過去問ひとり答練 ~司試平成24年経済法第1問 ※2020/08/29改訂 | ついたてのブログ

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第1 設問1

4社及びY社の行為は、不当な取引制限(2条6項)に当たり、3条後段に反しないか。

1 4社及びY社は、甲の製造販売を行う会社であり、「事業者」に当たる。また、4社及びY社は、同業者であるから実質的な競争関係にあり、互いに「他の事業者」に当たる。

2(1) 「共同して」とは、意思の連絡をいう。黙示の意思連絡、すなわち、価格引上げ等を相互に認識し認容して歩調を合わせる意思あることでもよい。その判断に際しては、事前の連絡交渉、連絡交渉の内容、事後の行動の一致を考慮する。

ア A社が、4社が出席した平成20年6月15日の部長会において、8月販売分から西日本地区で甲を1㎏当たり10円をめどに値上げしたいとの希望を示したのに対し、D社が賛同した。よって、4社各社は、A社及びD社が値上げの意向であると認識する。

他方、B社は時期尚早であると述べ、C社は態度を明らかにしなかった。しかし、原料乙の価格の上昇が続いているので甲を値上げする必要があることは、4社に共通する。また、4社が短期的に製造量を増やすことが難しい状況にあり、A社及びD社が値上げした場合にB社及びC社が価格を据え置いても供給を拡大できず、かえって不利になる。そうすると、4社各社は、B社の発言が本音でないと認識し、C社の沈黙が値上げを容認する態度の現れだと認識する。

A社から数日遅れてBC社及びD社が顧客との間で値上げ交渉を開始したのは、他社の行動と無関係に独自の判断で行ったものではなく、他社と歩調を合わせる意思によるものと考えるのが自然である。

よって、4社は、8月販売分から西日本地区で甲を1㎏当たり10円をめどに値上げすべく顧客と交渉を行うことを相互に認識し認容して歩調を合わせる意思が認められる。したがって、黙示の意思連絡が認められる。以上より、4社の行為は「共同して」に当たる。

イ たしかに、Y社は4社と同時期に値上げ交渉に入った。しかし、上記部長会にY社は出席していない。そうすると、Y社が4社に追随して値上げをすることを、4社は認識していない。よって、4社及びY社の間に上記黙示の意思連絡は認められない。したがって、Y社の行為は「共同して」に当たらない。

(2)ア 「拘束」は事実上のもので足りる。

イ 4社は、本来自由に甲の価格を決定できるところ、上記意思連絡に制約されて意思決定を行うことになり、事業活動が事実上拘束される。よって、「相互にその事業活動を拘束し」に当たる。

3(1) 「一定の取引分野」とは、市場をいう。その範囲の画定は、商品及び地理的範囲について、主として需要の代替性を考慮して行う。

(2) 4社の上記行為の対象は、西日本地区における甲の販売取引である。

そして、甲に代替する商品はないので、需要代替性を欠く。よって、商品市場は甲に画定される。

西日本地区と東日本地区とで各社のシェアが大きく異なるので、西日本地区の需要者にとって東日本地区での供給は代替性がない。よって、地理的市場は西日本地区に画定される。

したがって、市場は、西日本地区における甲の販売市場に画定される。

4(1) 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形勢維持強化することをいう。

(2) 4社は、上記市場において80%のシェアを有し、他社との格差が大きい。また、他社は、短期的に製造量を増やすことが難しく、供給余力に乏しい。よって、他社は、低価格競争による顧客奪取の誘因に乏しく、有力な牽制力を有しない。輸入品の購入者は特定の需要者に限られており、輸入圧力が低い。甲の需要者との取引は固定的であり、需要者からの圧力が小さい。上述のように、隣接市場たる東日本地区からの圧力も小さい。よって、4社は甲の価格を左右する力すなわち市場支配力を形成維持強化するといえ、「競争を実質的に制限する」に当たる。

5 4社の行為が「公共の利益に反して」に当たることは明らかである。

6 したがって、4社の行為は2条6項に当たり3条後段に反する。Y社の行為は2条6項に当たらす、3条後段に反しない。

第2 設問2

4社の行為は不当な取引制限に当たり3条後段に反しないか。

1(1) 不当な取引制限は、合意時に成立する。なぜなら、「競争を実質的に制限する」に当たるために、現実に市場支配力が行使されることは必要としないからである。

(2) 平成23年2月15日の部長会で甲の値上げを合意しており、不当な取引制限が成立した。D社が結果として値上げに成功しなかったことは影響しない。

2(1) 不当な取引制限からの離脱が認められるためには、離脱者の行動等から、他の参加者が離脱者の離脱の事実を窺い知るに十分な事情の存在が必要である。 (2) C社は、社内ではカルテルからの離脱を決定している。しかし、C社は、4月10日の部長会にG部長が欠席した際に虚偽の理由を連絡している。そうすると、他の3社がC社の離脱をうかがい知るに十分な事情は存在せず、離脱は認められない。

3 よって、4社の行為は、不当な取引制限に当たり、3条後段に反する。

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