過去問ひとり答練 ~ 司試平成24年刑事系第2問 ※2019/10/13改訂 | ついたてのブログ

ついたてのブログ

弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

第1 設問1

1 ①について

(1)ア ①の開封行為は、令状に基づく捜索に当たる。令状に基づき捜索し得る範囲は、令状に「捜索すべき場所、身体若しくは物」(2191項)として明示された空間的領域に限られる。

なぜなら、明示された空間的領域については、捜索の「正当な理由」(憲法35条)が認められることすなわち捜索の理由(2221項・1022項)及び必要性(2181項)が認められることが裁判官により判断されているが、明示されていない空間的領域については同判断がされていないからである。

そうすると、乙宛ての荷物は令状に明示されていないので捜索できないとも思える。

しかし、同荷物についてのプライバシーが、令状に明示された場所についての権利利益すなわち当該場所を定常的に使用する人のプライバシーに包摂される場合には、場所に対する捜索令状によってそこに置かれた物の中を捜索できる。すなわち、同場合には、当該物は「場所」(219条1項)に含まれる。

イ 本件令状に捜索すべき場所として明示された場所は、T社である。乙は、T社の従業員である。従業員は、会社にいることが当然予想される。よって、乙は、T社を定常的に使用する人に当たる。そうすると、令状裁判官は、T社を捜索すれば乙の荷物についてのプライバシーを制約することを想定したうえで捜索の必要性の有無を審査する。よって、乙の荷物についてのプライバシーは、T社という場所についての権利利益に包摂される。

なお、捜索開始後にT社に届いた乙の荷物を足下に置いたことにより乙が受領した点は、上記包摂関係に影響しない。なぜなら、令状記載の有効期間内に捜索場所に入ってくる物についてのプライバシーを制約することは、令状裁判官によって想定されているからである。

(2)ア そうだとしても、被疑者は甲であるから、乙は「被告人以外の者」(222条1項本文・102条2項)に当たる。よって、乙の荷物を捜索するためには、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況が必要である(同項)。

イ たしかに、乙の荷物の内容物については「書籍」と記載されており、同荷物内に証拠物が入っていると認めるに足りる状況はないとも思える。

しかし、T社社長室で甲から覚せい剤の購入を勧められた旨の情報提供があった。かつて覚せい剤取締法違反で検挙されたことのある者数名がT社事務所に出入りするのが確認された。よって、T社は覚せい剤売買の現場となっている可能性が高い。

105日午後3時過ぎに甲乙宛ての2つの荷物がT社に届くと記載されたメールが、甲の携帯電話から発見された。同日午後3時16分にT社に届いた甲乙宛ての2つの荷物は、このメールに記載されたものといえる。同メールには、「ブツを送る」と記載されていた。上記情報提供等からすれば、「ブツ」とは覚せい剤である可能性が高い。荷物が届いた際の甲乙の会話内容が不審であり、Kから荷物の開披を求められて乙が拒絶したことも、同可能性が高いことと整合する。そうすると、乙宛ての荷物には丙から送られた覚せい剤が入っている蓋然性がある。

同メールには「いつものようにさばけ」と記載されている。そうすると、乙宛ての荷物の中の覚せい剤は以前から行われていた覚せい剤売買の一環として送られたものといえる。同覚せい剤は被疑事実の「営利の目的」を証明する証拠となる。よって、同覚せい剤は押収すべき物に当たる。

したがって、上記状況が認められる。以上より、①は、令状による捜索(218条1項)として適法である。

2 ②について

(1) 捜索差押許可状に基づく捜索としての適法性について

ア たしかに、乙が自分のロッカーの鍵を所持し捜索時に施錠していたのであり、②は、乙のプライバシーを一定程度制約する。

しかし、T社では、乙を含めて数名の従業員が働いており、従業員用のロッカーがT社に存在することは、令状裁判官が当然想定できる。そうすると、令状裁判官は、ロッカーの捜索による従業員のプライバシー制約も考慮したうえで捜索の必要性を認めたといえる。よって、乙のロッカーについてのプライバシーは、T社という場所についての権利利益に包摂される。

なお、捜索すべき場所は管理権の同一性によって画されるところ、T社事務所社長室にマスターキーがあったことから乙のロッカーはT社が管理しているといえ、マンションの一室の管理権が他の部屋に及ばないとされるのとは異なる。ロッカーに対する乙の管理権が、ロッカーに対するT社の管理権とは別に独立して保護されるとはいえない。

イ(ア) そうだとしても、本件令状は、被疑者を甲として発付されたものであり、乙のロッカーは、乙が日常使用していることに着目すると、「被告人以外の者の」「物」(222条1項・102条2項)に当たる。よって、乙のロッカーを捜索するためには、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況が必要である。

(イ) 差し押さえた甲の携帯電話を確認した結果、甲乙が共同して携帯電話を用いて覚せい剤の密売を行っている嫌疑が高まった。よって、乙の携帯電話や手帳の中に、覚せい剤売買履歴データが含まれる蓋然性がある。同データは、「営利の目的で」覚せい剤を所持したという甲の被疑事実の証拠となる。よって、乙の携帯電話や手帳は、上記押収すべき物に当たる。

