過去問ひとり答練 ~司試平成24年公法系第2問 ※2019/11/12改訂 | ついたてのブログ

ついたてのブログ

弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

第1 設問1

「処分」(行訴法3条2項)とは、①公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、②その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

このように、処分性の有無を判断する考慮要素は①公権力性②直接的法効果性である。ただし、②は訴えの利益に由来する。そこで、②が認められない場合でも、実効的な権利救済を図る必要性が高いときには、処分性が認められる。

1 本件計画決定は、法の規定に従ってQ県が一方的に行うものだから、①公権力性を有する。

2(1) 都市計画決定の後続行為である都市計画事業認可(法59条1項)は、土地収用事業認定に代わるものとされ(法70条1項)、同認可の告示(法62条1項)が土地収用事業認定の告示とみなされる(法70条1項)。よって、都市計画決定は、収用の前提となる地位に土地所有者を立たせるという法効果を有する。

平成20年判決は、土地区画整理事業計画決定がされると特段の事情がない限り換地処分が行われることを根拠として、収用を受けるべき地位に土地所有者を立たせるという直接的法効果性を同決定に認める。

これに対し、都市計画決定の場合、事業の施行には都市計画事業認可が必要である(法59条1項)。そして、同認可を得るには法61条の基準を充たす必要がある。また、同条は「できる」と規定しており、知事に効果裁量が認められる。よって、都市計画決定があったからといって、特段の事情がない限り同認可がなされて事業が施行されるというわけではない。したがって、上記平成20年決定の根拠は妥当しない。以上より、都市計画決定が収用の前提となる地位に土地所有者を立たせるという法効果は、②直接的法効果に当たらない。

(2) 都市計画決定により、建築制限の効果が生じる(法53条1項)。この効果は、事業の施行の障害を防ぐための効果である。

平成20年判決は、土地区画整理事業計画決定が有する建築制限の効果について、事業の施行の障害を防ぐものとして、すなわち、同決定がされると特段の事情がない限り換地処分が行われることを担保するものとして援用している。そうすると、同判決は、同建築制限の効果をもって直接的法効果性の根拠とする趣旨ではない。

都市計画決定の場合、上述のように、同決定があったからといって当然に事業が施行されるわけではないのだから、一層、建築制限の効果をもって②直接的法効果性の根拠とすることはできない。

3 平成20年判決は、土地区画整理事業計画の適法性に争いがある場合、換地処分の取消訴訟では事情判決(行訴法31条)の可能性のために権利救済が十分に果たされないことから、土地区画整理事業計画決定の取消訴訟を認めるのが実効的な権利救済を図るために合理的であるとする。

これに対し、都市計画決定の場合、都市計画事業認可がなされるまでは現状に変更のない状態が続く。そうすると、同認可の取消訴訟を提起して取消判決がなされても、事業の施行に著しい混乱は生じない。よって、事情判決がなされる可能性は低い。

また、建築制限については、建築制限不存在確認訴訟(行訴法4条後段)により、同不存在を確定することができる。

そうすると、土地所有者の実効的な権利救済を図るために都市計画決定の段階で取消訴訟の提起を認める必要性が高いとはいえない。

よって、本件都市計画決定は「処分」に当たらない。

第2 設問2

都市計画の変更の根拠規定である法21条1項は、「都市計画を変更する必要が明らかとなったとき」という抽象的文言を用いている。その趣旨は、都市計画については諸般の事情を総合的に考慮したうえでの政策的・技術的な判断が不可欠であるため、都市計画を変更するか否かについて都道府県の広範な政策的・技術的要件裁量を認める点にある。

