第1 設問1
1 位置情報それ自体はプライバシー外延情報である。しかし、常時位置情報を収集される場合、例えば、教会に通っておりキリスト教を信仰しているというプライバシー固有情報を公権力に知られるおそれがある。そうすると、位置情報を収集されない自由は、人格的生存に不可欠であり、自己情報コントロール権として、幸福追求権(13条後段)により保障される。
2 継続監視(法22条)により、位置情報が警察に収集される。よって、上記自由が制約される。
3 上述のように、上記自由は重要である。
また、継続監視は、24時間365日実施されるので、強度の規制である。
そこで、目的が必要不可欠であり、手段が必要最小限度であってはじめて合憲となる。
4(1) 目的は性犯罪の再発防止である。
この目的は、その者の社会復帰を促進するとともに、地域社会の安全を確保することに資する。
また、MやPが犯した性犯罪事件の報道により、性犯罪の再発防止が要請されている。
よって、目的が必要不可欠である。
(2)ア 位置情報を収集しても、その者が何をしているかまでは分からない。よって、位置情報から性犯罪やその準備を行っているかどうかは判断できない。したがって、手段の適合性を欠く。
イ 監視対象者の位置情報を全て警察署のモニターに表示するというのではなく、監視対象者が一般的危険区域(法3条)に立ち入った場合のみ位置情報をモニターに表示するという手段(①)によっても目的を達成できる。
また、最長20年という継続監視期間(法14条)は長すぎる。MやPが釈放後半年から1年の間に再犯に及んでいることからすると、継続監視期間を最長3年程度にするという手段(②)によっても再犯を捉えるに十分であるから、目的を達成できる。
さらに、GPSを体内に埋設する(法21条1項)よりも、ブレスレット型GPSを装着するという手段(③)の方が、身体への侵襲を伴わない点で、より制限的でない。
よって、手段が必要最小限度といえない。
5 したがって、法22条は13条後段に反し違憲である。
第2 設問2
1 位置情報を収集されない自由(13条後段)を継続監視が制約し、目的が必要不可欠で手段が必要最小限度の場合にその制約が合憲となり、性犯罪の再発防止目的が必要不可欠であることは、付添人の主張と同じである。
2 性犯罪を実行する際には、留まる理由のない場所に長時間留まる等の不審な行動があると想定される。かかる行動が不審であることは、位置情報のみによっても判断できる。その判断がつき次第、警察官が現場に急行できる態勢が整えられる。よって、継続監視は、性犯罪の再発防止に資するといえ、手段の適合性がある。
3(1) 性犯罪は、一般的危険区域内で侵されるとは限らず、例えば、大型商業施設の駐車場に止めた車両内で犯されることも想定される。①の手段では、かかる性犯罪を防ぐことができない。
仮に、性犯罪が一般的危険区域内で行われるとしても、同区域外で見掛けた女性の後を付けて同区域内で犯行に及ぶなど、犯行準備を同区域外で行われることも十分に想定される。かかる準備行動を察知して性犯罪を未然に防ぐには、一般的危険区域外における位置情報も収集する必要がある。よって、①の手段では、性犯罪の再発を十分に防止できない。
(2) 性犯罪の再犯に及ぶリスクの高い者が存在するところ、そのリスクがいつ現実化するかは予測し難い。そして、性犯罪が行われると、死傷という重大な結果を伴い得る。そうすると、②の3年間という監視期間は、性犯罪を予防するには不十分である。
(3)ア ③のブレスレット型GPSは、破壊が可能であるから、性犯罪再発防止目的を十分達成できないとも思える。
しかし、GPSの破壊に対しては懲役刑まで用意されているのだから(法31条2号)、破壊を予防する効果が認められる。
イ ③のブレスレット型GPSは、外部から認識可能だから監視対象者に対する差別を引き起こしかねない。よって、③の手段は社会復帰を困難にするとも思える。
しかし、例えば、風呂屋で写真を撮ってSNS上にアップするなどした者を処罰することにより、差別的行為を防ぐことができる。
ウ よって、③の手段によっても目的を達成できるといえ、手段の必要最小限度性を欠く。
4 したがって、法22条は13条後段に反し違憲である。
(1768字)
※さらに,(こうした視点を発展させ,)継続監視が移動の自由や,ひいては表現活動等に対する萎縮的効果を与えるのではないかという点に着目して移動の自由の侵害を論じた答案にも高い評価を与えた。なお,警告・禁止命令による移動の自由の侵害を論じた答案も相当数見られたが,本問においては,Aが継続監視の対象とされるか否かという段階にあり,未だ警告・禁止命令の効力を争う段階ではない点に留意する必要がある(採点実感)。
※性犯罪者継続監視法は,法目的を達成するためにGPSを体内に埋設するという身体への直接的侵襲を伴う手段を用いるものであるから,これを独立の権利侵害として位置付けて検討する(採点実感)こともできる。∵埋設にしろ、ブレスレット型にしろ、プライバシーや移動の自由に対する制約度合いは変わらない(私見)。