※設問1を改訂しました(2017/03/07)。
第1 設問1
1 第1訴訟と第2訴訟とで訴訟物が異なる場合でも、第1訴訟の訴訟物が第2訴訟の訴訟物の先決関係であるときは、第1訴訟の確定判決の既判力が第2訴訟にも及ぶ。
本件では、第1訴訟の訴訟物は、本件売買契約に基づく150万円の代金支払請求権である。そして、第2訴訟の訴訟物は、本件売買契約に基づく残代金250万円の支払請求権である。第1訴訟の訴訟物の全部又は一部が認められない場合には、第2訴訟の訴訟物は認められない。よって、第1訴訟の訴訟物が存在することが第2訴訟の訴訟物が存在することの前提となる。したがって、第1訴訟の訴訟物が第2訴訟の訴訟物の先決関係である。以上より、第1訴訟の既判力が第2訴訟に及ぶ。
2 同既判力の作用として、当事者は、第2訴訟において、既判力の生じた判断に反する主張をすることが許されない。
3 ①について
売買契約が成立しなければ、売買契約に基づく代金支払請求権は存在し得ない。よって、第1訴訟の請求認容判決の既判力ある判断には、本件売買契約成立の判断も含まれる。
①は、本件売買契約の成立を積極否認する旨の主張である。
よって、①の主張は、本件売買契約が成立しているという、第1訴訟の判決の既判力ある判断と抵触する。したがって、①の主張は、同既判力により遮断される。以上より、Yは、①の主張をすることが許されない。
4 ②について
本件売買契約に基づく150万円の代金支払請求権が存在するという判断に既判力が生じている。
②は、第2訴訟の訴訟物たる、本件売買契約に基づく250万円の残代金支払請求権を受働債権とする相殺により、同残代金支払請求権は消滅したとの主張である。
同残代金支払請求権の消長によって、上記150万円の代金支払請求権は影響を受けない。よって、②の主張は、上記150万円の代金支払請求権が存在するという既判力ある判断と抵触しない。したがって、②の主張は同既判力により遮断されず、Yは、②の主張をすることが許される。
第2 設問2
Yは、上述した相殺の抗弁と併せて弁済の抗弁を主張している。この場合は、相殺の抗弁は予備的抗弁となり、弁済の抗弁が排斥されてはじめて審理判断される。なぜなら、相殺の抗弁についての判断には既判力が生じる(114条2項)ので、相殺の抗弁が認められて勝訴しても、自己の債権を失うこととなり、実質敗訴となるからである。
本件では、同弁済の抗弁が認められるので、代金債権は400万円-180万円=220万円となる。そして、同相殺の抗弁が認められるので、請求棄却判決となり、対当額である220万円の限度で自働債権消滅の判断に既判力が生じる。裁判所は以上の点に留意して判決をすべきである。
(1110字)
※設問1①:会話文の誘導に従う。
Ex. 代金債権の発生自体の否定は既判力と抵触すると書いてくれ。
問題文のニュアンスから、これも読み取るべきだった。
(問題文より引用、下線及びかっこ書追加部分は筆者)
裁判官A:そうですね。ところで,先ほどの数量的一部請求の訴訟物に関する判例の考え方を前提とすると,第2訴訟の訴訟物は,第1訴訟の訴訟物とは異なることになりますが,訴訟物が異なるという理由だけで,第2訴訟において,第1訴訟の確定判決の既判力が及ぶことはないと言い切れますか。例えば,第2訴訟において,裁判所は,第1訴訟の確定判決で認められた売買代金債権の発生そのものを否定する判断をすることもできるのでしょうか(できるわけないですよね)。
(引用終わり)
前後の文脈から、信義則ではなく、既判力で切れ、と言っている。
そして、その代金債権発生自体を否定する主張とは、何か。
これも、問題文に書いてある。
(問題文より引用、下線は筆者)
Yは,本件売買契約の成立を否認し,Xから本件機械を買ったのは売買契約締結の際にYとともに同席していた息子のZであると主張した。
(中略)
〔設問1〕
裁判官Aと司法修習生Bの会話を踏まえ,第2訴訟において,Yは,次のような主張をすることが許されるか検討しなさい。
① Xから本件機械を買ったのはYではなく,Zであるとの主張
(引用終わり)
これを読み合わせれば、①が契約成立を否定する主張だとわかる。
(代理構成などは、訊いていない。)
成立を否定すれば、代金債権は発生しない。
すなわち、①を既判力で切れ、と問題文が言っている。
それに沿って、答案を構成すれば足りた(Studyweb5氏)。
※設問1②:いわゆる相殺と時的限界の問題は生じない。
時的限界との関係は、確定した部分を後から相殺で争う場面である。
本問では、第2訴訟はまだ確定していない。
だから、第2訴訟で相殺を主張するのは、できて当たり前だ。
本問で時的限界を論ずる必要があるのは、第1訴訟の確定判決を執行された場合。
その場合に、相殺を請求異議事由とできるか、という場面である(Studyweb5氏)。