(続)過去問ひとり答練 H28刑事系第2問※令和元年9月28日改訂 | ついたてのブログ

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第1 設問1

1 「強制の処分」(197条1項但書)とは、相手方の意思に反して、重要な権利利益を実質的に制約する処分をいう。なぜなら、このような処分は法定された強制処分と共通の性質を有するから、民主的統制を加えるのが強制処分法定主義(同但書)の趣旨に合致するからである。

(1) 事例2の留め置き措置について

Pは、甲の前に立ち進路を塞いだ。よって、行動の自由という重要な権利の制約が認められる。しかし、Pは、有形力を行使しているわけではない。よって、同権利を実質的に制約するものではない。したがって、同措置は「強制の処分」に当たらない。

(2) 事例3の留め置き措置について

ア Pは、パトカーで甲車を挟んで甲車が容易に移動できないようにした。しかし、甲が甲車を降りて歩いて移動することは可能であったといえる。よって、行動の自由の制約は認められない。

Pは、両手を広げて甲の進路を塞ぎ、甲がPの体に接触すると、足を踏ん張り、前に進めないよう制止した。よって、行動の自由の制約が認められる。しかし、有形力の行使態様は防御的であり、甲がPを回避して走り去る余地は残されていたといえる。よって、同権利を実質的に制約するものではない。

イ 午後1時に、Pは、胸部及び腹部を前方に突き出しながら、甲の体を甲車運転席前まで押し戻した。これは、積極的に有形力を行使して甲に運転席にとどまることを要求するものであり、行動の自由を実質的に制約するといえる。

その際、甲は、「車から降りられねえのか。」と言っている。同発言は、弁護士の助言どおりに「帰るぞ。」とPに告げたにもかかわらず、帰ることが許されず、これ以上Pに抵抗しても無駄だと考えたことによる発言であり、運転席にとどまることは甲の意思に反するといえる。

ウ よって、午後1時までの留め置き措置は「強制の処分」に当たらないが、午後1時以降の留め置き措置は「強制の処分」に当たる。そして、午後1時以降の留め置き措置は逮捕に当たり、令状なく逮捕したものとして、1991項に反し違法である。

2 任意捜査であっても、捜査比例原則(197条1項本文)より、当該捜査をする必要性を考慮して具体的状況の下で相当といえる場合に限り適法となる。

(1) 事例2の留め置き措置について

甲には、目の焦点が合わず異常な量の汗を流すなど、覚せい剤使用者特有の様子が見られた。また、甲には、覚せい剤取締法違反の有罪判決を受けた前科がある旨の連絡があった。さらに、Pは、甲の左肘内側に注射痕を認め、甲のバッグ内に注射器を認めた。甲は、同注射痕は献血時のものである旨及び同注射器は献血用のものである旨弁解する。しかし、献血では注射器を持ち帰ることはないので、後者の弁解は不合理である。前者の弁解の信用性も連動して下がる。よって、甲に覚せい剤使用の濃厚な嫌疑が認められる。そこで、任意同行に応じ尿を任意提出するように甲を説得するため、甲を留め置く必要性が高い。

他方、同留め置き措置は30分間と短時分である。よって、同措置の必要性が上回り、相当性がある。

したがって、同措置は、任意捜査(197条1項本文)として適法である。

(2) 事例3の午後1時までの留め置き措置について

Pは、午前1130分に捜索差押許可状の請求準備に着手した。よって、令状が発付された場合の迅速かつ円滑な執行のために甲の所在確保の必要性が高い。

他方、同留め置き措置は午後1時までの1時間30分間であり、長時間とまではいえず、その必要性の高さに鑑み、相当といえる。

よって、同措置は、任意捜査として適法である。

第2 設問2

1 ①について

(1)ア 「捜査のため必要があるとき」(39条3項本文)とは、弁護人等の申出に沿った接見等を認めると、取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生じる場合をいう。

弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者の身柄を利用した捜査を実施中であるとき、または、間近いときに同捜査を実施する確実な予定があって弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは同捜査が予定通り開始できなくなるおそれがあるときなどは原則として上記支障が生じる場合に当たる。

