・辻氏の「奇想の系譜」と並行して山下氏の「日本美術の底力」を読んだ。

 

 

 

・過去に何冊か読んだことがあり、「ノジュール」にも沢山コメントを書いている。「奇想の系譜」にももちろん触れている。中で面白かったのは、岩佐又兵衛を大々的に再評価したのは辻先生だったが、「洛中洛外図屏風(舟木本)」についてはこれを又兵衛の作とはなかなか認めなかった。ところが山下氏の指摘などもあってか2008年発行の本で、「又兵衛作」と認定。それがきっかけとなったか、2016年に「国宝」に格上げになった。

 

・このように山下氏の「熱血推薦」のせいもあってか、「国宝」になったのは(作者不詳だが15世紀後半~16世紀前半の)「日月山水図屏風」(金剛寺蔵)、雪舟の「慧可断臂図」(愛知県・斉年寺)などもあるという。

 

・日本美術を「縄文系」と「弥生系」とで成っているとの論旨で、「縄文系」美術を見つけ、大声で皆に教えてくれたのは岡本太郎だという。pp.36-37に国宝指定された土偶の写真がでている。一方、土器は例の「火炎土器」(p.22)が指定されただけで、pp.38-39のように立派な「候補」はあるが、まだ・・・・。

 

・このほか、安本亀八の「生人形」、(初代)宮川香山の「褐釉蟹貼付台付鉢」とか色々あるんだ!と感心した。まあ明治期以降のものは「国宝」になるのは後年だろうけど・・。「縄文」の迫力に押された感があるが、第四章「弥生から日本美術を見る」の記述もある。水墨画、黒楽茶碗、大正・昭和期の端正な日本画についてまとめてある。

 

・オールカラーで61点を収載という事で、読みやすい。なんか「地平」がまた少し拓けた気がする。ありがたや!

 

・縄文、弥生を止揚して、今後、日本美術はどうなるのか?のヒントは、第5章と終章に書いてある。