(続)過去問ひとり答練 ~予備H27民訴 ※2017/02/11改訂 | ついたてのブログ

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※設問2を改訂しました(2017/02/11)。

第1 設問1

1 判例の考え方の理論的な理由

(1) 訴訟物の単複異同は、実体法上の権利の単複異同により定まる(旧訴訟物理論)。なぜなら、実体法との調和を図ることができるし、基準も明確だからである。

旧訴訟物理論によると、本件事例の訴訟物は、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)である。

(2) そして、同条の要件事実のうち、同請求権を特定するのに必要な事実は、加害行為および被侵害利益である。なせなら、権利体系を採っている現行法制度のもとでは、権利侵害毎に実体法上は別個の同請求権が発生すると解するのが素直だからである。

本件では、過失運転致傷行為という一個の加害行為から生じた財産的損害と精神的損害は、Xの身体という同一利益の侵害による損害である。よって、両損害の賠償を請求する権利は一個である。

(3) したがって、本件訴えの訴訟物は一つである。

2 上述のように考えることによる利点

一個の加害行為に基づく人的損害であっても、財産的損害と精神的損害との賠償を請求する場合、訴訟物が別個となると考えると、本件事例において、財産的損害が600万円、精神的損害が400万円であるとの心証を裁判官が形成したとしても、精神的損害が400万円であると認定することは申立事項をこえるので246条に反しできない。よって、裁判官は、財産的損害が600万円、精神的損害が300万円、合計900万円の請求認容判決を下すことになり、被害者救済に十分でない。

他方、判例の考え方によると、心証どおり、1000万円の請求認容判決を下すことができる。よって、判例の考え方のように考えることによる利点は、被害者救済を十分に図ることができる点にある。

第2 設問2

1 一部請求の訴訟物

処分権主義により、訴訟物の特定は原告の権能である。もっとも、常に訴求されている一部のみが訴訟物であるとすると被告の応訴の煩が生じる。そこで、被告に残債務不存在確認の反訴提起(146条)の機会を与えるため、一部請求であることを明示した場合に限り、訴求されている一部のみが訴訟物になる。

2 明示的一部請求訴訟における過失相殺の判断方法

明示的一部請求の訴訟物を訴求されている一部のみとすると、訴求額から減額すべきとも思える。しかし、原告は、過失相殺されることを想定して一部請求する。そうすると、全損害額から減額するのが、原告の意思尊重という一部請求の根拠と合致し、妥当である。

3 そうすると、本件において、Aが1000万円全額を請求した場合と、700万円の明示的一部請求をした場合とで、認容額は異ならないことになる。認容額が異ならないのであれば、印紙代が訴額により定まることから、印紙代が安くなる明示的一部請求をした方が原告に有利である。よって、Aは、明示的一部請求を選択した。

(1150字)

 

※第1.1:ここは、自分の知っている限度で理解を示し、嘘は書かないようにし、多少あっさり済ませても構わない(内藤講師:「受験新報」2016年12月号P.5)。

※第1.2:「事例に即して」という部分を手がかりとして考える(内藤講師:「受験新報」2016年12月号P.6)。

※第2:「弁護士Aがこのような選択をした理由について説明しなさい。」という問いの形式なので、単に論点の論証を貼り付けるのではなく、自分なりにうまく問いに答える形で工夫して論じなければ良い評価にはならない(内藤講師:「受験新報」2016年12月号P.7)。