・サイエンスライターの手になるなかなかに面白い本。2015年に出版されているので、コロナは、まだ登場していない。それまでに「世界の歴史の流れを変えた」医薬の発見の物語。

 

・個性の強い研究者たち。時には、「第一発見者」の名誉をめぐって、蹴とばし合いやら誹謗中傷が交錯したりする。

 

・また疫病は文明の交錯に立ち会って、大きく歴史を動かす。(pp.4-5)

ー「1346年、黒海沿岸の*カッファの街を包囲したモンゴル軍は、ペストで死んだ自軍の兵士の死体を、投石器で市中に投げ込む。この疫病から逃れようと船を出した人々によってペストは一挙に拡大し、当時のヨーロッパ人口の三分の一が犠牲になったと言われる。」*フェオドシア:現状、ロシアが実効支配。

ー「16世紀、スペインのフランシスコ・ピサロは200人に満たない手勢のみえを率いて、人口1600万人に及ぶインカ帝国を征服するという奇跡を演じたがその陰にあったのは、ヨーロッパから持ち込まれた天然痘の流行だった。」

ー「18世紀にも、アメリカ先住民の間に天然痘が猛威を振るったことが英米による征服を容易にした・・。何度かも流行を経験していて免疫を持っていたヨーロッパ人に対し、新大陸の住民たちはまったくの無防備であった。」

 

・エイズ治療薬(3種類も!)を日本人の研究者(満屋(みつや)裕明氏がつくったというのは知らなかった。今はこの3種の「カクテル療法」が定着しているとのこと。

 

・また、第4章にあるが、鎮痛剤モルヒネは実は「習慣性」があり、麻薬の問題を引き起こしている。これは現代社会の大きな闇を作り出してしまった・・。そういう意味では、「光と闇」の両面をみなければならない・・。

 

・ジントニックがある病気に効くというのは知らなかった・・。なるほどイギリスで愛飲された訳だ。