第1 設問1
1 憲法上の権利の制約
(1) 本件法律は、放送事業者の、広告放送時間を決定する自由を制約する。
(2) 広告放送は、情報を発信する活動であり、「一切の表現」(21条1項)に当たる。そして、広告放送時間を決定する自由は、広告放送に不可欠である。よって、同自由は、「表現の自由」(同項)として保障される。
(3) したがって、本件法律は、同項により保障される同自由を制約する。
2 判断枠組み
本件法律の制限に違反して広告放送を行った場合には、当該事業者の放送免許が取り消され、放送できなくなる。よって、本件法律は強度の規制である。また、国民一般が、消費者として、広告放送を通じて様々な情報を摂取できる。よって、同自由は重要な権利である。
そこで、本件法律は、目的が重要であり、手段が合理性・必要性を有する場合にはじめて合憲となる。
3 本件では、本件法律の目的は、多様で質の高い放送番組への視聴者のアクセスを確保する点にある。同目的は、視聴者の情報摂取に資し、重要である。
しかし、上記制限違反に対して、放送免許を取り消さなくても、同免許を一時停止するというより緩やかな手段が存在する。よって、手段の必要性を欠く。
したがって、本件法律は21条1項に違反する。
第2 設問2
1 国側の反論
本件法律の制限は、時間帯に着目した内容中立規制であり、規制強度は弱い。よって、本件法律の目的が正当で、手段の合理性があれば合憲である。
本件では、コマーシャルが長く続くと、視聴者はイライラしてテレビを消す傾向がある。よって、広告放送の時間を制限するという手段は、多様で質の高い放送番組への視聴者のアクセスを確保するという正当な目的を達成することに資する。したがって、本件法律は合憲である。
2 私見
(1) 本件法律は、21条1項により保障される、放送事業者の、広告放送時間を決定する自由を制約する。
(2) たしかに、原告主張のように、同自由は重要な権利である。また、本件法律の制限に違反した場合に課される放送事業者免許取消しという制裁措置は強度である。しかし、本件法律による直接の制限は、広告放送時間を制限するにすぎない。よって、同制限は、国側が反論するように、内容中立規制である。したがって、思想の自由市場がゆがむおそれは小さく、政府の恣意的規制のおそれもない。そこで、本件法律の目的が正当で、手段の合理性があれば合憲である。
(3) 本件では、放送事業者は民間企業であり、番組の制作費の主要な財源は広告収入である。そして、多様で質の高い番組を制作するためには、相応の制作費が必要である。本件法律の制限により、東京キー局1社平均数十億円の減収になると、かえって、多様で質の高い番組を制作することが困難になる。東京キー局は、全国放送の番組を制作することが多いから、全国の視聴者が、多様で質の高い放送番組へのアクセス確保という正当な目的の達成が困難になる。よって、本件法律は、手段の合理性が認められず、21条1項に違反する。
(1235字)
※第2.1:本件法律の時間帯規制は内容規制ではないから、営利広告規制について妥当する、「他の表現と異なり、萎縮しにくい」「政治的主張や真理に関する主張の適否よりも容易に判断できる」という点は妥当しない(私見)。