(続)過去問ひとり答練 旧司H20憲法第1問 | ついたてのブログ

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第1 設問1

1 判断枠組み

A自治会は、地縁による団体であり、法律上は強制加入団体ではない(地自法260条の2第2項第3号)。しかし、同団体は、その区域の住民の連絡等の活動を行うものであり(同項第1号)、住民にとって、同団体の会員になることが便宜である。よって、同団体は、事実上強加入団体である。したがって、会員の中には様々な思想良心を持ったものが加入している。そこで、本件決議により会員が被る不利益と団体の得る利益とを比較衡量し、相当な範囲で、本件決議が「目的の範囲内」(同条第1項)に当たる。

2 本件決議は、会員に対し、地域環境の向上等という特定の考え方を有する団体への、寄付という賛同の意思表明を、強制するものである。特定の考え方を強制される点で、会員が被る不利益は大きい。

他方、A自治会は、班長らの集金の負担が解消されるという利益を得る。しかし、同利益は事実上の利益にすぎない。

よって、本件決議は、会員に対し相当な範囲を超えた不利益を課しており、「目的の範囲内」に当たらない。したがって、本件決議は、A自治会の権利能力の範囲外であり、無効である。

第2 設問2

1 A自治会側の反論

(1) 地縁による団体には、脱退の自由が認められるから、「目的の範囲内」は広い。

(2) 本件決議は、特別の会費を徴収するものではなく、自治会費を増額し、同会費の使途を上記団体への寄付に充てることと定めたにすぎず、会員に対して上記団体への寄付を直接強制するものではない。仮に、同強制をするものであるとしても、本件決議に基づく寄付の相手方は政治団体ではないから、政治献金と異なり、特定の「思想」(19条)を強制するものではない。

他方、本件決議により、地域住民への利便を促進できる。

よって、本件決議は「目的の範囲内」に当たる。

2 私見

(1) たしかに、地縁による団体には、脱退の自由が認められる。しかし、原告が主張するように、住民にとって、同団体の会員になることが便宜である。よって、同団体は、事実上強加入団体である。したがって、本件決議により会員が被る不利益と団体の得る利益とを比較衡量し、相当な範囲で、本件決議が「目的の範囲内」に当たる。

(2) 本件決議は、上記団体からの要請を受けた寄付金を集めるために要する班長の負担を解消するためになされたという経緯や、自治会費の増額部分のみを上記団体への寄付金に当てていることに照らすと、実質的には会員に対して上記団体への寄付金を強制するものといえる。しかし、A自治会側が反論するように、上記団体は政治団体ではなく、上記団体への寄付を強制しても、特定の政治的立場に対する支持を強制することにはならない。よって、本件決議は、「思想」を強制するものではない。

他方、本件決議により、地域住民への利便を促進できる。

よって、本件決議は相当性が認められ、「目的の範囲内」に当たる。したがって、本件決議は、A自治会の権利能力の範囲内であり、有効である。

(1220字)

 

※第1:①本問は、国家による憲法上の権利に対する制約が問題となっている場面ではないので、自由権の処理パタンは使えない(「受験新報」2016年5月号P.14)。②団体と構成員との間における紛争は私人間の紛争であるが、八幡製鉄事件判例・南九州税理士会事件判例は、三菱樹脂事件判決を引用していない→間接適用説を論じるか否かは重要ではない(「受験新報」2016年3月号P.29・30)。③内心の自由(19条)の具体的内容として、特定の思想を強制されない自由が保障される。本問では、A自治会による寄付の強制が環境保護という特定の思想の強制であると構成する(「受験新報」2016年5月号P.15)。