第1 設問1
1 Aは支払い過ぎた賃料120万円の不当利得返還請求権(703条)を自働債権とし今後6ヶ月間の賃料債務を受働債権とする相殺(505条1項)をする旨の抗弁を主張すると考えられる。
2 事実6の下線部を付した部分の法律上の意義
(1) 甲建物の1階部分の賃料は、本来、月額20万円であるはずなのに、Aは、既に2年間、毎月25万円をCに支払ってきたため、120万円を支払い過ぎた状態にあり、という部分について
上記不当利得返還請求権が成立するためには、Cに120万円の「利得」があり、Aに120万の「損失」があり、利得と損失の間に「因果関係」があり、Cの利得に「法律上の原因」がないことを要する。上記部分は、Cの利得に法律上の原因がないことを基礎付ける事実であるという法律上の意義を有する。
(2) 少なくとも今後6ヶ月分の賃料は支払わなくてもよいはずである、という部分について
この部分は、相殺の意思表示(506条1項)に直接該当する事実であるという法律上の意義を有する。
3 上記相殺により、Aが解除の意思表示をした平成23年3月1日の時点でAに賃料の不払いはないことになり、Cの解除(541条)の要件である債務不履行の事実がないことになる。よって、AはCの解除が認められないと主張するために上記のように説明すればよい。
第2 設問2
1 (1)について
(1) FのDに対する請求の根拠
896条本文が請求の根拠である。
ア 被相続人Aが平成23年5月28日に死亡した(882条)。
イ FはAの兄である(889条1項2号)。
ウ Aはアの時点でDに対して1億円の損害賠償請求権を有していた(715条1項)。
エ よって上記請求が認められる。
(2) その請求が認められる額は幾らであるか
Aの相続人として他にAの妻Bがいる(890条)。よってFの請求額は1億円×1/4(900条3号)=2500万円である。
2 (2)について
(1) Dの請求の根拠
Dは不当利得返還請求権を請求の根拠とできるか。
ア Dは平成23年8月31日、本件和解に基づき、8000万円をBに支払っている。よって、Bに8000万円の「利得」があり、Dに8000万円の「損失」があり、両者の間に「因果関係」がある。
イ 「法律上の原因」について
DB間において、Aの死亡による損害賠償について、Bと本件胎児がAの相続人であることを前提として本件和解が成立した。しかし、Bは流産をし、本件胎児は相続人とならない(886条2項)。そこで、当事者が和解の前提とした事項に錯誤がある場合、和解(695条)は無効となるかが問題となる。
同条の趣旨は、当事者間に存する争いをやめることについて当事者の意思を尊重する点にある。そして、当事者が和解の前提とした事項に錯誤がある場合、当事者意思の尊重という趣旨が妥当しないから、和解は錯誤により無効(95条)となると考える。
本件では、本件和解は錯誤により無効であり、Bの8000万円の利得に「法律上の原因」がない。
ウ よってDは不当利得返還請求権を請求の根拠とできる。
(2) 請求額
上記のように8000万円である。
3 (3)について
(1) Bは、Dに対して、何らかの請求をすることができるか
BはDに対して、896条本文に基づき損害賠償請求をすることができるか。
前述のように被相続人Aが死亡しており、Bは相続人であり、Aは死亡当時Dに対し1億円の損害賠償請求権を有していた。そして、Bの相続分は3/4である(900条3号)。よって、BはDに対し7500万円の損害賠償請求をすることができる。
(2) どのような請求をすることができるか
Bは、Dに対して、上記7500万円の損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張することができる。
第3 設問3
1 Hが本問請求をできるためには、Hが丁土地を所有し、Kが丙建物を所有することにより丁土地を占有することが必要である。
2 ①の事実はHが丁土地を持分3分の1所有していることの直接事実である。
3 ②の事実はHが丁土地所有権の対抗要件を具備したという事実である(177条)。この事実は、Kの対抗要件の抗弁に対する再抗弁となる。
4 ③及び④の事実は上記請求とは無関係の事実であり、法律上の意義を有しない。
5 ⑤の事実はKが丙建物を所有することにより丁土地を占有することの直接事実である。
6 ⑥の事実は法律上の意義を有しない。なぜならば、丙建物の登記をKが具備していないとしてもKが丙建物の所有権を有することに変わりはないからである。
7 よって、Hは本問請求をすることができる。
構成60分、4頁目の18行目まで(87行)。
設問1は下線を付した部分の法律上の意義をどのように説明すればよいかという問いであり、下線部分だけに着目すると相殺の抗弁の結論部分しか書いていないと読めたので、「なぜ120万円のCの利得について法律上の原因がないのか」についての法律上の根拠に気付けませんでした。事実2から5まで賃料減額に関する事実が挙がっているのに賃料減額を導く法律上の根拠を書けませんでした。
設問2(2)は和解の前提となる事項に錯誤がある場合の和解の効力が聞かれていると考えて3段論法で書きました。ただ、695条ではなく、和解の確定効(696条)との関係を問題とすべきだったと反省してます。
設問2(3)は何を聞かれているのか分からず、(2)で書いてもいいような内容を無理やり(3)に押し込みました。
設問3は時間との闘いで、何とか事実⑥まで書きましたが、事実⑥までの検討「をした上で理由を付して解答しなさい」という問いには答えられませんでした。特に、事実16の、「丙建物は乙土地に存在しているというのがC及びKの認識であったが、実際は丁土地に存在していた」という事実を無視したことが痛い。