もっとも、判断過程に過誤があった場合には、裁量権の逸脱濫用があったものとして処分が違法になる。

1 適法とする法律論

(1)ア Q県は、本件区間の交通需要が2030年には2010年比で40%増加するものと推計し、この将来の交通需要に応じるために計画を存続している。

同推計は、本件区間の整備を進めれば、c地点付近の旧市街地の経済が活性化し、本件区間の交通需要が増えていくとの予測に基づくものである。

イ 法13条1項11号は、「交通」「の」「将来の見通しを勘案して」と規定する。よって、Q県が将来の交通需要を考慮することは合理的である。

「都市の健全な発展」(同項柱書き)には、地域経済の活性化も含まれると解される。よって、Q県が旧市街地の経済活性化を考慮することは合理的である。

道路が整備されれば、流通が円滑となり、経済が活性化し、物流の需要が増大することに伴い、交通需要が増える。よって、同推計における事実の評価は合理的である。

(2)ア Q県は、本件区間を整備しないと、道路密度が基準道路密度を下回ることになることも、計画を存続させる理由とする。

イ(ア) 基準道路密度は、法の委任を受けておらず、行政規則である。よって、基準道路密度は法的拘束力を有しない。

もっとも、基準道路密度は、上記裁量を前提とした裁量基準である。不合理な裁量基準に従ってなされた処分は、他事考慮となる。

(イ) 基準道路密度は、住宅地や商業地という地域に応じて、商業地に多くの道路密度を要求している。住宅地よりも商業地の方が物流量が多いから、交通量が多い。よって、同基準の内容は、「円滑な都市活動を確保」(法13条1項11号)するのに資するといえ、合理的である。したがって、基準道路密度に従って計画を存続させることは合理的である。

(3) 以上より、計画を存続させるQ県の判断は合理的であり、適法である。

2 違法とする法律論

(1) 法21条1項は、計画変更の判断に際し基礎調査(法6条1項)の結果を考慮すべきことを規定する。基礎調査によれば、本件区間の交通量は1990年から2010年までの20年間に20%減少している。この原因は、Q県で近年進行している少子高齢化による人口減少や低成長経済によるものと考えられる。そうすると、少子高齢化が今後も続くと予想される以上、本件区間を整備しても、経済活性化及び交通需要増加が生じるとは考え難い。よって、上記推計における事実の評価は不合理である。

Q県は、上記人口減少や低成長経済を前提にして、道路に係る都市計画を全面的に見直すことにし、その結果、道路の区間や幅員を縮小するように都市計画を変更した例もある。そうすると、現在まで全く事業が施行されておらず事業を施行するための具体的な準備検討も一切行われていない本件区間も、同様に計画を変更すべきはずである。Q県の財政事情が逼迫しているため、事業の施行は財政上もますます困難になっていることからもそういえる。それにもかかわらずQ県が本件計画を存続させているのは、本件区間の整備を強く求めるc地点付近の事業者の利益を考慮したからである。しかし、上述のように、本件区間の整備が経済活性化につながらない以上、同利益を重視すべきではない。よって、Q県は、重視すべきでない利益を重視したといえ、不合理である。

(2)ア 基準道路密度が合理的であるとしても、行政裁量を認めることで個別事情に応じた柔軟な判断を可能にした法律の趣旨より、行政庁は個別事情考慮義務を負う。同義務に違反する場合、考慮不尽となる。

イ 本件区間を整備しない場合に、道路密度が基準道路密度を1km下回る。しかし、上述のように、本件区間の交通量が減少している現状では、基準道路密度を1km下回っても、円滑な都市活動に支障はない。Q県はかかる事情を考慮する義務を負う。Q県が基準道路密度を機械的に適用して計画を存続させることは同義務に違反し、考慮不尽である。

(3) よって、計画を存続させる判断過程に過誤があり、裁量権を逸脱濫用し、違法である。

第3 設問3

1 本件支払請求の根拠規定は、憲法29条3項である。同項は公平の理念に基づく。そこで、損失が特別の犠牲に当たる場合、すなわち、侵害行為が財産権の本質を侵すほど強度なものである場合に補償を要すると解する。

2(1) 本件建築制限は、「都市の健全な発展と秩序ある整備」(法4条1項)のために課せられるものであり、消極目的規制とはいえない。よって、規制目的との関係で補償を要しないとすることはできない。

(2) また、本件土地は、都市計画法上の近隣商業地域にあり、本件計画がなければ、Pが要望している高層の堅固なマンションを建築することに、法的な支障はない。そうすると、本件建築制限は、マンション経営できる、利用価値の高い土地を、マンション経営できなくするものであり、土地の利用価値を大きく下げる。よって、本件建築制限による地価の低落分は大きい。

しかし、地価の低落分は、将来収用される際には建築制限を受けていないものとして補償を受けることができる。よって、制限の程度が強いとはいえない。

(3) もっとも、Pは40年以上という長期間本件建築制限を受けている。

しかし、都市計画事業の施行まで長期を要することは、法が当然に予定している事柄である。

(4) よって、本件建築制限は、財産権の本質を侵すほど強度なものとはいえない。したがって、地価の低落分は特別の犠牲に当たらず、上記請求は認められない。

(3821字)