・今ひとつわからないのが、英語でいったらbe動詞(繋辞(けいじ)動詞)にあたるestarとserの使い分け。こういう時は、語源に遡るとイメージがクリヤになる時がある。たまたま購入した「スペイン語の語源」(岡本信照著・白水社)をパラパラ読んでいたら、冒頭にその説明があった!

 

 

・つまり、ラテン語の繋辞動詞は、esseの一種しかなかったが、スペイン語では、二語が使われていた。その使い分けについて、「主語との永続的・本質的関係がser」、「一時的・一過的な関係は、estar」と明確に区分されたのは、16世紀の頃からという。

 

・語源を見ると、estarはラテン語のstāre で、「立っている」の意味。英語のstayも、インド・ヨーロッパ祖語stā-に遡ると同じ語源で、兄弟分とか・・。一方で、serの方は、語源的には、ラテン語のsēdere・「座っている」に由来するそうだ。インド・ヨーロッパ祖語では、sedという語根が共通で、それが英語ではsitになったそうだ。(上記を傍証する関連語が、pp.19-26に延々と書かれている。)

 

・「まいにちスペイン語」(NHKラジオ)1月号テキストを読んでいたらp.43に「スペイン語では、動詞serを使った受け身の表現は、現在形で使われることはあまり多くなく、現在完了形や点過去形でよく使われる。その時、muchos gatos fueron expulsadosのように過去分詞の主語の性・数との一致が行われる・・」とあった。「過去に〜という因果関係があり、その結果が今に残っている」という使い方なら、確かに「動詞serを使った受け身の表現は、現在形で使われることはあまり多くなく、現在完了形や点過去形でよく使われる。」というのは納得だ・・。

 

・しかし、活用は、serの方がラテン語esseの活用形を継承しているという。

(直説法現在形:soy,eres,es,somos,sois,son),(直説法点過去:fui,fuiste,fue,fuimos,fuiteis,fueron),(直説法線過去:era,eras,era,éramos,erais,eran)ちなみにイタリア語のessereを見ると、(直説法現在:sono, sei, é, siamo,siete,sono),(直説法遠過去:fui,fosti,fu,fummo,foste,furono),(直説法半過去:ero,eri,era,eravamo,eravate,erano)となっていて、(もとが同じだから・・)かなり似ている。

 

・ついでにフランス語のetreも登場してもらおう、よく似ている部分もある。(直説法現在:je suis, tu es, il est, nous sommes, vous êtes,ils sont),(単純過去:je fus, tu fus,il fut,nous fûmes,vous fûtes, ils furent),(直説法半過去:J'étais, tu était, il était,nous étions,vous étiez, ils étaient)

 

・一方、「一時的、一過的関係の場合」に使うと棲み分けされたestareの活用は:(直説法現在:estoy,estás,está,estamos,estáis,están),(直説法点過去:estuve,estuviste,estuvo,estuvimos,estuvisteis,estuvieron),(直説法線過去:estaba,estabas,estaba,estábamos,estabais,estaban)となっている。