市場支配力を形成維持強化する蓋然性が認められ、「競争を実質的に制限することとなる」に当たる。

3 以上より、本件計画は15条1項1号に違反する。

第2 設問2

当事会社2社は、本件計画について、甲の製造事業の一部をM社に事業譲渡するという修正を試みることによって独禁法上の問題を解消できる。

すなわち、M社は甲の製造を行うための設備や人材、ノウハウ等を包括的に取得できれば、それらを有効に活用する能力を有している。M社は甲の事業を営もうとするインセンティブが高い。M社は甲の販売を行う十分な経験及び能力を有している。よって、M社は有力な牽制力足りえる。

(1583字)

 

公法系第1問

 

第1 立法措置①について

1 法案6条は、公共の利害に関する虚偽の表現を流布することを一般的に禁止する。よって、同条は、虚偽の表現をする自由を制約する。

2 21条1項は「一切の表現の自由」を保障しており、虚偽の表現をする自由も同項により保障されると解するのが文言上自然である。もっとも、せん動罪事件判例は、犯罪をせん動する表現を同項の保護範囲外としている。そうすると、虚偽の表現をする自由も、犯罪をせん動する表現と同程度に保護に値しないと判断されれば同項の保護範囲外となる。しかし、犯罪をせん動する表現と同程度かという基準は不明確である。そもそも、21条1項の趣旨は、情報の自由市場における様々な決定が社会的に有益であり、そこに参加する個人の人格の発展にも資する点を含む。そうすると、虚偽の表現であっても、情報の自由市場への顕出自体は認め、うそくさい表現が無視されて自然にとうたされるのに委せるべきである。よって、虚偽の表現をする自由も21条1項により保障される。

3 法案6条の規制は、虚偽表現かどうかという内容に着目した規制であり、内容規制に当たる。内容規制は行政による恣意のおそれがあり、強度の規制である。そこで、目的がやむにやまれぬものであり、手段の必要性があってはじめて合憲となる。

4 ①の目的は、虚偽の表現が流布することによる社会的混乱を防止する点にある。しかし、社会的混乱には様々な程度がある。20XX年における、飲料水を求めてスーパーマーケットその他の店舗に住民が殺到した事件を例にとると、しょうぎ倒しによって生命身体に危険が生じるのであればやむにやまれぬものといえるが、店舗前の道路が渋滞するという程度では虚偽表現の自由を制約するに足りる程度にやむにやまれぬものとはいえない。そこで、生命身体に対する明白かつ現在の危険がある場合に限定して目的がやむにやまれぬものといえる。

上記目的を達成するためには、上記危険を有する虚偽表現に限って禁止するという他の手段がある。よって、虚偽表現を一律に禁止する法案6条は手段の必要性を欠く。したがって、同条は21条1項に違反し、違憲である。

第2 立法措置②について

1 法案9条1項は特定虚偽表現を規制しており、選挙運動として虚偽表現をする自由を制約する。

2 選挙運動は選挙に関する表現活動である。また、虚偽表現である点は①の場合と同様である。よって、上記自由は「一切の表現の自由」として21条1項により保障される。

3 選挙運動は、候補者に関する判断材料を有権者に提供するものであり、代表民主制(43条1項)を維持する点で重要な意義を有する。

もっとも、法案9条1項は、選挙運動の期間中及び選挙の当日に限り、SNS上の表現を規制するものであり、表現の時、方法に着目した規制である。これに対しては、選挙運動は選挙期間中に行わなければ意味がないから、表現の時に着目した規制であっても実質的に内容規制といえるという反論が考えられる。しかし、法案9条1項はSNS以外の方法による表現は規制しておらず、実質的に内容規制と同視できるとまではいえない。よって、同項の規制は行政による恣意のおそれは低い。そこで、目的が正当であり、手段の関連性があれば合憲である。

