・あれだけ沢山の寺を回って、今更「入門」書?ともおもったが、老学者が、定年退職のあたりで、「全体の流れをまとめてみよう」という気になるようで、現在70歳の松尾氏が、これまでの研究成果から組み立ててくれるストーリーは、非常に、説得力がある。


・p.61にあるように、古代、仏教者の中心に居たのは、官僧だった。「鎮護国家」のための祈りのための「国家公務員」だった。穢れ忌避も絶対とされ、死穢にかかわる葬式にも参加できなった。


・このタブーを乗り越え、庶民に接近し仏教の新しい風を吹き込ませたのは宗派を問わず、一度は官僧だった遁世僧たちだった。特に鎌倉時代から活発化する。


・遁世僧の数人が紹介してある。あのゲジゲジ眉毛の叡尊さんの話は、pp.92-96にでてる。西大寺はじめ、何か所の寺で、その名を耳にした。ハンセン病患者の救済にあたった忍性については、pp.97-100に記述がある。


・具体的な遁世僧たちの活躍がエピソード付きで出てくる。


・夢告とかもひろく導入されていて、明恵上人には、夢日記もある。(実際には、すでに、広く行われていた僧侶の妻帯についても)、親鸞は、「夢告」が、あったと言い、軽々とクリヤしてしまう。


・明治時代初期に廃仏毀釈みたいなめちゃくちゃな動きが出た時もあるが、各時代それなりの進歩、展開があり、面白い。