※改訂しました(2017/12/16)。
第1 設問1
1 過去にされた法律行為の効力の確認を求める訴えは、確認対象選択が適切でなく、確認の利益を欠き不適法であるのが原則である。
なぜなら、現在の法律関係は変化しているかもしれないから、紛争を解決する実効性があるとは限らないからである。
2 昭和47年判決は、30筆余の土地及び数軒の建物を含む全財産を遺贈する内容の遺言の効力が争われた事案において、確認の利益を肯定した。
この判断の根拠は以下のとおりである。すなわち、多数の財産について現在の権利の確認を求める場合、特定の財産を漏らす危険がある。そこで、当事者間の紛争の直接的な対象である基本的法律行為たる遺言の無効の当否を判示することにより紛争解決の実効性を充たすことができる点にある。
これに対し、本件では、遺言①は、土地甲1という単一の不動産をBに遺贈する旨の遺言である。そうすると、土地甲1がEの所有に属することの確認を求めれば紛争を解決できる。また、遺言①の無効を確認しても多数の紛争を一挙に解決できるわけでなく、紛争解決の実効性がない。よって、訴訟Ⅰは確認の利益を欠き不適法である。
第2 設問2
昭和51年判決は、相続人が遺言執行者を被告として訴えを提起できると判示した。この判断の根拠は、遺言執行者がある場合に、相続人は相続財産についての管理処分権を失い、かかる管理処分権は遺言執行者に帰属する(民法1013、1012条)点にある。
これに対し、本件では、遺言執行者Dの任務は、土地甲2の所有権登記を受遺者Cに移転することにある。そして、土地甲2につき所有権移転登記がCになされており、遺言の執行は終わっている。これにより、遺贈目的物の管理処分権はCに帰属した。Dは相続財産についての管理処分権を失ったといえる。よって、Dは被告適格を失い、訴訟Ⅱは訴え却下となる。
第3 設問3
1 (1)について
①GはFの子である。
②Fは平成15年4月1日死亡した。
③ア Jは土地乙をもと所有、③イ JF売買
2 (2)について
裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎としてはならない(弁論主義第1テーゼ)。
(1) Gは「Gの父F」と主張しており、①の事実を主張している。GはFの「生前に」と主張しており、②の事実を主張している。GはGが「Jから買い受けた」と主張しており、③アの事実を主張している。
よって、裁判所は、①②③アの事実を判決の基礎とすることができる。
(2) 弁論主義は、当事者と裁判所との間の役割分担についての建前である。当事者のいずれかが主張した事実であれば、判決の基礎としても同第1テーゼに反しない。
本件では、「Jから土地乙を買い受けたのは・・・Fであり」と主張して、③イの事実を主張したのはGではなくHであるが、裁判所は③イの事実を判決の基礎とすることができる。
(3) 当事者からの主張があるので、裁判所は釈明権を行使することを要しない。
第4 設問4
1 前訴判決の確定により、Gが土地乙の所有権を有していないという判断に既判力が生じる。共有持分権は所有権の一部であるから、共有持分権を有しないという判断にも既判力が生じる。Gが、後訴において、相続による共有持分権の取得を主張することは既判力により遮断されるのが原則である。
2 しかし、前訴において、反訴請求の請求原因としてHが主張したFH間の乙贈与の事実が認められないと判断された。同判断は、Gが乙共有持分権を有することを帰結する。Hが後訴においてGの乙共有持分権を否定することは、前訴における同帰結と矛盾する。
前訴裁判所は、乙をJからFが買い受け、FH間の乙贈与の事実が認められないとの心証を得たものの、それ以上何らの釈明を求めることなくG及びHの両請求を棄却する判断を下した。よって、Gの乙共有持分権の存否について前訴で審理判断がされていない。したがって、後訴においてGが乙共有持分権を主張することは、前訴で認められなかった主張を蒸し返すものではない。
よって、信義則上、前訴判決の既判力は、Gの乙共有持分権の不存在の判断には生じない。
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