第1問※2020/04/22改訂
本件計画は、抱き合わせ販売(2条9項6号ハ・一般指定10項)に当たり、19条に反しないか。
1(1)ア 「他の商品」とは、従たる商品が主たる商品とは別個の商品であることをいう。
イ A社製の甲向けの乙にはADE各社の製品が存在する。いずれの製品を使用する者にも、定期点検が必要となる。よって、定期点検の提供(主たる役務)とA社製の甲向けの乙(従たる商品)には別個の需要が存在する。したがって、A社製の甲向けの乙は、定期点検の提供とは別個の商品といえ、「他の商品」に当たる。
(2)ア 「購入させ」とは、客観的に見て少なからぬ顧客が他の商品の購入を余儀なくされることをいう。
イ 甲の検査精度を維持するためには定期点検を受けることが不可欠であるところ、当該甲を製造したメーカー以外の者が定期点検を行うことは困難である。かかる前提の下で本件計画が行われると、顧客は、A社製の甲を購入した場合、D社又はE社製の乙を使用するとき、600万円の追加費用の支払いを条件としてオーバーホールを受けることになり、10年間で6000万円の負担増となる(①)。
かかる負担を免れるためには、B社及びC社製の甲を購入する(②)か、A社製の甲を購入した上でA社製の乙を購入する(③)という二つの選択肢がある。
しかし、A社製の甲が他社製の甲に比して機能と信頼性により高い評価を得ていることからすると、少なからぬ顧客が②を選択するとはいえない。
他方、③を選択すると、A社製の乙は他社製の乙より1年分で200万円高いから、10年間で2000万円の負担増となる。しかし、①よりは負担が少ないから、少なからぬ顧客が③を選択すると考えられる。
よって、少なからぬ顧客がA社製の乙の購入を余儀なくされるといえ、「購入させ」に当たる。
2(1) 市場の画定は、商品役務及び地理的範囲について、主として需要代替性を考慮して行う。
(2) 本件計画により、A社製の甲の顧客がA社製の乙の購入を余儀なくされるので、A社製の甲向けの乙の製造販売取引が影響を受ける。そして、B社及びC社製の甲向けの乙は、A社製の甲には使用できないから、B社及びC社製の甲向けの乙は需要代替性を欠く。地理的市場については特段の事情がない。よって、市場は日本におけるA社製の甲向けの乙の製造販売市場に画定される。
3(1) 「不当に」とは、公正競争阻害性のうちの自由競争減殺、すなわち、競争の実質的制限に至らない程度の競争制限効果をもたらすことをいう。
(2) A社製の甲の顧客は、本件計画により、A社製の乙の購入を余儀なくされる。
また、A社製の甲向けの乙はB社及びC社製の甲には使用できない。よって、D社及びE社は、B社及びC社製の甲の顧客にも自社製の乙を売ることができない。
したがって、D社及びE社は取引の相手方を見付けることが困難となる。以上より、自由競争減殺が生じる。
4(1) 目的の正当性及び手段の相当性があれば正当化され、「不当に」に当たらない。
(2) A社は、本件計画の目的が甲の検査精度を保持する点にあるとする。
しかし、D社又はE社製の乙の使用が本件トラブルの原因であることが科学的に立証されるには至っていない。上記市場においてA社は70%という高いシェアを有し、乙の利益率が大きく、ここ数年A社では乙の売上げが重要な収益源となっているところ、近年D社及びE社が安価で乙を製造販売してシェアを伸ばし続けている。本件計画の真の目的は、かかる状況にA社が危機感を持ち、D社及びE社を同市場から排除する点にあるといえる。よって、本件計画の目的は不当であり、正当化されず、「不当に」に当たる。
5 したがって、本件計画は19条に反する。
(1515字)
第1 (1)は15条の2第1項第1号に反しないか。
1 「一定の取引分野」とは、市場をいう。
(1)はXの製造販売取引を対象とする。そして、特段の事情がない。よって、市場は日本におけるXの製造販売市場に画定される。
2(1) 「競争を実質的に制限することとなる」とは、市場支配力を形成維持強化する蓋然性があることをいう。
(2) Xを、A社が年間50万t、B社が年間40万t生産しており、Xの年間輸入量が10万tであるから、新会社は上記市場において90%という大きなシェアを占めることになると推定される。
しかし、Xの国産品と輸入品との間で品質差はない。Xの国産品の販売価格が輸入品の販売価格より若干割高なのは、多頻度小口配送等の需要家のきめ細かな要求に応えることによってかろうじて維持されているにすぎない。よって、輸入圧力が大きい。もっとも、(1)の事業統合により固定費を削減でき、輸入品に対する価格競争力が増すとも思える。しかし、固定費における劣位が解消されたにとどまり、品質差はないので、依然として輸入圧力は大きい。
また、需要家は、輸入品の価格を容易に知ることができるため、常に価格の引下げを求めている。よって、需要者からの圧力も大きい。
したがって、新会社が市場支配力を形成する蓋然性はなく、「競争を実質的に制限することとなる」に当たらない。
3 以上より、(1)は15条の2第1項第1号に反しない。
第2 設問2
(2)は不当な取引制限(2条6項)に当たり、3条後段に反しないか。
1 A社B社は化学メーカーであり、「事業者」に当たる。また、両社は、同業者であるから実質的な競争関係にあり、互いに「他の事業者」に当たる。
2(1) 「共同して」とは、意思の連絡をいう。
A社B社間で(2)について意思連絡がされており、「共同して」に当たる。
(2) Xの生産と物流に関する事業活動について契約による拘束が生じる。よって、「相互にその事業活動を拘束」に当たる。
3 「一定の取引分野」とは、市場をいう。
(2)によってXの販売取引に影響が生じる。そして、特段の事情がない。よって、市場は日本におけるXの販売市場に画定される。
4(1) 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形成維持強化することをいう。
(2) B社は、A社によるXの生産に必要な主要原料(Xの製造原価の60%)を委託生産に必要な量だけ、自ら生産し又は外部から調達して、A社に提供する。よって、製造原価の60%も占める主要原料についてはコ ストが共通化しない。主要原料は提供されるのであって販売されるわけではないので、実際の主要原料のコスト情報はA社と共有されない。生産委託費用として支払われるのは、主要原料以外の製造原価の実費の103%であって、ほぼ実費ベースでの生産の受委託である。よって、両社間で共通化する製造原価は、主要原料を除くわずか40%でしかない。したがって、両社間で十分に競争の余地が残る。
しかし、B社がXの販売に係る物流業務をA社に委託し、同委託に伴い、顧客及び出荷先に関する情報をB社がA社に提供することとされている。よって、Xの販売に関する重要な情報が両社間で共有される。また、両社はシェア90%を占め、市場における有力な地位にある。よって、Xの販売価格協調のおそれが認められる。したがって、両社が市場支配力を形成維持強化するおそれがあり、「競争を実質的に制限する」に当たるおそれがある。
そこで、上記情報を、A社の物流部門にのみ提供し、営業部門には提供せず、両部門間で情報遮断をする措置を採るべきである。同措置を採れば、(2)は「競争を実質的に制限する」に当たらず、2条後段に反しない。
(1514字)
※第1:もともと出資会社が行っていた特定の事業部門の全部を共同出資会社に統合するもので、実際上、出資会社の業務と分離させるものであるから、出資会社と共同出資会社の業務の関連性は薄く、出資会社相互間に協調関係が生ずるものとは考えにくい(「別冊法学セミナー」P.246)。