第1 設問1
1 (1)について
(1) 同契約の有効性について
ア 同契約は集合債権譲渡担保契約である。同契約により譲渡担保の目的となる債権には、将来発生する債権(将来債権)も含まれる。そこで、債権発生の蓋然性が同契約の有効要件となるとも思える。しかし、将来債権が発生しなかったことにより譲受人に生じる不利益については、譲渡人の契約責任を追及すれば足りる。よって、債権発生の蓋然性は同契約の有効要件とはならない。
イ もっとも、同契約の有効要件として、目的となる債権の特定性が必要である。特定性の程度は、発生原因、発生期間、第三債務者などを考慮して、目的債権を他の債権と識別可能な程度に特定されていれば足りる。
本件では、第三債務者は明らかでない。しかし、発生原因はパネルの部品の製造および販売に係る代金債権である。また、発生期間は現在有しているものおよび今後1年の間に有することとなるものである。よって、目的債権は上記程度に特定されている。したがって、同契約は有効である。
(2) 甲債権の取得時点について
将来、債権が発生した時に原始的に債権者となるという法的地位が、同契約時である平成25年1月11日に、AからBに移転する。なぜなら、同契約の担保機能を失わせないためである。
そして、同法的地位に基づいて、Bは、甲債権が発生した同年3月1日の時点で、甲債権を原始的に取得する。
2 (2)について
(1) Fが甲債権を差し押さえる前にBが甲債権を原始的に取得したから、Fが甲債権を差し押さえることはできないとの論拠について
上述した法的地位の移転を第三者に対抗する要件(467条2項)である債権譲渡通知は、平成25年5月7日到達であるのに対し、差押命令の送達はそれより前の同月2日にされた。よって、Fの差押が優先する。したがって、Fは甲債権を差し押さえることができる。以上より、Cは、上記論拠により支払を拒絶することはできない。
(2) AD間で、甲債権に係る債務の免責的債務引受がされており、Cの同債務は消滅しているとの論拠について
免責的債務引受についての明文規定はない。そこで、原則どおり、同債務引受という合意の効力は相対的なものである。よって、同合意の効力を第三者に対抗できない。したがって、Cは、上記債務引受による債務消滅をFに対抗できない。以上より、Cは、上記論拠により支払を拒絶することはできない。
第2 設問2
1 譲渡禁止特約の意義
契約自由の原則からは譲渡自体を禁じた債権を定め得る。そうすると、466条2項は、債権的効力以上に物権的効力であることを示す趣旨である。よって、同特約に違反した債権譲渡は無効になる。
2 乙債権の取得時期
甲債権について上述したのと同様に、Bが乙債権を取得するのは、乙債権の発生原因であるAE間売買契約成立時である平成25年3月5日である。
3 同特約のBへの対抗の可否
(1) 466条2項但書の趣旨は、同特約を知らずに債権を取得した者を保護する点にある。そこで、「善意」(同但書)の基準時は、債権取得時である。
本件では、Bが乙債権を取得した平成25年3月5日と同日に同特約がされた旨の通知がBにされた。よって、Bは乙債権取得時に悪意である。したがって、Bは「善意」に当たらない。以上より、Eは同特約をもってBに対抗することはできないとも思える。
(2) しかし、そのように考えると、Bは、担保設定契約時に、債権発生時に原始的に債権者となるという法的地位をAから譲り受けたにもかかわらず、その後にされた譲渡禁止特約をEから対抗されることとなり、担保設定契約の担保機能を実現できないことになってしまう。そもそも、466条2項の趣旨は、債務者の事務処理上の便宜を図る点にあるにすぎない。そうすると、同担保機能を重視すべきであり、譲渡禁止特約は効力を生じないと考える。よって、Eは同特約をもってBに対抗することができる。
(1601字)
※設問1(2)の(2)の論拠について:AがBに将来債権を譲渡している以上、Aは最早免責的債務引受に合意する処分権限を有していないとも思える。しかし、Aには取立権限がある。そして、債務の弁済が期待できる者に債務引受させることで、適切に取り立てることができるようになるのであるから、免責的債務引受の合意をする処分権限は、取立権限に含まれている(ハイローヤー2016年8月号P58)。