過去問ひとり答練∼司試平成30年公法系第2問 ※2021/04/05改訂 | ついたてのブログ

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第1 設問1(1)

「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは、当該処分を定める行政法規が個々人の個別的利益として保護する利益を、当該行為がされることにより侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

DEは本件許可処分の名宛人でないので、同条2項に従う。

1(1) 本件許可処分の根拠規定は法10条1項である。「関係法令」(行訴法9条2項)に当たる本件条例3条1項は、墓地の経営主体を原則として地方公共団体に制限する。その趣旨は、墓地経営の安定を図る点にある。そうすると、法10条1項は、墓地経営の安定を保護する。

墓地の需要者は近隣住民に限られる。よって、墓地が近接するほど墓地経営に対する影響が大きい。そこで、法10条1項は、墓地経営許可により墓地経営上著しい被害を受けるおそれのある者について、墓地経営の安定を個々人の個別的利益としても保護する。

(2) Dは、本件土地から300mという近接した土地で小規模な墓地を経営している。同墓地は余り気味で、空き区画が出ている。本件墓地は規模が大きく、本件墓地の経営が始まると、Dは、自らの墓地経営が立ち行かなくなるおそれが大きい。よって、Dは上記おそれのある者に当たり、原告適格が認められる。

2(1) 本件条例13条1項2号は、障害福祉サービスを行う施設の敷地からの距離制限を定める。その趣旨は、同施設の業務の円滑な実施を確保する点にある。そうすると、法10条1項は、同施設の業務の円滑な実施を保護する。

墓地に近づくにつれて、生活衛生環境上の悪影響を直接受け、それを嫌って利用者が同施設の利用を避け、同施設の業務に悪影響を及ぼす程度が大きくなる。そこで、法10条1項は、墓地経営許可により同施設の業務の円滑な実施を著しく害されるおそれのある者について、同実施を個々人の個別的利益としても保護する。

(2) 本件墓地の経営開始により、渋滞、悪臭、カラス・ネズミ・蚊の発生・増加のおそれがある。本件事業所は本件墓地から80mという近接した場所にあるところ、本件事業所の利用者は住宅の居住者と変わりがない実態があるので、上記衛生環境上の悪影響を敬遠し、本件事業所の利用を避けると考えられる。よって、本件事業所を経営するEは、上記おそれのある者に当たり、原告適格が認められる。

第2 設問1(2)

1(1) Eの主張

本件事務所は、本件条例13条1項2号の施設に当たる。よって、本件墓地は、本件事務所から100m以上離れていることを要する(同項)。ところが、本件墓地から80m離れた位置に本件事務所がある。よって、同項の距離制限規定に違反する。

(2) Bの反論

ア 業務への悪影響を防止するという同距離制限規定の趣旨からすれば、既に業務を行っている場所から近接する場所に新たに墓地設置計画が持ち上がった場合を同規定は前提としていると解すべきである。

イ Eは、特に移転の必要性がなかったにもかかわらず、本件説明会の開催後、本件墓地の経営が始まることを知ったことをきっかけとして、本件事務所をD所有地上に設置した。そうすると、Eは、専ら本件墓地の経営を妨害する意図で本件事務所を設置したといえ、同規定が前提としている上記場合に当たらない。よって、本件許可処分は同規定に反しない。

2(1) Eの主張

ア CがAに対し本件土地で墓地の経営を始めることを持ち掛けたのは、Cが株式会社であり本件条例3条の定めにより墓地の経営の許可を受けることができず、墓地経営のために宗教法人であるAの協力が必要であったからにすぎない。よって、Cは、自ら墓地経営を主導する意図がある。また、Cは、用地買収や造成工事に必要な費用を全額無利息でAに融資しているので、資金拠出者としての立場を背景として事実上Aに対して経営上の支配権を有する。よって、本件墓地の実質的経営者はCである。

イ Cは株式会社であり、本件条例3条1項所定の主体に当たらない。よって、本件許可処分は同項に違反する。

(2) Bの反論

ア 「自己の法律上の利益に関係のない違法」(行訴法10条1項)とは、原告適格を基礎付ける規定以外の規定に違反した場合をいう。

イ 本件条例13条1項2号は、Eの原告適格を基礎付ける規定である。他方、本件条例3条1項は、墓地経営の安定性を確保するという公益を保護する規定であるから、Eの原告適格を基礎付ける規定ではない。よって、本件条例3条1項違反をEは主張できない。

第3 設問2

法10条1項は墓地経営許可の具体的な要件を定めていない。その趣旨は、地方の実情に通じた知事の専門的要件裁量を認める点にある。

ただし、判断過程に過誤があった場合には、裁量権の逸脱濫用があったものとして、処分が違法になる。

1 (ア)についてのAの主張

近隣住民の同意を得ることは、法及び本件条例の要件とされていない。よって、近隣住民の反対を理由として不許可処分をすることは他事考慮である。

2 Bの反論

周辺の生活環境及び衛生環境は、本件条例14条1項2項が考慮する事項である。近隣住民の反対は、周辺の環境に対する配慮が不十分であることを示す間接事実である。よって、同反対を考慮することは他事考慮ではない。

3 (イ)についてのAの主張

法及び本件条例は、需給調整規定を設けていない。よって、B市内の墓地の需給状況を考慮して本件不許可処分を行うことは他事考慮に当たる。

4 Bの反論

上述のように、墓地経営の安定を本件条例3条1項は考慮事項とする。墓地の需給状況は墓地経営の安定に影響を及ぼすから、考慮事項である。よって、他事考慮ではない。

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