T社社長として実情を知る甲がKの質問に対して「隣の更衣室のロッカーにでも入っているんじゃないの。」と答えたこと、及び、Kからロッカーの中を見せるように求められても乙が拒絶したことからすると、乙のロッカーの中に乙の携帯電話や手帳が存在する蓋然性が認められる。結果的に乙のロッカー内に乙の携帯電話や手帳はなかったが、同蓋然性が認められる以上、適法性に影響しない。

よって、上記状況が認められる。

したがって、②は、捜索差押許可状に基づく捜索として適法である。

(2) 逮捕に伴う捜索(220条1項2号)としての適法性について

ア 乙は、営利目的での覚せい剤所持の事実で現行犯逮捕されており、「逮捕する場合」(同項柱書)に当たる。

イ(ア) 同号の趣旨は、逮捕現場には証拠存在の蓋然性が一般的に高いため、裁判官による事前の司法審査を行う必要性がない点にある。そうすると、「逮捕の現場」とは、令状を得たとしたら捜索が可能な範囲、具体的には、逮捕場所と同一の管理権が及ぶ範囲内の場所をいう。

(イ) 乙を現行犯逮捕したのはT社社長室であり、T社が管理権を有する。そして、上述のように、乙のロッカーにはT社の管理権が及ぶ。よって、同ロッカーは「逮捕の現場」に当たる。

ウ(ア) そうだとしても、乙のロッカーは、管理者がT社であることに着目すると、「被告人以外の者の」「物」(222条1項・102条2項)に当たる。よって、乙のロッカーを捜索するためには、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況が必要である。

(イ) 上述のように、乙のロッカーの中に乙の携帯電話や手帳が存在する蓋然性が認められる。

そして、乙の携帯電話や手帳は、上述した場合と同様に、「営利の目的で」覚せい剤を所持したという乙の被疑事実の証拠となる。

よって、上記状況が認められる。

したがって、②は、逮捕に基づく捜索として適法である。

第2 設問2

1 手続の適否について

(1) ㋐審判対象画定のために不可欠な事実が変動する場合は訴因変更(312条1項)が必要である。なぜなら、同場合に訴因変更を要しないとすると、検察官の審判対象設定権を害するからである。

㋑㋐以外の事実で、一般的に被告人の防御にとって重要な事実が変動する場合は、同事実が訴因において明示されていた以上、原則として訴因変更が必要である。なぜなら、争点明確化による不意打ち防止の要請があるからである。

(2) 裁判所は、単独犯の訴因に対して訴因変更なく丙との共謀の事実を認定した。そこで、同変動が㋐㋑の場合に当たるかにつき以下検討する。

ア 共同正犯の不成立は単独犯の成立要件とならない。訴因に記載されている実行行為の全部を甲が一人で行ったことが認められる本件では、仮に甲が丙と共謀していたとしても、単独犯としての処罰が可能である。

そうすると、単独犯の訴因と共同正犯の訴因との間に構成要件的な相違まではない。よって、同変動は㋐の場合に当たらない。

イ 共謀共同正犯者の存在は、その者の果たした役割いかんによっては単独犯の情状に影響する。よって、丙との共謀の事実は、一般的に被告人の防御にとって重要な事実に当たる。しかし、共謀の事実は訴因において明示されていなかった。よって、同変動は㋑の場合にも当たらない。

ウ したがって、丙との共謀の事実につき心証形成できるならば、訴因変更なく同事実を認定したことは適当である。

2 判決の内容について

(1)ア 「被告事件について犯罪の証明があった」(333条1項)とは、訴因について合理的疑いを超える程度に証明することをいう。

イ 裁判所は、丙との共謀の存否がいずれとも確定できないと考えている。よって、丙との共謀の事実は上記程度に証明されたといえない。しかし、訴因に記載されている実行行為の全部を甲が一人で行っている本件では、上述したように、丙との共謀の事実は審判対象を画定するために不可欠な事実(訴因事実)に当たらない。そうすると、丙との共謀の事実が確定できなくても、訴因記載の実行行為の全部を甲が行っている以上、訴因について合理的疑いを超える程度に証明されたといえ、「犯罪の証明があった」といえる。

(2) 裁判所は、「罪となるべき事実」(335条1項)として丙との共謀の事実を記載している。これは、仮に丙との共謀があるとした場合、甲が従属的立場にあることから、単独犯より犯情が軽くなり、甲に有利だと考えたからであると思われる。

しかし、上述のように、訴因記載の実行行為の全部を甲が行っていることが認定されている以上犯罪の証明があったのであり、存否不明であるにもかかわらず丙との共謀の事実を「罪となるべき事実」として記載すべきではなく、公訴事実をそのまま記載すべきである。

(3) よって、判決の内容は不当である。

(4119字)