(続)過去問ひとり答練 ~予備H24商法 | ついたてのブログ

ついたてのブログ

弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

第1 設問1

1 Y社にとって、本件売買契約は直接取引(会社法356条1項2号)に当たらない。なぜなら、BはX社の平取締役にすぎない。よって、BがX社を代表して取引したわけではなく、「ために」(同号)に当たらないからである。

また、Y社にとって、本件売買契約は間接取引(同項3号)にも当たらない。なぜなら、BはX社の代表取締役ではなく平取締役にすぎないので、X社とBの利害が一致するとはいえない。よって、客観的外形的にY社の犠牲でBに利益が生じる形の取引とはいえないからである。

2(1) 本件売買契約の代金は1億円である。この金額は、Y社にとって、直近数年の平均的な年間売上高1億円と同額である。そこで、本件生地を購入することは、「重要な財産の・・・譲受け」(会社法362条4項1号)に当たる。よって、Y社が同契約を締結するには、取締役会の承認を要する(同項柱書き)。

本件では、同承認はない。

(2) そして、同承認のない取引は、取引の安全を図るため、原則として有効であるが、相手方が同承認を得ていないことにつき悪意又は有過失の場合には相手方保護の必要がなく、民法93条但書を類推適用して無効となる。

本件では、Y社の取締役会の承認を得ていないことにつきX社が悪意又は有過失の場合には、本件売買契約は無効である。

3(1) 本件売買契約はX社Y社間の契約であり、「商人間の売買」(商法526条1項)に当たる(商法4条1項、会社法5条)。

(2) そして、Y社は、本件生地を受領した際に、その一部につき詳細な検査をし、その余は外観上の検査をしており、「検査」(商法526条1項)したといえる。なぜなら、本件生地はどの部分をとっても同じ性質を有するので、その一部につき詳細な検査をすれば足りるからである。

(3) また、事前の検査で数回の洗濯による色落ちという染色の不具合につき調べるのは困難である。よって、同不具合は「直ちに発見することのできない瑕疵」(同条2項後段)に当たる。したがって、民法570条・566条1項)に基づく解除の要件として、瑕疵を6か月以内に発見し、その旨の通知を発することが必要である(商法526条2項)。

本件では、平成23年9月1日に本件売買契約が締結され、瑕疵の発見が平成24年2月、解除の意思表示が同月20日であるから、上記要件を充たす。よって、同解除は有効である。

第2 設問2

上述した本件売買契約の無効及び解除は、原因関係上の抗弁であり、人的抗弁(手形法77条1項1号(以下準用条文略す)・17条本文)に当たる。よって、Zに害意がある場合には、Y社は同抗弁をZに主張して手形金請求を拒むことができる(同法17条但書)。

そして、「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ」(同条但書)とは、①所持人が手形を取得するに当たり②手形の満期において③手形債務者が所持人の直接の前者に対して抗弁を主張し、支払を拒むことは確実であるという認識を有していた場合をいう。なぜなら、①人的抗弁切断(同条本文)の趣旨は、手形取得者保護にあるから、手形取得時の認識を基準とすべきであり、②抗弁が実際に提出されるのは満期であり、③単なる抗弁提出の可能性の認識で足りるとすると、手形取得者保護を図れないからである。

本件では、Zが、平成23年9月8日に裏書譲渡を受けた際、本件売買契約が無効であると知っていたという事情はない。

他方、上記解除については、Zは、裏書譲渡を受けた際、本件手形が本件売買契約の代金の支払のために振り出されたものであることを知っていたが、実際に本件売買契約が解除されたのは平成24年2月20日であり、裏書譲渡を受けた時より後であり、また、Zが本件売買契約の解除原因たる本件生地の染色の不具合を知り、解除されることが確実であるとの認識を有していたとの事情もない。

よって、Zは、①裏書譲渡を受けた際に、②満期である平成24年3月1日において、③Y社がX社に対して、上記人的抗弁を主張することが確実であるとの認識を有していたとはいえない。したがって、Zは「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ」に当たらず、Y社は、Zによる本件手形金支払請求を拒むことができない。

(1713字)