(続)過去問ひとり答練 ~旧司H21民訴第1問 | ついたてのブログ

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1 裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎としてはならない(弁論主義第1テーゼ)。

同テーゼの適用ある事実は主要事実に限られる。なぜなら、間接事実は証拠と同様の機能を果たし、間接事実にまで同テーゼの適用があるとすると、自由心証主義(247条)に反するからである。

そして、規範的要件については、不意打ち防止のため、規範的要件を基礎づける具体的事実が主要事実となる。

本件では、過失相殺(民法722条2項)における被害者の過失は規範的要件に当たる。そして、裁判所は、Xがブレーキを整備しないまま自転車を運転したという、同要件を基礎づける具体的事実を認定しているところ、Yは同事実を主張していない。よって、裁判所が同認定をすることは同テーゼに反し、許されない。

もっとも、同事実を主張するよう裁判所がYに促し(149条1項)、Yが同事実主張すれば、裁判所は同事実を認定できる。

2 過失相殺は事実抗弁である。なぜなら、過失相殺の趣旨は、損害の公平な分担の見地から、賠償額の認定に際し、被害者の落ち度を考慮する点にあり、公益的な制度であるからである。

本件では、Yは過失相殺をする旨の主張をしていないが、裁判所は過失相殺できる。

3 XはYに対し3000万円の損害のうちの2000万円の損害の賠償を求めるとの明示的一部請求をしている。原告が訴訟物を分割することは許され(246条)、一部請求であることの明示があるので被告の残債務不存在確認の反訴(146条)提起の機会も与えられているから、同請求の訴訟物は2000万円の損害賠償請求権(民法709条)である。そうすると、過失相殺による減額は、2000万円から行うべきとも思える。

しかし、一部請求をする原告の意思は、過失相殺されることを想定して一部請求するというものである。一部請求が認められる根拠が原告の意思の尊重にあることからすると、上記原告の意思を尊重して、全損害額から減額すべきである(外側説)。

本件では、過失相殺により減額すべき額は、Xの被った全損害額2500万円×0,5=1250万円である。そして、外側説からすると、同2500万円から同1250万円を減額することになる。よって、裁判所は、Yは、Xに対して、2500万円-1250万円=1250万円の損害賠償をせよとの判決をすべきである。

(963字)

 

※1:①Yは、「事故の原因は急いでいたために赤信号を無視したXにあると主張」しており、同主張は、責任原因としての過失を争う趣旨の陳述である(「解析民訴」P.412)。そうすると、Yは、過失相殺に使われる事実をそれと気付かずに主張しているとも思える(それにもかかわらず過失相殺を認定するのは法律問題指摘義務違反とも思える)。しかし、過失相殺の場合は、特に不法行為の事件では、過失相殺が類型的であるから、Yが過失相殺に使われる事実をそれと気付かずに主張しているということは、まず考えられない(「重点講義(上)2版」P.453)。②第1テーゼ違反ではないと書く場合:「裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎としてはならない(弁論主義の第1原則)。弁論主義の妥当する事実は、自由心証主義との調和の観点から、主要事実に限られる。では、過失相殺における主要事実は何か。過失は法的評価に過ぎない。これを基礎づける具体的事実が主要事実である。
 本問で、裁判所の認める整備不良の事実は、Xの過失を基礎づける具体的事実である。Yはこれを主張していない。
 もっとも、弁論主義の趣旨は当事者意思の尊重にある。従って、当事者の主張しない事実であっても、当事者にとって不意打ちとならないときは弁論主義に反しない。
 本問訴訟の主たる争点は、XY間の過失割合にある。その際、重要な判断要素は、Xが赤信号の道路に進入したかという点である。Yの主張する信号無視の事実と裁判所の認める整備不良の事実は、Xが赤信号の道路に進入したという点で共通する。他に整備不良の事実を認めることでXYへの不意打ちとなる特別の事情もない。従って、整備不良の事実を認めても当事者にとって不意打ちになるとはいえない。よって、弁論主義に違反しない。」(studyweb5氏)