4 ②の目的は選挙の公正を図る点にあり、正当である。

SNS上の表現は拡散し、選挙期間中にその表現が虚偽であることを有権者に周知させることは困難である。よって、法案9条1項の規制は手段の関連性を有する。

また、フェイク・ニュース規制委員会は判断の中立性が担保されており(法案15条4項)、法案9条2項の手段の関連性がある。

法案13条がSNS事業者の免責を定めている点も、萎縮的効果を防止するために合理的であり、手段の関連性がある。

よって、②は合憲である。

(1560字)

 

公法系第2問

 

第1 設問1

先行処分の取消訴訟の出訴期間が経過した後、後行処分の取消訴訟において先行処分の違法を主張できるかは、①先行処分と後行処分との手続の分節度②先行処分に対する手続保障規定の充実度を考慮して判断する。

事業認定は土地を収用し又は使用しようとするときに受けなければならないものとされ(法16条)、土地を収用、使用するための手続きの一過程である。また、収用委員会は、収用又は使用の裁決の申請があった場合、申請を却下しない限り収用又は使用の裁決をしなければならず(法47条の2第1項)、法47条は、却下の裁決がされる場合を、申請に係る事業が事業認定を受けた内容と異なる場合と規定する。そうすると、事業認定されれば、その内容どおりに収用、使用する裁決がされるのが通常である。よって、事業認定と権利取得裁決との手続の分節度は小さい(①)。

B県は、事業認定は告示され(法26条1項)、起業地を表示する図面が公衆の縦覧に供され(法26条の2第2項)、補償等について土地所有者に周知させるための措置が講じられる(法28条の2)ことから、事業認定を争うための手続保障規定が充実しており、事業認定に対する取消訴訟で事業認定の違法を主張すべきであると反論することが考えられる(②)。しかし、事業認定自体によって事業は進行しないから、土地所有者が、収用又は使用の裁決を待ってその取消訴訟で争えば足りると考えるのもやむを得ない。

よって、Aは、本件取消訴訟において、本件事業認定の違法を主張することができる。

第2 設問2

1 (1)について

Aは、C市に対して、本件権利取得裁決が無効であることを前提として、本件土地を収用される義務がないことを確認する実質的当事者訴訟(行訴法4条後段)を提起することができる。B県は、Aが当該訴訟を提起することができる以上、「処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」という要件に当たらないと反論することが考えられる(還元不能説)。しかし、それでは無効等確認訴訟(行訴法3条4項)を提起することができる場合が狭くなり、権利救済の実効性を欠く。そこで、処分の無効を前提とする当事者訴訟よりも無効等確認訴訟の方がより直截的で適切である場合も上記要件を充たすと解する。

上記当事者訴訟で認容判決を得ても、本件土地を収用される義務がないことが確認されるだけである。本件権利取得裁決の無効確認訴訟で勝訴すれば、拘束力(行訴法38条1項、33条1項)により、判決の趣旨に従って、本件土地周辺の住環境も考慮した措置が採られることを期待できる。よって、上記当事者訴訟よりも本件権利取得裁決の無効確認訴訟の方がより直截的で適切であるといえ、上記要件を充たす。したがって、Aは、B県に対して本件権利取得裁決の無効確認訴訟を適法に提起することができる。

2 (2)について

法20条3号が、「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」という抽象的文言を用いた趣旨は、同号該当性の判断に際して公共の利益と私有財産の考慮を要し(法1条)、行政庁の専門技術的要件裁量を認める点にある。

1 平成元年調査から平成22年調査の間のC市の人口の減少は1割未満であるのに平成22年調査で予想される交通量が平成元年調査の3分の1に減っているのは、平成22年調査の調査手法に誤りがあるからであり、事実誤認がある。B県は、公共の利益の増進(法1条)のために道路ネットワークの形成が必要であると反論する。しかし、交通量が3分の1にまで減るのであればその必要性に疑問があり、考慮不尽である。仮に、道路ネットワークの形成のために本件道路が必要であるとしても、その必要性はそれほど大きいものではなく、かえって通過車両が増加するなどして、良好な住環境が破壊される。良好な住環境は私有財産(法1条)と不可分であり、考慮すべきである。B県の判断は考慮不尽であり、裁量権逸脱濫用であり、違法である。

※途中答案です。

1651字)