イ 本件では、Tが接見を申し出た時点で、Sは甲の弁解録取手続を実施している。同手続は、被疑者を受け取った後直ちに行わなければならないところ(204条1項)、Tの申出に沿った午前10時30分からのH警察署での接見を認めた場合、甲をH警察署に移動させる時間を考えると、同手続を中断しなければならなくなり、捜査に顕著な支障が生じる。よって、「捜査のため必要があるとき」に当たる。

(2) 甲は逮捕されてからまだ弁護士とは接見していない。逮捕後の初回接見は、弁護人の選任を目的とし、

取調べを受けるに際しての助言を受ける最初の機会である点で防御上重要である。そこで、(ⅰ)即時又は近接した時点での接見を認めても捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かを検討し、(ⅱ)可能な場合は、即時又は近接した時点での接見を認める義務を負い、同義務に違反すれば、「被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限する」(39条3項但書)に当たる。

本件では、①の接見指定は、弁解録取手続終了までの時間と甲をH警察署に移動させるための時間を考慮して午前11時に指定したものであり、弁解録取手続終了後甲をH警察署に移動させて直ちに接見を認めるものである。よって、Sは、上記検討義務(ⅰ)及び近接した時点での接見指定義務(ⅱ)を果たしたといえ、適法である。

2 ②について

「捜査のため必要があるとき」に当たるか否かは、接見申出時を基準に判断する。なぜなら、同申出後に、捜査機関側が、取調べ等の必要を作り出すことにより接見指定をすることを防止する必要があるからである。

本件では、Sは、弁解録取手続の終了後に甲が自白しようか迷っていると察し、この機会に自白を得たいと考えて改めて取調べを開始することにした。そうすると、午前10時25分以降の取調べは、Tの接見申出時たる午前9時50分の時点では予定されていなかった。よって、取調べの中断等により、捜査に顕著な支障が生じるとはいえず、「捜査のため必要があるとき」に当たらない。したがって、②は39条3項本文に違反して違法である。

第3 設問3

1 伝聞法則(320条1項)の趣旨は、公判廷外供述は、知覚記憶表現の過程の誤りを反対尋問等により吟味できない点にある。そこで、伝聞証拠とは、公判廷外供述を内容とする証拠であって、同供述の内容の真実性を証明するためのものをいう。

2(1) ③の証言は、乙の公判廷外供述を内容とする証拠である。

(2) ③の証言の要証事実は、当該乙の供述が存在することである。

その理由はこうである。すなわち、当該乙の供述が存在することを証明することにより、甲に渡した物が検問で警察に見つかれば逮捕されるような違法薬物であることを乙が認識していた事実を推認できる。そして、同事実により、乙が、ビニール袋の中身が覚せい剤であることを認識していたことを推認できる。

上記要証事実との関係では、本当にK通りで警察がよく検問しているかという供述内容の真実性は問題とならない。

よって、③の証言は非伝聞であり、証拠能力が認められる。

第4 設問4

1 乙は、公判前整理手続では、事件当日丙方にいたと供述していた。よって、乙が事件当日戊方にいたことに関する④の質問及びこれに対する乙の供述(以下、被告人質問等という)は、公判前整理手続終了後の新たな主張に沿った被告人質問等である。

同被告人質問等を「その他相当でないとき」(295条1項)に当たるとして制限することは当然にはできない。

なぜなら、公判前整理手続終了後の新たな主張を制限する規定はないからである。

2 しかし、新たな主張に沿った被告人質問等を許すことが公判前整理手続を行った意味を失わせる場合には、制限することが認められる。

本件では、丙方でのアリバイも、戊方でのアリバイも、ともに乙の犯行が不可能であったことを示す点で同じである。よって、新たな主張に沿った被告人質問等を許しても、本件争点(1)は維持されるので、公判前整理手続において定められた審理計画に大幅な変更を生じさせない。したがって、公判前整理手続を行った意味を失わせる場合に当たらず、上記制限はできない。

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